子供用ハーネス
敦輝は、四歳なった今でも赤ん坊と大きく違わない。それでいて、体の成長は、遅れているとはいっても、少なくとも二歳くらいに見える程度には成長しているわけだから、本当の赤ん坊に比べれば好き勝手に動き回ることもできる。
だからまあ余計に目を離すことができない。しかも突発的に動くこともある。そんなわけで、散歩の時には<子供用ハーネス>を使ってるんだが、これについても、
『子供をペット扱いしている!』
などというくだらない難癖をつけてくる奴らもいる。俺はそんな奴らの言葉には耳を傾けない。そんな奴らは、<教師を舐める生徒>と同類だ。そんなことを言ってくる奴らこそが他者を人間として見做してない。
だってそうだろう? 他者をちゃんと人間だと思ってれば、安全のためを思って子供用ハーネスを使っている他所様の子供の姿がペットになんか見えるわけがないだろう。
『ペットとして見よう』
と思っているからそう見えるだけだろうが。
ただ同時に、子供用ハーネスってやつも、正しく使ってないとかえって危険な面もあるのは事実だと思う。
実際、子供と手を繋がずにハーネスを長く伸ばしているのを見かけると、確かに犬の散歩をしているような絵面にも見えないこともないし、何より、ハーネスがあることに気付かずに親と子どもの間をすり抜けようとするのがいれば、ものすごく危険だというのは感じる。
加えて、無駄に長く伸ばしていると、飛び出したりするのを防止するのに役立たないかもしれない。親は歩道にいるのに子供は車道の方に出ることができてしまうかもしれない。それじゃあせっかくの子供用ハーネスが全く無意味になってしまう。
だから俺は、あくまで手を繋いで、その上で、万が一にも手を振り解かれたりした時に備えて使うようにするんだ。
自動車のシートベルトだってそうだろう? あれはしっかりと腰と肋骨にかかるようにしなければ、例えば、腹にかかるようにしていればヘタをすると内臓破裂を起こしたり、首にかかるようにしていれば首の骨が折れたりすることもあるそうじゃないか。安全のための装備だって、正しく使わなければかえって危険なことがあるのは事実だと思う。
大人がきちんとそれを理解し実践しなければ、子供に対しても、
『危ないことをするな!』
なんて偉そうに言えないだろう。
子供用ハーネスは、ハーネスが届く範囲で子供をウロチョロさせるために使うものじゃない。それをわきまえないから『ペット扱いしてる』なんて言われるというのもあると思う。
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