マリー強化月間5 訓練編2
休日から次の日、私、ニア、ティックの3人は仕事着ではなく、各自動き易い服装へ着替えて屋敷の裏に集合した。昼食後なので勉強は行っていない。
ロバートさんの言っていた通り結構広い空間だ。
「よし!それじゃあ始めるぞ、まずはマリー。魔力壁を張ってみろ」
「はっはい!」
感覚としては、ボールを投げる時に体重を移動させる。みたいな感覚で手に魔力を集約させ、そして薄く広がる様に魔力を解放したら、身体を覆う様に想像しながら魔力の量を調整する。
これが魔力壁の一般的な流れなんだけど、まだまだニアに比べて展開が遅いんだよね私。
「ちゃんと貼れたな。今はどれほど魔力を使っている?」
「えっと、あまり意識してないので、それ程使って無いです」
「成程な。まぁそこまで張れれば一応は問題とは思うが......ニア、マリーに向かって小石を投げてくれ」
ここで使用する魔力の度合いがいまいち掴めずに、ニアと話していたのが今回の馴れ初めだ。
私のある程度離れた正面にはニアが待機していて、私から少し離れた場所にティック先生がいる。
「はーい!マリー?少しは手加減するけど我慢してね?......はっ!」
「?」
我慢?
前方に立つニアが風系統の詠唱を終えたのか髪や服が少し靡いている。ニアが投げた小石は視認できない程の速度で私に迫り、前に出していた掌に当たる寸前で弾け飛んだ。
「ぃった!」
「あーごめんね?強かったかな?」
私の魔力壁に小石が当たった影響なのか、弾けた影響なのか、鈍器で思いっきり殴られた様な痛みと衝撃が掌を伝った。
投げたニアは申し訳なさそうに苦笑いしている。
え?まって、ただの小石だよね!?
「込める魔力が少ないとその分、衝撃を受け流せずに身体に痛みが走る。次は魔力により強く意識を割いて受けてみろ」
「わっ、わかりました!」
さっきより強く......
手を握り集中する。そして、手を開きゆっくりと魔力が無駄にならない様、慎重に身体に纏わせる。
「よし!それで良い。さ、ニアもう一度やってくれ」
「はーい!行くよマリー?......はっ!」
「!......すっ、すご」
「先程とは全く違うだろう。魔力を込めれば魔力壁の硬度は上がる。それに伴い、受けた衝撃をどれだけ受け流せるかが変わる」
ニアから投げられた小石は私に当たる前に砕け散った。だけど、先程みたいな痛みも無ければ衝撃も無い。
......けど、ふぅ、あれ?疲れてきた?
「マリー?大丈夫ー?汗かいてるよー?」
「あ、ありがとう」
ニアがタオルを投げてきた。
距離あるのに器用だね。
「魔力の操作に慣れていないから起こる事だ。慣れるまで想像以上に神経を使う」
「そそっ、思いっきり貼ったり緩く貼ったりを繰り返して練習すると、慣れるからおすすめだよー。マリーの魔力量なら常に薄く張ってても良いかもね」
「なるほど、わかりました」
以前ティック先生の言っていた、魔力壁は魔力操作の練習になる。とはこう言う事だったのかと納得した。
これなら暴発せずに何処でも練習できるね。
「よし。マリーは風と火が適正だったか。それじゃ、魔力壁を薄く張ったまま近くの地面に小さく火を出してみろ」
「はっはい!先生!」
魔力をそのまま使う魔力壁では技量や魔力量だけで行使ができる。たが、魔力に色を載せると話は変わってくる。事象を起こす為の詠唱が必要になる。
慣れてない内は丁寧にする様に厳命されている。
今から載せる色は火。......ある程度やりたい構想が出来れば後は、ある程度決まった文を唱えるだけ。
「我が名において命ずる。......微小に燃ゆる力をこの地に、授け給え」
魔力壁とは違った吸い取られる様な気持ち悪さを感じて、目の前の地面に小さな火が出現した。
「まぁまぁだな。この辺りは学園に入ってから習う事だからな。使えてるだけ上出来だ」
「すごいよーマリー!マリーって魔力が多いからさー、込めすぎるとやばいくらい大きくなりそうなんだよねー」
「あっ、ありがとう。でも、そんなに危険だったんだ......」
迂闊に使わない方がいいかも?でも、練習しないと暴発するかもだし。
「失敗するから危険なんだ。魔力壁もそうだが繰り返しやればコツを掴める。そうすれば今より早く的確な魔力操作が行える」
「わかりました。先生」
「よし。それじゃ次は火を消さない様に気を付けつつ、ニアの攻撃を防いでみろ」
つまり、魔力の配分を考えて火を消さない程度に留めつつ、魔力壁に魔力を込めろって事かな?
「いっくよー!マリー!......せいっ!」
「!って......さっきより強くない!?」
「あははっ!まだまだ上げれるよー?」
ニアが小石を宙に浮かしながら楽しそうに此方に笑顔を向けている。
えっと、火は、うん大丈夫。
「入試まで時間は無いが、仕事と勉強が両立出来るのなら朝から夕方にニアと2人で訓練を行うと良い。私は少し執事長と話があるため席を外す。くれぐれも怪我をするなよ?」
「はーい!」
「わっ、わかりました!」
そういうとティック先生は足早に屋敷へ戻られた。
ん?何かあったのかな?
「おーい!マリー?まだ行けるよね?もう少しやるよー」
「......まぁいいや。うんわかった!」
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