第16話 疎外感
私が魔術学園に入学する話が纏まった後、私とカインドさんは食卓のある部屋へと案内された。朝から話しており、窓を見ると太陽が高く登っていて、いつの間にか昼になっているのがわかる。
屋敷に入った時も思ったけど、すっごく綺麗だよね。どこ見ても埃が全く無いよ......使用人の勉強する様になったら私も掃除するのかな。
綺麗な屋敷に少し気を落としながら歩いていると、ティニーが居る部屋に着いた。
向かいに座ってるのがミラさんかな?
「すまないね、ミラ、ティニー。遅くなってしまった」
「大丈夫ですよ。大切なお話なのでしょう?どう纏まったの?」
「いえ、お兄さま。ミラお姉さまと楽しく話していましたわ。あ、マリー!私の隣に座って!」
「うん。わかった」
ティニーとミラが対面に座り、少し離れた隣の席に私とカインドさんが対面で座った。
ティニーの勢いが強くて座ったけど、ミラさんへ挨拶し損ねた。
「食事を始める前に少しいいかな?ミラはマリーと初対面だったよね?」
「......敬称を付けないなんて随分と親しいのね?......初めましてマリー。私の名前はミラ・リットレイ。リットレイ家の長女で一人っ子よ。宜しくね」
「ミス・ミラ・リットレイ。お初にお目に掛かります。宜しくお願い致します」
改めてミラさんを見ると、とっても綺麗な人だとわかる。
カミラさん譲りの長身に両親と同じ様なスリムな体型。少し威圧感があるのは先程、カインドさんを怒ったからだろうか。癖の無い髪は肘くらいまで垂れている。
「ふふっ、緊張しなくて良いのよ?それよりどうなったのかしら。カインドからの手紙の内容だと私の側近にしたい。みたいな事が書かれていたけど?」
「あっ、えってその......」
互いに挨拶も終わり座り直す。
そこに期待をしてもらっていたのなら、少し言い出しづらい。まぁ、でもあくまで私が言い出した訳では無いし、わかってくれるはず......
そんな事を考えていると、カインドさんが強張った声で話し始めた。
「その、マリーは僕の使用人として学園に行く事になったよ。勘違いしないでほしいけど、オーウェン様とカミラ様にはめられたんだ」
「ふ〜ん。そう。可愛いものね彼女。......カインドって、ほんと背の低い子好きよね?私の事は嫌い?」
カインドさんが人の名前を出して釈明するなんて珍しい。
釈明を聞いたミラさんは、チラッと私に視線を向けた後、直ぐ挑発的な目になりカインドさんを捉える。
こっ、怖っ!
「その結論はおかしいよミラ。何度も言ってるけど、僕が背の低い子が好きと言う事実は何処にも無い」
「......お兄さまは、私の事は嫌いですか?」
「あっえっと、そういう事では無くてね、ティニーの事は好きだよ」
「そこは、私にもはっきり言いなさいよ。それにマリーが貴方の使用人になる件、納得してないんだけど?私が今日欠席だったのはそういう?」
「ミラお姉さま。その、私はミラお姉さまと久しぶりにお話できて楽しかったですよ?こ、今回は私も何も知らされていないので......」
いつもしっかりしてるカインドさんがこうも狼狽えるのは珍しいし、ミラさんは睨むと怖いけど表情がコロコロ変わって可愛いらしい。ティニーは、いつもより甘えた感じになっている。
私を置いて3人が楽しそうに話している事に疎外感を覚えて、少し心が痛くなる。
良いなぁ
「こほんっ。......皆様。昼食の準備ができました。ご歓談は食後にゆっくりとお楽しみ下さい」
「「「はい」」」
「......はい」
この場に居た唯一の大人。ロバートさんに嗜められて、私達は昼食を食べ始めるのだった。
その後、カインドさんの必死の説得と私の主張を聞いてもらい、ミラさんにはなんとか納得をしてもらった。
カインドさんとミラさんの滞在は後少しとなっており、私は1ヶ月先と少し時間にずれがある事を確認して、その間で何を優先して覚えるかをみんなで話し合ったり、とても楽しい時間を過ごした。
カインドさんとミラさんは特別塔、アークミィと呼ばれる大多数の学生とは違う場所で勉学に励んでいるらしい。
そして、そこの生徒の従者も本来より少し緩いハードルを用意されており、それをクリアするとアークミィに入る事が許されると言っていた。
私もカインドの使用人として行くなら、そこに入らないと、使用人として居る意味がないとか思われるよね。難易度がただの入学から上位入賞まで難易度が跳ね上がった気分......
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