マリー強化月間4 休息編

 魔術訓練を明日に控えた私は、久しぶりに丸1日の休暇を頂いた。試験までの期間が残り半分を切っており、これが最後の休日になると思う。

 そんな私は、前からティニーとお買い物に行く約束をして居たので、ジャーニー家へと向かっていた。私の付き添いにニアも同行している。


「おはようございます!マリーです!」


 家の扉を軽く叩き、少し声を張り上げて挨拶をした。そうすると、急ぐ様な軽快な足音が扉の先から聞こえてくる。


「マリー!おはよう!ニアも!」

「おはようティニー、ふふっ、楽しみだね」

「おはようございます。ティニー様。私の事はお気になさらずに、マリー様と2人でお楽しみください」

「だめよ!せっかくニアも居るのだから楽しまないと!口調も戻して!」

「......あははっ、ありがとうー、ティニー。ここの所勉強ばっかでさ、外に出たかったんだよね」


 そうして、私達の休日は幕を開けた。




「マリーには、モストハザード領を案内したかったの!後少しで王都に行くのでしょ?だからその前にね。一緒に遊びたかったの!」

「ありがとう、前にハンディさんとは買い物した事あるけど、緊張して周り見れなかったから嬉しいよ」

「うん!だけど今日はちゃんと目的もあるのよ。マリーが王都に行く身支度を済ませるためよ」


 そうだったんだ。確かに私の私物は殆ど無い。学園での生活がどうなるかわからないけど何が必要なんだろう。


「マリーは、お兄さまやミラお姉さまと同じで寮生活になると思うわ。だから実際持って行く物はそこまで無いらしいの」

「あれ?じゃあ今日は何を買うの?」

「服とか装飾品よ!マリーの服は何着かあるけど動き易い実用的な服が多いでしょ?」

「そうだねー。せっかく王都に行くなら格好にも気を付けないと!」


 そういう物なのかな?まぁ、この2人がそう言うならそうなのだろう。

 と、3人で話し合いながら歩いていると、この間ハンディさんと一緒に来た店に着いた。


「そう言えばお金ってどうするの?私持ってないよ?」

「私のお小遣いよ。お家のお手伝いをしているのだから給料かしら?私が言い出した事だから、マリーは気にしなくて良いの!」

「好かれてるねー」


 拳を体の前で握って力説してくれるティニーと、揶揄っていのか楽しそうにこちらを覗いてくるニア。

 事実そうなんだけど、年下に奢られるのは気が引け......


「行くわよ!マリー!」


 マリーが楽しそうな笑みを浮かべ、勢い良く手を引いた為、若干転びそうになった。

 また貰ってばかり......いつかちゃんと返せないと。




「これ美味しい!」

「ふふっ、気に入ってくれて嬉しいわ!私もこれ好きなの!ティニー、口開けて?」

「ここの土地ならではだよねー。ちゃんと有効活用していて、私はすきだよー」

「ん?ぁー......!こっちも良い!」



 服を選び終えた頃には昼になっていた。その為、ティニーがおすすめのお店を紹介してくれた。

 家の一角をお店にしたのか露店と合体しており、私達は野外に置いてあるパラソルの付いた机を囲って昼食を取っている。


「マリー!ここってね。食べ物は多いのよ。私はまだ詳しく知らないのだけど、育て易い果物や作物が多いんですって」

「モストハザード領の収入源だからねー。狩猟なんて危険な事もあるけど、こうやって食べ物が美味しいのは良いよねー」


 この話は地理を習う時に覚えた事だけど、ここは大森林が危険とされているが、他領地には未開の遺跡や洞窟と言う危険あるのだとか。歴史的な遺産だったり漁業だったり領地によって売り出せる特色も異なるらしい。

 ここの領地もそうらしいけど、人の多い王都に店を出して、領地に新しく人が来る様な導線を作ったりしていると聞いた。


「それで、このお肉は何の肉なの?」

「この間、狩猟の際に狩った動物だよー」

「狩猟を行うこの時期だから食べられるの!」


 まじか。と言うか、凶暴な動物?だったよね。......絶対普通の肉じゃ無いよね?大丈夫なのかな?


「まぁ、美味しいから良いかな。それで?次はどこに行くの?」

「お買い物の用事は終わったのよね。どこ行こう?ニア?何かある?」

「んー......ここの領地って、他と比べ田舎だから遊べる所少ないんだよねー。まぁ、すぐ横に大森林って言う危険ならあるけどさー」

「あまり運動はしたく無いですよね。お腹いっぱいだし」


 注文した物はほぼ食べ終わって、飲み物をゆっくり飲みながら話している。

 お店からしたら邪魔になるけどここでずっと話すのも良いんじゃないかな?


「そうね......マリーって、お兄さまの事どう思ってるの?」

「私も気になるかも!んー。でもカインドさんにはミラ様が居るからねー」

「!?......べっ、別に......その、優しい人だなって」

「お兄さまは優しいけど、普通あそこまでしないのよ?マリーは何か身に覚えとか無い?」


 何故私に優しくしてくれるのかを本人に聞いた事がある。帰ってきたのは悲しい過去話だった。私はカインドさんの背負いすぎだと思うけど、本人がどう思ってるのか私にはわからない。

 それでその時に出来なかった事。つまり優しくある事。それを今行っているのだとか。


「どうだろう?カインドさんって優しいし、記憶喪失で1人な私を放っておけなかった、とか?」

「ミラ様が言ってましたけどー、カインドさん身長の低い子好きですからねー」

「本当なの?」

「?どうでしょうか。でも、お兄さまの後輩さんの身長は低いと、ミラお姉さまは言っていました」


 ......絶対に無いとは思うんだけど、まさかそんな理由で?んーでも助けられてるし、多分今後も学園でお世話になるし。


「まー、将来的には、ミラ様とカインド様が結婚かなー?。で、マリーは専属メイド?」

「どうだろう。そこまで考えてないかな。......あれ?それじゃジャーニー家のお店はどうなるの?」

「実家は私が引き継ぎますわ。そのために色々と覚えてますし、店番をして周囲の人に働けるというアピールもしてますし」


 まぁ、順当に行けばそうだよね。ティニーなら年齢以上に賢いし何とかなるのかな?

 でも、カインドさんとミラさんは結婚。ニアやティックは使用人。ティニーはお店の引き継ぎ。


 私は、今の問題が解決したらどうなるんだろう。


「そうだ、マリーにあげたい物があるの!」

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