第3話
もう会うことはないと思っていた彼とすぐ再会して内心嬉しかった私は目を輝かせて彼に近づいた。昨日見て大体分かっていたけど、やはりボッチだったみたいだ。
喜んでテンションが高い私と真逆に彼は私を見るなり苦手な食べ物を見た子供のような表情をし始めた。
「私と会えて嬉しそうじゃん」
「眼科いくことをお勧めするよ」
彼は呆れた表情を浮かべ頭をぼりぼりと掻いて焼きそばパンを食べ始めた。私も弁当を取り出して彼の横で食べ始めた。
「君、意外と健康的な物食べてるね」
「何だよ意外って」
「いっつもジャンクフードとか塩っけが多い物ばかり食べてるイメージがあったから」
「まあ、間違ってはいねーけど」
普段は彼と一緒で惣菜パンと紙パックのジュースで昼食を済ましているけど、今日はたまたま朝早く起きて気分が乗っていたので弁当を作った訳だ。まあ、卵焼きとウインナー以外は冷凍食品で固めた手抜き弁当だから結構早く出来たけど。
弁当をスマホで動画サイトを見ながら食べていると、彼がストローを噛みながらちらちら見ているのに気付いた。やはりパンだけじゃ足りなかったのだろうか?私は箸で卵焼きを取って彼の前に差し出した。
「はい。あーん」
「はあ?!何やってんだお前!?」
「欲しそうにしてたから、遠慮はいらないぞ」
「別にいらな……んぐぅ!?」
半ば強制的に卵焼きを口に突っ込んでやった。少し間を置いて咀嚼した彼は驚いた顔をして「うまい」と呟いた。自慢じゃないけど、卵焼きを綺麗にふっくら作るのは誰よりも得意と自負できる。彼の反応が面白かったので、もう少しからかってやろうと今度はウインナーを口に咥えて彼に差し出した。
流石の彼も赤面して慌てふためいて拒否るだろうとそんな童貞丸出しな反応を期待していた私の予想は大きく崩れることになった。
最初、何をされたのか分からなかった。ウインナーの嚙み千切る音が聞こえた数秒後、彼の唇が私の唇と触れ合った。
「ん……んんっ!?」
急にキスされて動揺を隠せなかった私は反射的に彼から離れた。久しぶりの感触に自然と顔が真っ赤になっていくのが分かった。
「ごめん……魔が差した」
「……う、うん。私もちょっとからかいすぎた」
一気に気まずい空気が流れる。久しぶりの感触、心臓が激しく高鳴り今にも心臓が飛び出そうで、胸をぎゅっと抑えて高鳴りを静めようと深呼吸した。唇の感触、温度、彼の匂い、キスをした表情、時間にして一秒程の短い時間に大量の情報が一気に頭の中へ流れ込んだ。
頭の中が混乱して体の芯から熱くなってくる。この感覚、そうか……私、興奮してるんだ。出会って一日も経っていない目の前のぱっとしない男の子に性的な興奮をしているんだ。彼と目が合うと、しばらく見つめあっていた。お互い人に見せられないような真っ赤な顔をしている。ずっと上昇している体温のせいで体が熱くてしょうがなくて、ワイシャツのボタンを外していく。もう、誰にも止められない。
「ねえ……この後、授業サボっちゃおうか?」
「………………うん」
生唾を飲む音が室内に響く。私の言葉をトリガーに彼は獣になった。
これが私と彼が初めて体を重ねた日だった。
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