第8話 二つの再会(アークミィ)

 今日から本格的に魔術学園での生活が始まる。昨日は服の受け取りや各設備の案内を先生から受け、1日を終えた。ディステットさんは部屋帰ってきたけど、ミラ様は特別塔に泊まるらしく、部屋には居ない。

 そんなに忙しいのかな......


「それじゃあ、行くわよぉ」

「わかりました」




 この学園は校門の先に第一校舎。左手に第2校舎。右手に闘技場が建っている。男子、女子寮共に敷地の右奥にあり校門からは結構距離がある。特別塔は、左奥に何処の建物より少し離されて建設されていた。


「そう言えばニアは元気だったぁ?」

「ニアさん?......とても元気な方でしたね。リットレイ家では部屋が同じで魔力の使い方とか教わりました。それが何か?」

「あの子私の妹なのよぉ、最近会えてないから心配でねぇ。へぇ元気だったんだ。良かったぁ」


 隣を歩くディステットさんは嬉しそうに頬を少し高揚させはにかんだ。

 ......そうだったんだ。あー、確かに言われてみれば髪の色とか目元とか似てるかも。

 あっ、そうか。ニアが2人部屋で1人だったのは、姉のディステットさんが学園に行って居なかったからか。


「......姉妹だったんですね、ニアにお姉さんがいた。なんて初めて知りました」

「嬉しくて言い忘れたのよ。あの子、私達の中では最年少だからなのか「私も誰かの面倒見てみたい!」って言ってたわぁ」

「メイド見習いになるにあたって、わからない事が沢山あり、ニアさんにはとても助かりました」

「ふふっ、それを聞いたらきっと喜ぶわぁ。......さ、着いたわよぉ」


 ニアさんの顔から正面に視界を戻すと文字通り塔の建物が建って居た。第一第二校舎より小規模の校舎が隣接されており、想像以上の大きさに目を見開いた。


「おっ、大きい。ですね」

「建物は大きいんだけど、ここにいる人は少ないわぁ。さ、入ってぇ」


 促されるまま、ディステットさんが開いてくれた玄関をくぐる。玄関と思われる扉は、両開きの大きい。

 そのまま、ディステットさんの後をついて行き、少し広い部屋の前に到達した。


「ディステットです。只今戻りましたぁ。入って入って」

「はい......リットレイ家。メイド見習いのマリーと申します。本日からよろしくお願い申し上げます」


 お辞儀をして周りを見渡す。奥の方に見える少し大きな机は教員の物だろうか。見知らぬ男女が左手にある長椅子に座っている。あっ!


「あっ、スノリヤさん!だっけ?これから宜しくね!」


 試験の際に一緒になったスノリヤさんが男女と向き合う形で椅子に座っていた。


「よろしく。......マリーさん」

「お、揃ったみたいだね。ディステットは相変わらず時間通りね」


 後ろから声がして振り向くと、そこには初めて来た日と試験の際に出会った女性職員が立っていた。


「!、お、お久しぶりです。特別塔の教師だったんですね」

「騙す様な事をしてごめんよ、マリーそれにスノリヤ」


 驚いてると、女性はそのまま私達を通り過ぎ机の前で振り返った。


「ようこそ!特別塔アークミィへ。今年は2人も追加で増えるなんて珍しいね。歓迎するよさ、マリースノリヤの隣に座って。ディステットはマリーのお迎えありがとうね」

「はい。これもミラお嬢様の指示ですから。では、私は以上で戻ります」


 そう言うと綺麗なお辞儀をして部屋を退出していった。

 知らない空間で知らない人が多い中で放り出されるのは不安しかない。


「それじゃ改めて。はじめまして2人とも。私の名前はリゼット・キール。リゼットでもリゼでも呼び方はなんでも良いわ。アークミィ唯一の教師をしているのよ。わからない事があれば聞いてね。それじゃ次はスノリヤから」


 女性職員改め、リゼット・キールさん。確かこの名前はここアルカディア王国でも屈指の魔術師だったはず。ティック先生からは貴族の人で、王国魔術兵団特別講師と教わった。

 なんかよくわからないけど凄い人。


「......はい。私の名前はスノリヤ・フォン・ミルシア。名前の通りミルシア王国の王族です。ここには趣味の魔術研究をする為に来たので、政治やらはご遠慮下さい。以上」


 ミルシア王国とは、大陸の北側に存在する国になる。アルカディア王国は南なので丁度反対側に位置している。

 ......ここまで相当な距離あるよね?よく来ようと思ったね。次は私か。噛まない様にしないと!


「私は名前はマリーと申します。性はありません。モストハザード領を治めているリットレイ家の見習いメイドです。......ここには記憶を取り戻す為にやって来ました」

「ミラじゃ無くてカインドのメイドだっけ?カインドは研究に熱が入りすぎるのよね。是非周辺の世話をしつつ、君の目標を成し遂げてほしいわ」


「そして、この2人がここアークミィ最年少組のルーファスとテュアルよ。これから説明役が彼等になるわ。今手が空いてるのはこの2人しか居ないのよ。どっちがどっちに付くかは話し合って決めてね」

「よろしくっす」

「......よっよろしく、おっお願い、します」


 男の子がルーファス。女の子がデュアルらしい。

 てっきりカインドのお手伝いをするのかと思ってたけど、そうじゃ無いのかな?後でディステットさんに聞いてみよっと。


「ルーファス様とテュアル様ですね。これから宜しくお願いします」

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