学校の先生様は偉い

 <教師を舐めるような生徒>

 は、そもそも保護者に問題がある。そんな<問題のある保護者>の尻拭いをなんで教師がしなきゃならない? 自分の子供がまっとうな人間関係を築けるような人間に育てんのは保護者の役目だろう? 自分の子供がまっとうな人間関係を築けるようにしてから学校に寄越せっていうんだよな。

 で、

 <まっとうな人間関係>

 ってのは、

 <まっとうな親子関係>

 ……いや、違うな、

 <まっとうな、親という人間と、子供という人間の、人間同士の関係>

 って言った方がいいか。自分の子供を『獣と同じ』とか思ってるような親には作れない関係だろうな。

 教師を舐めるような保護者は、基本的に自分より立場が下だと見做した相手のことは舐める。気に入らない相手のことは見下してくる。

『昔は、教師が生徒を叱り飛ばしたり体罰を加えても、その保護者はむしろ感謝してくれた』

 とか聞くが、いやいや、その頃は保護者も、

『学校の先生様は偉い』

 みたいなのがあって、だから遜ってただけだとしか思えないね。何しろ自分の子供の将来にさえ影響を与えかねない立場の人間だ。下手したてに出ておかなきゃマズいという打算もあっただろう。今でもそう考えてる保護者なら、まあ、教師に対しては遜った態度も見せるかもしれない。

 と、いうことは、<そうじゃない相手>ならどうだ? 自分や自分の子供に対してさほど影響のない、それどころか自分の方が立場が上だと感じてる相手になら、どんな態度になる?

 現に、教師に対して横柄な振る舞いをしてくるような保護者は基本的に、教師を下に見てたりしないか?

 つまり、

『昔の保護者はわきまえてた』

 ってことじゃなくて、

『昔の保護者は学校の教師を偉いと思い込んでいた』

 だけじゃないのか? その<教師の化けの皮>が剥がれたから、下に見る保護者も出てきただけで、別に、

『昔の親の方が立派だった』

 ってわけじゃないだろう。

 実際、教師なんて全然、人間として立派なんかじゃなかったりするしな。

 俺みたいな、<でもしか教師>もいるわけで。

 その現実に気付かれちまっただけだと、教師として学校にいるからこそ実感するね。

 だとしたら、俺は、親としてどう自分の子供と接するか?

 そんなもの、

『相手の立場が自分より上か下かに関係なく人間としてまっとうに接する』

 だけだ。

 たとえ、知能の発達が遅れていようともな。

 そもそも、人間は生まれた瞬間から人間だ。<知能が高いから人間>じゃないんだよ。

 <人間から生まれたから人間>

 なんだ。

 敦輝が人間じゃないなら、敦輝の親である俺も、俺の妻も、人間じゃないってのか?

 ふざけんなよ?


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