男女の友情は成立しない!

みさか/UN

男女の友情


よくある質問に、「男女の友情は成立するか」という質問がある。


答えは人それぞれあると思うが、僕―――西野春葵は断言する。


男女の友情は成立しない!


いや、少し語弊があるな。


男女の友情は成立させない!



僕が通う「日田市立玖珠高校」には、有名なバカップルがいる。


美しい銀髪を持つ美少女、越智おち悠梨ゆうりと、明らかにそいつに好かれている浦野うらの京也きょうやの二人だ。


これは周りからの認識で、実際には付き合ってはいない。


しかし、二人は距離が近く、浦野が天然タラシなのもあって、事情をよく知らない人が見ると、明らかに熟年のカップル通り越して夫婦だ。


越智は浦野への一挙一動に好き好きオーラを纏わせているが、浦野は一向に気づかない。


しかし、浦野もまんざらでもなさそうで、どっちかが告白すれば間違いなく成功するだろう。


とりあえず言わせてほしいことがある。


――――ああもうじれったい!


早く付き合えと誰もが思うことを繰り返して尚、「自分たちは付き合ってない」⁉


なら、はよ付き合え!


既成事実とかいらんから早く付き合え!


そう思った僕は、一計を案じた。



「ということで、協力してくれないか?」


「ごめん、意味分かんないから無理」


「即答⁉」


この即答女は、諏訪すわ涼乃すずの


少し茶色がかった髪で、顔も整っており、見てくれは大和撫子だが、中身はただのアホっぽい女子である。


見た目と中身が合ってない良い見本だ。


涼乃と仲良くなった経緯は、まず涼乃の親と仲良くなったからという、異色の出会い方をした親友だ。


「ていうかさ〜『ということで、協力してくれないか?』しか言われてないのに理解出来るわけないじゃ〜ん」


「僕なら理解出来るが?」


「黙っとけ天才!」


涼乃はそう言うとふくれっ面になる。


「わかった、言えばいいんだろ……だからさ、越智と浦野をくっつけるのを手伝ってほしいんだ」


「最初からそう言えば私も普通に協力してやったものを……もったいぶった罰だよ?条件がある」


「……僕が叶えられる範囲なら飲もう」


「じゃあ……今度私を遊園地に連れてってエスコートすること!そ、それが条件!」


「え?それだけ?」


拍子抜けした。


「涼乃のことだから、『一回死んでこい』とかそういうのかと思った」


「あんたは私のことをなんだと思ってるの⁉」


なにはともあれ、涼乃の助けを得られたのは嬉しい。


「ありがとな、涼乃」


「ま、まあどうせ暇だったし?仕方なく手伝うだけなんだから!」


ふ〜ん。


「可愛いじゃん」


「っ〜!うるさい!」


そう言って向こうを向く涼乃の顔は、真っ赤だった。



「…で、なんか作戦でもあるわけ?」


「いや、ない」


「ないんかい!」


ともかく、僕と涼乃は作戦会議をしていた。


「…てかさ、なんでこんな真冬に空き教室で作戦会議なんてしてるわけ?」


「なら、僕の家でするか?」


「……やめとく。あんたの妹さんたち怖いし」


「賢明な判断だよ…」


僕には可愛い義理の妹たちが三人いるが、中三になって尚、兄離れが出来ないようで、涼乃を連れて行こうものなら……


「涼乃、死ぬんじゃないか?」


「なに急に⁉」


「あ、ごめん。涼乃をうちに連れていく想像してた」


「……絶対に行かないから」


閑話休題


「……いいこと思いついたかも」


「……どんなの?」


「ちょっと耳貸して」


「え?ま、まあ良いけど……」


ゴニョゴニョ


「――――ということだが、どうだ…って、どうした⁉めっちゃ顔赤いぞ!」


「なんでもない!(春葵の顔…すごく近かった!…息も当たってて…やばい!)……あぅぅ…」


涼乃が倒れた。


「涼乃⁉大丈夫か⁉」


僕は涼乃を抱えて保健室まで運んだのだった。



「ん……ここは?」


涼乃が目を覚ましたようだ。


「あ、起きたか涼乃。ここは保健室だ。」


「は、春葵……ごめん」


「ん?なんで謝ってるんだ?」


「春葵の説明……聞いてなかった……」


衝撃の真実。


「まじかよ」


「ごめん……」


「じゃ、もう一回説明するぞ?」


「うん。お願い……」


正直面倒くさかったが、聞いてないなら仕方ない。


そうして僕はもう一度説明した。


「――――ということだが、涼乃はどう思う?」


「……こんなに上手くいくかな…?」


「それは涼乃次第だな」


「あんた次第でもあるでしょうが!」


「はいはい」


「……で、決行日は明日で良いんだよね?」


何を言っているんだこいつは。


「いや、明々後日しあさってだ」


「え?何で?」


「何でって…今日は金曜日だぞ?」


「あ」


思ったより涼乃は抜けていた。



いよいよ作戦決行の日の放課後を迎えた。


作戦はこうだ。


1まず、涼乃が越智を、僕が浦野を呼び出す。その際、僕と涼乃で電話を繋げておく。もちろん僕の方はミュートにするが。


