第5話
月と体の関係を続けて早二年が続いた。私たちは最上級生になっていた。
高校最後の夏休みもあっという間に終わりに差し掛かっていて、少し悲しい気持ちになっていた。月と行ったプールに夏祭り、いつの間にか親友のライカよりも彼と同じ時と場所を過ごしていた。行為も数えきれないほどした。元カレとは比べ物にならないくらいすべて気持ち良かった。
それと同時に進行して感じている気持ちがあった。それは私が月を好きかもしれないという事だった。ただ、それは許されない気持ちでもあった。この気持ちは胸にしまっておこう……そう決めていたのに、神様は意地悪だ。
私は今日も彼と過ごしていた。今日は私の部屋で行為に及んだ。クーラーはつけていたけど、それを上回る熱量で私達は汗だくになっていた。シャワーを浴びて裸でゆったりと過ごしていると、月は私の方を見つめて言おうか言わまいか眉を下げて困り顔をしていた。
何も言わず黙ってみていると月は大きく深呼吸して口を開いた。
「メイ。俺、好きな人が出来たんだ」
月の言葉は私にとっては理解したくないものだった。私たちが作ったルールに乗っ取れば私は月を祝福、この関係を終わさなければならない。
「ま、またまた~!そういう冗談いうようになるなんて月も成長したね」
頼む!嘘であって欲しい!月の口から「嘘」の言葉を聞けると淡い期待を抱いていた。しかし、現実は非情で私の期待はバカな妄想だと突き付けられた。
「嘘じゃない。前言った幼馴染の話、覚えている?」
「う、うん」
「彼女がね、彼氏と別れたんだ。実は彼氏が束縛が激しくて暴力をふるうクソ野郎で、あんなに悲しそうな顔は初めて見た」
心臓の鼓動がうるさくて月の言葉が聞こえなかった。いや、聞こえないふりをしてたって言った方が正しいかもしれない。
「俺は彼女のあの顔は二度と見たくない。だから、彼女の支えになるって決めたんだ」
「………………」
「ごめん。こういう報告はヤる前に言うべきだったんだけど、言い出せなかった」
月は申し訳なさそうに下を俯いた。私の方はかなり焦っていた。どうしたら月を思い留まらせることができるのだろうか?このまま終わるなんて嫌だ、焦燥と悲しみが渦巻いてぐちゃぐちゃになっていた。
『でも、私が駄々をこねても月を困らせるだけ。』『でも、もしかしたら?私が思いを伝えたら?いけるのかもしれない』『私が幼馴染を蹴落としてても月を奪いたい』『ダメ!そんなことしたら私は色々な人を傷つけてしまう』もう頭がごちゃごちゃだった。まともな思考回路をしていない私が導き出した答えは――
「もう、本当だよ!ヤッた後に言うなんてサイテーだよ」
「うぅ……返す言葉もない」
「でもさ……」
一呼吸置いて月の背中を思いっきり叩いた。
「いっ!?」
「バーカ、そういうことならこんなところで油売ってないでいけよ」
「メイ……」
「はいはい。さっさと着替えて!今日から出禁だばーろ」
私はルール通り月を祝福した。
月を追いだした後、私の双眸から長年の思いが溢れてしまった。
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