第6話 合否通知

 今日は国立セレスティア魔術学園から合否の通知が届く日。朝起きると宿屋に封筒が届けられていたらしく、朝食を食べる際に受け取りを行なった。

 そして、現在、机には開封された封筒が置かれている。中身は勿論見ていない。

 いや〜、まって緊張するっ。


「(見ねぇのか?待ってた紙だろ?)」

「見たいんだけど、その、心の準備が......」

「(はぁ、俺が見てやるよ)」


 そうしてベットで丸まっていたテラは、面倒そうに起き上がり、椅子へと飛び移りそのまま机の上に乗った。

 むぅ


「私が見るっ!大丈夫!......見るよ?」

「(勝手にしな)」


 意を決心して封筒からはみ出る便箋に手を伸ばす。


 国立セレスティア魔術学園


 〜前略〜

 筆記、実技試験共に合格基準を満たしており、これにより本学園への編入を許可する。

 つきまして、新入生マリーはかねてより申請の有った特別塔アークミィの一員として、これから学園生活を送って頂く事となります。


 宿泊を行う施設や校則等、詳しい内容は同封されている別紙にて記載がありますので、必ず一読下さい。



 つまりつまりっ!



「......っ!やった!テラっ!合格だよ合格!」

「(おぉ良かったなぁ。そんじゃ、ここでの暮らしはおさらばだ。荷物纏めとけよ)」


 嬉しさのあまりその場で跳ねて、下の部屋に迷惑になる事に気づいてやめた。

 元より荷物が少ない私は、荷造り掛けてある服を畳んでカバンに入れるだけで終わる。

 それにしても意外に冷静だな。この狐。


 2枚目の紙には寮に関する事が記載されていた。

 読んでて知ったんだけど、基本主従の性別は同じらしい。そう言えば、ミラ様には同性の方が学園に居るらしく、オーウェン様にはロバートさんが付いている。奥様のカミラ様も女性の侍女が付いていた。

 だからこそ、寮は主人の部屋に隣接された部屋を使用するのが一般的らしい。


「私ってカインドさんの従者って、体で学園に行く訳だし、やっぱり男子寮に行くのかな?」

「(流石にそんな事ねぇだろ。気になるなら、当日聞きゃ良い)」

「確かに。それもそうだね」




 翌日、荷物を纏めた私は学園へと向かい職員の方に寮の事について話した。試験を行った女性職員は探したけど、今日は居ないみたい。


「えっと、マリー君だっけ?ちょっと待っててね、......あった。はいコレ。特別塔なら学園外に部屋を借りたり出来るから覚えておいて」

「コレは?」


 渡された紙は学園内が大雑把に書かれた地図。

 学園外?部屋?


「寮までの地図だよ。あの子達からの提案でね。マリーは男子寮じゃなくて女子寮に住む事になった。どうしてもって言うなら変えれるから」

「えっと、あの子達って誰なんでしょう?お恥ずかしながら、知り合いが余りいなくて」

「カインド君とミラ君だよ。流石に男子寮に女子生徒を1人入れるのはどうかって話が上がってね」


 いやいや、2人が話す前に先生達が違和感持ってよ。え?どうなのそれは......。前例がある?それとも主従で性別が違うって案外あるのかな?


「......っとまぁ、特別塔ならあまり寮は関係無いと思うけどね。それじゃ、これから頑張る様に」

「?......わかりました。それでは失礼します」


 頭に疑問符を浮かべながらお礼をして、その場から退散した。

 特別塔に入ると寮に入らなくて良い。とか?ん〜、まだわからない。......行ってみるしか無いよね。


 そうして私は地図で印が打っている位置へと歩き出した。




「初めまして。今日よりお世話になるマリーです。この番号の部屋の場所がわからなくて」

「あら?......随分と可愛らしい子が入ったのねぇ。初めまして。ここの看守をしているわ。貴女の事はミラさん達から聞いているわ、着いてきて」


 女子寮に着いた私は、看守さんに挨拶をして部屋まで案内をしてもらった。

 看守さんは恰幅の良い女性で優しそうな顔つきをしている。





「さ、ここよ。食事は生徒の自由。自分で作っても、作ってもらったても良いわ。何かあったらさっきの部屋に来る様に」

「お手数おかけしました!」


 そう言うと、元来た道を帰っていった。えっと道中の説明では、私はミラ様の侍女さんと同室で過ごす事になるらしい。つまり相手は先輩だ。

 緊張する......


「ふぅ、よしっ!」


 規定回数分扉を叩いて入試室の許可を相手に求めるを本来、先触れを出すのが好ましいんだけど、今の私は1人な以上、事前に行う事が無い。


「どちら様でしょうか」


 少し待っていると扉を開けて1人の女の子が出てきた。

 優しそうな雰囲気で身長は私より全然高い。髪は薄黄色のおさげ。服装はリットレイ家で使用されている従者の服装よりいくらか軽装に見える。


「初めまして、リットレイ家で先月よりメイド見習いをさせて頂いているマリーと申します。この度の御配慮、大変感謝いたします」

「えぇ、初めまして、ミラお嬢様の侍女兼護衛のディステットと申します。気を回したのはミラ様よ。お礼を言うなら後でねぇ、入室の許可は頂いているわ。さ、入って」

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