マリー強化月間 勉強編
領主のリットレイ家にお邪魔してから数日後、カインドさんとミラさんは、王都へと出発した。ミラさんの側近の方は学園に残っており、今回帰省はしていなかったらしい。
そして、その日から私の学園に入学するための特訓が開始した。これまではジャーニー家のハンディさんが語学や算術、マナーを教えてくれていた。
だけど、これからはリットレイ家に仕えている使用人達から教わる事になるらしい。
その為、私の寝泊まりはジャーニー家からリットレイ家へと変わった。
「......んっ、ふぁあ......ニアさん、おはようございます」
「あ、マリーじゃん。おはよー!」
起床時間が前より早くて少し眠い。
使用人の部屋は、2人1組で4部屋あてがわれている。男性と女性で2部屋ずつ使われており、私と同室なのはニアさん。
彼女の年齢は12と聞いた。とても明るく元気な方で、初対面の時も気後れせずに話しかけてくれた。薄黄色の髪をしており、長さは肩上のストレートボブ。身長は私とほぼ同じ。
私が低いのか、ニアが高いのか。どっちだろ。
「マリーは、今日から仕事を覚えるんだっけ?」
「そうですね。でも期間は1ヶ月だから、仕事の流れを覚える事に専念する様にって、ロバートさんが言ってた」
「1ヶ月で魔術学園に受かる様に勉強もするんでしょ。結構大変だよ?」
「色々と助けられてばかりだからね。言った事くらいは守らないと。って」
「私は勉強あんまり得意じゃ無いけど、戦闘なら教えられるからね!武器や魔術何でもござれ!」
リットレイ家では、領主のご子息やご息女が魔術学園に通い、付き添いに選ばれた使用人が屋敷に残る使用人達の講師役をするらしい。
その為、リットレイ家の使用人は魔術学園の生徒に負けないくらい優秀だと言っていた。
「さ、マリー、早く行かないと執事長に怒られちゃうよ」
「確かに、そうだね」
そうして、私の新たな生活が始まった。
曜日によって変わるらしいが、基本的に午前中は使用人として作業を覚えて、座学は午後から始まる。
前にオーウェン様にも言われたけど今の私には知識や経験が足りない。そのため、空き時間も座学に使わないと、その溝は埋まらない。
昼食を済ました後、私は少し手狭な部屋へと赴く。
「すみません!遅くなりました」
「いや、それほど待ってない。予定の時間を超えていないのだから何も問題無い」
彼の名前はティック。年は16歳。ニアと同じ髪色で身長は、当然私より高い。カインドさんと同じ?少し低いかな?少し怖い目つきが特徴の男の子。
普段はオーウェン様の側近として働いているらしいが、今は私の勉強を見る様に指示を受けて、彼はここに居る。
「さ、そこに座ってくれ。大体は旦那様から聞かされている。1ヶ月なんて無謀だと思うが旦那様から指示を受けた以上、俺も全力で合格出来るだけの知識を叩き込む」
「よ、よろしくお願いします」
「差し当たっては、現在の学力だ。マリー?渡した物には記入したな?」
「はっはい!コレです!」
「......何をそこまで緊張している?採点する。少し待っててくれ」
そうは言っても年齢の近い年上なんて、初めて会いましたからね。
昨日の夕方にティックさんから試験用の紙を渡された。そしてニアの監視の元、部屋で仮の試験を実施した。
わざわざ作ってくれたのだろうか?少し高圧的だけど優しいのかな?
少し時間が経ち、ティックさんが採点を終わらせた。
「......正直に言おう。記憶喪失の上に1ヶ月で魔術学園に入学したい。とか巫山戯ているのかと思ったが、想定よりは悪くなかった」
「!?」
「だが、想定より良いってだけで、このままでは入学は無謀だ。特に地理や歴史。魔術に礼儀作法だ。語学算術は多少できる様だがまだ甘い」
「......はい」
わかっていたけど、そこまで言われると気が滅入る。
「そうだな。確か同室はニアだったか?アイツも勉強は苦手だったな。この際だ。明日はニアを連れてこい。旦那様には私から話してみよう。競う者がいた方がやる気も出るだろ?しかも相手は年下だ」
「わっ、わかりました。」
ごめんニア。巻き込んで......貴方の犠牲は無駄にはしない。
「さ、始めるぞ。まずは地理だ。これは最近の教本では無いが、各領地に変動があったとは聞いていない。名称や場所。治めている領主を覚えるには事足りる」
そこから王都やその周辺、ここモストハザード領に付いても説明された。名称単体じゃなく、何が起こった場所なのかや何が特産なのかを同時に覚えると良いらしい。
何を覚えるかはティックさんに一任していて、私は言われた事を必死に覚えるだけである。
ある程度ティックさんから説明を受け、その後はニアとの2人部屋で黙々と暗記を行なっていく。
結構な時間が経った後、元気なニアが部屋に戻ってきた。
「マリー!ただいまー!」
「ふふっ、別に外に出てないよね?おかえりニア」
「どう?勉強は?合格できる目処は立った?」
「流石にそれはまだだよ。あっ、そうだニア。貴方も一緒に勉強しに来る様にってティックさんが言ってたよ?」
「......え?嘘?ん?で、でも私、メイドとしての仕事があるし......」
「オーウェン様と掛け合うって」
「......終わった」
ティックさんの伝言を伝えるとメイド服のままニアは、元気だった顔が無表情になり膝を床に付けて項垂れてしまった。
「に、ニア。一緒に頑張ろう、ね」
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