普通の学校
自分の子供の特徴について真っ当に現実を受け入れるなら、それを専門的に学んできたわけでもない教師がいる<普通の学校>に通わせようとは俺は思わなかった。
もちろんいわゆる普通の学校にも、特別支援学級のようなものがあって、そこにちゃんとしたスキルを持つ教師が配置されている場合もあるだろう。そういうところなら通わせることもできたかもしれない。
だが残念ながら俺が教師として勤めていた学校はそうじゃなかった。別に、専門のスキルを持っているわけでも、そのための特別な講習をしっかりと受けてきたわけでもない、普通の教師の中で、校長や教頭や学年主任からの覚えが良くない教師に押し付けられる形で担任にされているだけだ。しかも学校からはロクにサポートもない上に、教師本人にやる気も情熱もないから、生徒それぞれの特徴や留意すべき点について理解する気もないしで、生徒達は反発して奇声をあげたりするし、教師の指示に従わないことも多い。
その現実を見ればこそ、少なくともその学校に通わせるという選択はできない。
それだけの話だ。
だからといって特別養護学校が素晴らしいところかといえば必ずしもそうとは限らないけどな。
それもあって特別養護学校への異動を希望しているものの、今のところ叶えられていない。わざわざ自分からそれを志望する者は少ないと感じてたからすんなり通るかと思ったんだが、案外そうでもなかったようだ。
最悪、俺が勤めている学校の特別支援学級の担任にでもさせられたなら、進学させるという手もあったかもしれないが、やはりなかなか自分の思うようにはいかないな。
だが、それも承知している。この世が何でも自分の思い通りに行くのなら、妻が望んでいたように<普通の子供>が生まれてきただろうからな。でも実際に生まれてきたのは敦輝だった。
だからこそその中である程度は自分の願いが叶うように努力するんだろ? 努力しなくても叶うならそりゃ誰もいちいち努力なんてしないだろ。
だから<努力>なんてのはあくまで前提条件であって、努力してもなおうまくいかない時があるというのをわきまえなきゃいけないと思うんだよな。
そんなこんなで、敦輝には、特別養護学校に入学してもらった。これは、敦輝自身には何の責任もないことだ。たまたま俺と妻の間に今の特徴を持って生まれてきただけだしな。
敦輝本人からは何のお願いもされてないし、俺からも敦輝に対して承諾をもらったわけじゃない。それで彼に対して責任を問うなんていうのは、いやはや、ただの責任転嫁以外の何ものでもないだろ。
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