マリー強化月間2 魔術編

「よし。これで区切りにして、今日は魔術に付いて話をしよう」

「......っ!やっと終わったー!次は戦闘だね!」

「落ち着け、ニア。その前に座学だ」

「なーんだ。マリーは魔力壁は使えるの?」

「?いえ、使えませんね。それに魔力壁って初めて聞いた単語です」

「無理も無い。ここイーグネス王国では一般には普及して無いからな。だが、これが使えないと魔術を教える事は出来ない。確実に覚えろ」

「わっ、わかりました。先生」


 ニアと一緒に勉強を始めてから数日後、私はティック先生から魔術を教わる事となった。


「は?先生?......まぁ良い。魔力壁とは文字通り魔力で作る壁の事だ。イメージは膜に近いがな」


 そこから魔力壁に関する説明がされた。

 魔力壁とは、体に薄く魔力の膜を張る技術の事らしい。

 術者の技量による為、絶対では無いけど魔術を体内や精神に行使される事もあるのだとか。その為の対抗手段として、相手の魔力を弾く為に自身の魔力を身体に纏うと事が必要らしい。

 魔力壁は盾の役割にもなり、ある程度なら刃物や棍棒などの物理的な攻撃を防げたり、火傷にもなりづらくなると言っていた。

 いや、魔術怖すぎるでしょ。


「本来から1年の頃に習う内容らしいが、入学予定の生徒は親が家庭教師を雇い、小さい頃から覚える事が多い。この手の事はニアが得意としている。俺に聞くより的確な答えが返ってくるだろう」

「な、なるほど。わかりました」

「でも、最初は難しいよねー。魔力なんて目に見えないしさ?どこを意識してどう力を入れるか、なんて私わからなかったもん」

「いや、お前は直ぐにやってただろ。教えてた執事長も驚いてたぞ。それより、マリー。実戦に行く前に知っておくべき注意事項がある」


 なんだろう?


「先程話した魔力壁もそうだが、魔術と言う概念についてだ。確かマリーは火と風に適性があるんだったな?」

「はい。そうですね」

「え!?マリー凄いじゃん!いーなー!」


 私の横で椅子に座っているニアが脚をパタパタさせている。

 本来はテラの力を借りて治癒が出来るのだけど、カインドさんが「他言するべきでは無い」と判断しジャーニー家やリムトレイ家には、私は、テラが使える火と風に適性がある事になっている。

 まぁ、テラが使えるってだけで私が使いこなせるかは、わからないんだけどね......


「カインドさんは驚いて無かったけど、コレって凄いの?」

「あぁ、一般的には適性があるのは1種類だ。領主や王族等、優秀な血が集まる血筋は扱える種類が増えると言われている」

「カインドさん見たいな例外もたまーに居るけどね」


 どうしよう。あの時「1種類が良い」って言えば良かったかな?けど、これを知ったの今だし......んー。


「まぁ、そこは別に良い。魔力が少なかったら行使すら儘ならんからな。その魔力についてだ」


 魔力と魔術の関係性について教えてもらった。

 魔術の適性と言うのは、幼い頃に教会で精霊と契約する事で判明するらしい。だけど、コレだけでは魔術は行使出来ないと言う。

 魔術の行使に必要なのは、起こしたい事象を想像する力と正しい知識。その事象に必要な詠唱。そして、その事象を実現する為に必要な魔力。

 この3つが揃って、やっと魔術が成立すると言っていた。込める魔力は小さ過ぎると成立しなくなり、大き過ぎると暴走するらしい。

 案外、制約が多いんだね。......もしかして思ってるほど便利じゃ無い?


「マリー、首を傾けるな。ちゃんと聞け。つまり俺が言いたいのは、魔力の操作がずさんだと自滅するという事だ」

「そ、それは確かに嫌ですね」

「ほんとね。目の前で出した火が爆発したとか。よく聞く話だよ?」


 そんな危険な事よく聞くの!?


「魔力壁とその行為で得られる魔力操作の必要性。理解したか?」

「はっ、はい!爆発なんて絶対したく無いです!」

「あははっ、爆発しそうになったら私が助けてあげるよ。安心して魔力を使っていこう!」

「お願いします。ニアさん」

「ま、取り敢えずは魔力壁の練習からだ。座学の復習も忘れるなよ。部屋に帰ったら詳しい事はニアに聞いてくれ」

「任せてねー。得意中の得意だから!」

「よし。コレで今日はお開きにする。各自仕事も当然あるが勉学を怠らない様に」


 うん。やっぱりティックは先生だよね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る