2涼乃と越智の会話の中で、越智に「自分は浦野京也のことが好き」というのを聞き出す。


3それを浦野に聞かせる


といった感じだ。


……正直涼乃にはあまり期待しない方が良いかもしれない。


あいつは、見た目は完璧そうだけど、運動はともかく勉強はからっきしだし、中身のスペックも平均以下だ。


なので、最悪僕が浦野から聞き出すのも良いかもしれない。


僕は一抹どころじゃ済まない不安を抱えて作戦を決行するのだった。



「じゃ、頼むぞ涼乃」


「任せといて!」


そうして僕と涼乃は別れた。


僕はいちはやく浦野を見つけると、話しかけた。


「浦野〜ちょっと時間ある?」


「お前は……西野か。悪いけど俺は悠梨を待たなくちゃいけないから」


「越智なら、さっき女子涼乃に捕まってたから、もう少し時間かかると思うぞ?」


嘘は言っていない。


「…なら良いけど」


第一段階、成功!


(涼乃side)


「悠梨ちゃ〜ん。ちょっと時間ある?」


「あ、涼乃じゃん!悪いけど、京也待たしてるから、明日じゃダメかな?」


……この上目遣い、女子にもやるのか!


私は悠梨ちゃんの可愛さに負けそうになるが、グッとこらえる。


「浦野くんなら、さっき先生に捕まってたから(大嘘)、解放されるまでの時間じゃだめ?」


「わかった。それくらいならいーよー」


「ありがとう!」


思ったより悠梨ちゃんが純粋で助かった…


問題は第二段階なんだよな…



「……で、何の用なんだ?」


「……浦野、お前って盗み聞きは好きか?」


「逆に好きなやつって何なんだ?」


「冗談は置いといて」


「話を冗談から入るな!悠梨かよ!」


「へぇ〜そうなのか〜」


「あ……」


ふふふ…これを掘り下げて時間を稼いでやる!


「……ん?悠梨?」


「どうした浦野……あ⁉」


とある空き教室の横を通り過ぎようとした僕らの視線の先には―――涼乃たちがいた。


(涼乃side)


「それで、どうしたの涼乃?」


「単刀直入聞くけど、悠梨ちゃんって浦野くんのこと好きなの?」


「な、何を言ってるのかな?」


……あたふたする悠梨ちゃん、可愛い。


「もうバレバレだよ〜みんな分かってるよ!さあ白状しちゃいなよ〜」


「うう…」


悠梨ちゃんは顔を真っ赤にして俯く。


……これを毎日近くで見ている浦野くんが羨ましい。


私がふと、視線を上げると――――


(ええ⁉何でいるの⁉)


―――春葵たちがいた。


「……?涼乃、どうかしたの?」


「い、いやぁ〜何でも無いよ?」


「ならいいけど…」


悠梨ちゃん純粋過ぎない⁉


これは国宝級だよ……


はっ!目的を忘れるところだった!


「で、悠梨ちゃんは浦野くんのことが好きなの?」


「そそそそんなわけ無いでしょ…」


めちゃくちゃ動揺している。


……ちょっと楽しくなってきた。


「ふ〜ん。なら嫌いなんだ〜」


「私が京也のこと嫌うわけ無いでしょ!」


「じゃあ、好きなの?」


「それは……」


う〜ん、粘るなぁ…


あ、いいこと思いついちゃった☆


「じゃあさ、私が狙っちゃっていい?浦野くんのこと」


「それはだめ!」


おお〜即答ねぇ〜


「でもさ、悠梨ちゃんは別に好きじゃないんでしょ?なら私がもらってもいいよね?」


「……好きだもん」


「え?聞こえな〜い」


「私は京也のことが好きだもん!お願い!京也を取らないで!」


やっと言ったか!


すると、教室の扉が開いた。


「悠梨…?」


「ええええ⁉京也⁉なんでいるのぉ⁉」


浦野くんもいたんかい!


「涼乃」


「あ、春葵」


うん。分かってる。


「あとは若い二人に任せましょうや」


「お前と同い年のやつらだがな……まあ同感だ」


こうして、私達はそそくさと帰った。



「……で、今週末でいいか?」


「何が?」


「遊園地」


「ああ〜忘れてた」


僕も忘れていれば良かったな…


「春葵!忘れないでね!」


「当たり前だろ?」


何を言っているんだ涼乃は。


「あ、遊園地のことじゃないよ?」


「じゃあ何だ?」


全く心当たりがないな。


「……つ、次は私の番だから!」


「……?」


僕が遊園地でその言葉の意味を理解するのは、また別のお話。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

初めてのまともな作品です。


越智悠梨と浦野京也は「今日も今日とて君と話す帰り路」という作品で登場しており、西野春葵は「異世界無双に憧れて!」という作品で登場しています。


え?諏訪涼乃?

「異世界無双に憧れて!」を読んでいただければ、彼女がどういう立ち位置なのかなんとなく分かると思います(宣伝)。


拙作を読んでいただき、ありがとうございました。

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