山が見えて嬉しいという話

 タイトル通り。ちょっと懐かしく思ったお話です。

 私は京都生まれなのですけど、南以外は山に囲まれた盆地で、いつも空の端には山がありました。迷子になると山のない方角を探しますし、川は北から南に流れるものかと思っていました。子どもの頃のお話です。

 とはいっても、光陰矢の如し。私も働くべき年になり、何やかんやとあって、大都会東京へ出てきました。息をつく間もない新しい環境・生活。何となく寂しいような、物足りないような日々が過ぎて行きました。

 少し関東での生活にも慣れた頃。薄給だった私は東京ではほどよいお部屋が見つからず、埼玉南部で暮らしていたのですけど、ふと空を見上げておったまげました。


 山がない。360°、どこにも山がない。空の果ては地平線とはいわないまでも、ホニャホニャとしたかすみのようなものしか見えません。山があると思っていたのに……。今まで視界の端で山だと思っていたの霞や幻だったのです。背筋がゾーッとして、目が覚めた気がしました。


 同時に、ずっと感じていた寂しさの正体にも気づきました。

 先ほども書きましたが、京都は盆地です。盆地はくぼんだ土地ということでもあり、空気が溜まりやすいのです。だから、京都の夏はじめじめと暑苦しい。もっと酷く言うなら、京都は空気が滞りやすく、淀んでいるのです。昔からオカルト的なネタが多いのも、それが影響しているのでは?と、少し思っていたりします。

 空気の淀んだ土地。そういうと、めちゃくちゃ印象が悪い!ただ、その空気を吸って育った私には、それが普通で当然のものだったのです。つまり、風ですぐ流れてしまう関東平野の空気はとても寂しい。ひとりぼっちを思いしらされ、心細くなっちしまいます。遠くに富士山は見えますが、側の山々が見守っていて欲しいのです。


 ……なんて、ウダウダ考えていたのは昔。

 最近、西東京の方へ引っ越して来ましたら、ちゃんとありました、山!山々!

 やはり、山が見えると安心ですね。空気は全く淀んでませんが、心細さは減りました。

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