1章8話 百年ぶりの世紀末

「お前どうしてくれんだよ!?

 全世界に俺が魔物生み出せるってバレたって事か!?」



『そっスねー。

 とりあえずチャンネルは変えたんで、ここからは真野さんとお姉さんにしか聞こえないっス!』



「おせーわ!!!!

 お前ホントロクな事しな…」



ジャカジャーン!チャーンチャンチャンチャーン!

チャーンチャンチャン…



真野のスマホが鳴った。かなり昔のJ-POPを着信音にしているのが、また真野らしい。



「っだよ、こんな時に。はい。」



「もしもーし!俺や俺や!

 ひっさしぶりやなオータ!!

 お前なんやオモロい事なっとんな!」



プツッ。プー、プー、プー…



真野は聞き覚えのあり過ぎる声を耳にして、表情を変えずに即通話を切った。



ジャカジャーン!チャーンチャンチャ…



「うるせーな!今忙しいんだよ!!」



「せやろなー!ワイにも聞こえとったわ!

 お前魔王んなったんやろ?

 ほんでほんで?

 なんや他にもオモロい事ないんか?」



「ひとっつも面白い事なんかねーわ!

 お前すぐ首突っ込もうとすんのやめろや!」



「なんや魔王はんは怖いなー。

 ホンマ世界を支配しはる魔王はんはちゃいますなー」



「いきなりはんなりしてんじゃねー!!

 そもそも2年かそこら関西行ってたぐらいでかぶれてんじゃねーよ!」



「ええやないか関西弁カッコええねんから!

 ずっと憧れとってん!」



「はあ…わかったわかった。

 とりあえず後で折り返すから、今はちょっと待て。

 俺も色々あり過ぎて整理できてねーんだよ…」



「しゃーないなー。ほな待ったるけど、連絡してこーへんかったらまた掛けんで!」



「わかったよ。正直俺も誰かに聞いて欲しいっちゃ欲しいからな。」



「約束やで!ほなまた!」



プツッ、プープープー…



「今の、土井くん?」



「ああ。久しぶりだってのに全然中身無い話しかしてねーけど。」



「相変わらずね。でもなんかホッとしたわ。」



「まあな。」



これだけ注目される状況にあるのだ。

変わらない事を嬉しく思う気持ちは、真野の中にも確かにあった。



『さて、じゃあ俺っちはそろそろ…』



「待て。」



勝手に切り上げようとするチャラ神を真野が制止した。



『なんスか?』



「この塔の説明してから行けよ。

 結局何もわからねーままじゃねえか。」



『そっスか?俺っち的には、自分で色々探索するのも醍醐味だと思うっスけど?』



「もう疲れてんだよ。肉体的じゃなくな。」



『魔王ともあろうものが情けないっスねー。

 …まあ良いっス。説明するっスね。

 まずこの塔は全部で66階建てっス。

 今は外からは入ってこれないっスけど、1ヶ月後には入口が開くようになってるっス。

 ここまでは良いっスか?』



「っスっスうるせー」



『…続けるっス。

 最上階には真野さんの部屋があるっス。

 今回はサービスで真野さんのお部屋にあったもの全部、最上階に移動しといたっス!』



「え、じゃあ俺の部屋は…」



『空っぽっス』



「ですよねー。もうそれぐらいじゃ驚かねーわ。

 で、なんで最上階なんだ?

 66階まで毎日階段で行くのはしんどくねーか?」



『そんな事もあろうかと、エレベーター用意しといたっス!

 これで楽々っスね!』



「エレベーターあんの!?

 お前魔王の居所にエレベーターって、世界観ぶっこわれてねーか!?」



『まあまあ固いことは言いっこなしっス!

 階段で行くよりはだいぶマシっスよ!』



「まあ、それはその通りだけだよ…」



『それに真野さんしか使えないっス!

 あ、あと真野さんが生み出した魔物っスね!』



「エレベーター使う魔物とか絵面やべえな…」



『こんなとこで良いっスか?

 そろそろ俺っちも他にやる事あるんで切りますよ?』



「最後にもう一ついいか?」



『なんスか?』



「……………」



――――――――――――――――――――――



「さて、これからどうすっかなぁ」



「ひとまず最上階じゃない?

 外に出るのも危険だし。」



「まあ…そうだな…」



なんだか頼もしい紗希に引っ張られる形で、真野はエレベーターへと足を向けた。

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