1章3話 魔王の所業
「•••チャ•••のさー•••」
微睡みの中で、なにか聞こえた気がした。
ただ、眠りに落ちてまだ大して時間も経っておらず、覚醒までは至らない。
「ちょっとー!起きて欲しいっス!!」
「っ、ぅあー、、」
今度は明確な声がした為さすがに目を覚まし、伸びをしながら覚醒した。
「あ、おはようございます!
いや、この場合はこんばんはっスかね?
とにかく初めまして、真野さん」
「あー、なんでも良いけどお前ここは、、」
そう、そこはいつもの部屋ではなく、何色とも形容できない色の家具や雑貨が雑然と広がる、かなり広い部屋だった。
自分の部屋で換算すると、8つ分くらいはあるんじゃないだろうか。
広くはあるが、正直趣味が悪い。
「はい!ここは神域っス!
人の身でここに入れるなんて、めちゃくちゃレアな事っスよ!
自慢しても良いっス!」
「いや、急過ぎ。
寝起きでその情報量なんなん?」
「冷静っスねー。
まあそこも資質の一つって事で!」
「資質?てかお前もしかして神か?
あの魔法がどうとか言ってた」
「そうっス!やっと気づいてくれたっスね!」
そこでようやく声の主へ目をやる。
顔は靄がかかっているかのように明確に認識できないが、服装は歌舞伎町にいるホストのそれだ。
白シャツにスーツ、とんがりシューズ。
、、、神?
「…まあ、、声とか口調でな。
んで何の用だよ。
俺明日はせっかくの休みなんだから、まだぐっすり寝てーんだけど。」
「あれ、神って分かってもその感じなんスか!?
もうちょっとへりくだったりしても良いんスよ!
なんせ神なんスから!へへっ」
「いやそういうの良いから。早く用件話せよ。」
「ほんとにクールな人っスねー。
わかりました!じゃあ本題っス!
今日はっスねー、真野さんを魔王にしよっかなーと思って来たんス!」
「は?」
「いや、だから!真野 欧太さん!
あなたを、世界の敵、魔王にするっス!」
2回聞いても理解できなかった。そんな真野を置いて、自称神は語り始めた。
「こないだ俺っちが皆さんに便利になってもらおうと思って魔法使えるようにしたじゃないっスかー?
なんか上司の神からめっちゃ怒られてー、しかもこのままだと人々が争い始めるとか言うんスよー。
んでなんとかしろー、みたいな?感じでまた怒られてー」
まあ、有り得ない話ではないな。
今まで持ち得なかった新たな力が世界中に急に芽生えたんだ。
争いのきっかけとしては十分だろう。
…ただ、上司の神ってなんや。
「で、そこで俺っちはキュピーン!と閃いたんス!
じゃあ、人類の敵みたいな存在、魔王とか作っちゃえば、人類同士の争いとか止まんじゃね?っつって!
敵の敵は味方っスー!みたいな!」
「ッ!!いや、待て待て!その流れウソだろ!?」
「で、そういえばこの間、魔王みたいな名前の面白そうな人がいたなーって思い出したんス!
しかも往来のど真ん中でウ◯コぶちまけるなんて、まさに魔王の所業っス!!」
「いや。してないからね。
そんな気分だっただけで全然、、
まあちょっと出てたかな?いやでも、、」
「で、神域に呼び出して魔王にして、今起こしたとこっス!」
「え?」
「いや、だから!
神域に呼び出して魔王にして、今起こしたとこっス!」
「もう魔王になってるううううう!!!???
ウソだろ!?何も感じないぞ!?」
「当たり前じゃないっスかー。
魔王ってのは存在につく名前っスよ?
別に魔王になったからって身体がデカくなるとかツノが生えてくるとか、そんな分かりやすい変化は起こらないっス!」
確かに身体的変化は何も起こっていないようだ。
なら何もしなければ、妙な事に巻き込まれる事も無いだろう、と胸を撫で下ろす。
「あ、ただ魔物を生む魔法を使えるようにしといたっス!」
「何してんだお前ーー!!!???」
「だって魔王っスよ?魔物の王なんスから。
魔物生み出せないとか意味分かんないでしょ?」
「いや、そうだけど!
急に魔王感出ちゃって焦ってんだよ!!
なんとなくこの感じわかんだろ!?」
「んー、ピンと来ないっス!」
「なんでだよ!!??クソ、、」
「でも、真野さんが人類の敵やってくんないと、マジでやばい事になるんス!
もう既に他の国では、軍隊の再編やら隣の国との小競り合いやらが始まってるんスよ!!」
「マジかよ、、
それは確かにやべーけど、他のヤツに任せるとか出来ねえのか?
人類の敵とかあり得ねーだろ。
俺まだ独身だしやりてー事もまだまだあるんだが。」
「それはムリっスねー」
「軽っ!?なんでだよ!?」
「魔物を生み出す魔法はオリジナル魔法なんで!
世界に1人しか持てないんス!」
「ウソだろ!?
じゃあ先に言えよ!!
寝てる間に魔王にされてるとか、俺が何したってんだよ!?」
「まあ今さらっスねー。あ、そうそう!
お詫びと言ってはなんなんスけど、初回の魔物召喚はレアな魔物が出る設定にしといたっス!」
「SR確定ガチャかよ!そういう事じゃなくてよ!」
「あ、あと目覚めたら裏の公園に行ってみて下さいっス!
真野さんの新しい家建てといたんで!!じゃ!」
「お、オイ!!」
「世界、よろしくお願いします。真野 欧太さん。」
「ちょ!」
と手を伸ばした時には、そこはあのゴテゴテした部屋ではなく、いつもの真野の自室だった。
「フニャー?」
「急に世界とか言われても、全然ピンと来ねーっつーの、、、」
『じゃあオマケっスー』
!!??
シロが光ってる!?
「シロ!!??」
「フニャー!!フシュー!フギャーーーーーー!!」
「おいおい、ポケ◯ンの進化みてーになってんぞ」
しばらくして、シロを包んでいた光は収まっていった。
「ふぅ。なんなんですかね、さっきのは。」
「何だったんだろうな。
え?」
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