クラスに馴染めない少年はいつまで経っても初恋に囚われ続ける

Onfreound

プロローグ

#1

 桃太郎の成長スピードは異様に早い。


 自分の読んだ本では3年以内に旅に出ている。それ以前にお爺さんやお婆さんの孝行をしたり、村の人の信頼を得たりしているし、旅においても交渉や戦闘に優れた一面を発揮している。そもそもお爺さん達に話をしている際の言語能力は、明らかに幼児の域を逸脱している。

 

 まぁ桃太郎のストーリーはそもそも桃から生まれたかどうかすら分からない程諸説があるし、まず物語にリアリティを求めていること自体無駄なことだ。しかし、なんにせよ、桃太郎が若いのに、勇敢で優秀、有望な人物として描かれているのは確かだ。


 彼が鬼との争いという、大きな危機を乗り越えることができたのは、おそらくそうした人間性による部分もあるはずだ。もし桃太郎が臆病で拙劣な人間であったならば、仲間を引き連れるどころか、村から出発することさえ出来なかったかもしれない。


 僕が言いたいのは、大きな危機には立ち向かうのに相応な人物がいるのではないかということだ。鬼に対する桃太郎、火事における消防士、美少女に対するイケメン...とは一概には言えないが、彼女に合う相手がいると思う訳で。


「久しぶり、元気だった?」


 高校2年生初のホームルーム。


 僕の机の前に立って、何故か笑みを浮かべる女子。


 どうして、僕の中学生時代を破壊した、憎くて、嫌いで、心惹かれた女の子の相手を、クラスの注目を集めながらしないといけないのだろうか。

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