第11話 今後

 カインドさんの号令があった後、今更ながら自分が持ってきた物が手元に無い事に気が付いた。

 背負ってた籠もナイフとかが無い。


「あの、カインドさん。籠とナイフを何処かで落としてしまったみたいです。すみません!」

「ん?大丈夫だよ。マリーが本来居た場所に落ちてるよ。それがあったから僕はマリーが消えた事に気が付いたんだ」


 更に聞くと、私の魔力を追って来たと言っていた。魔力の操作に長けた者なら出来る芸当らしい。人探しにとても便利そう。

 そんな事よりここから出る前にやる事がある。


「あっあの!先程は助けてくれて、ありがとうございました。その、今回以外にも色々と助けてもらっているのに、私まだ何も返せてなくて......」

「いえ。ははっ、マリーは真面目ですね。気にしなくて大丈夫ですよ?」

「で、でも本当なんです!今回も薪も集まって無いですし、私は迷子になるし」


 振り返ってみると本当に何も出来てないな私。気分がどんどん落ちていく。


「薪に関しては、森の動物達が先程持って来ましたよ?テラがしたのでしょうか?」

「(まぁな。その、いきなりで悪かったと俺も思ったし)」

「ふふっ、そうみたいです」


 ほんとカインドさんは優しい。私を守るためにあんなに必死になってくれたり、今もこうして気遣ってくれたり。




 それから、2人+1匹で話しながら大森林を出た。道案内はテラが行った。

 切り株のあった場所なのだが、私とカインドさんが最初に居た場所から、結構離れた場所に存在していた。そのせいで帰る頃には夕暮れになり辺りは少し暗くなっている。


「凄いですね。この距離をあの短時間で来たんですね」

「実は少しズルもしたんだよ?」


 ズルってなんだろう。気になるけど聞いても多分わからないし、今はいいや。

 それよりだ。帰る途中でカインドさんから重要な事を言われた。

 私が使用した治癒は他言しない事となった。コレは私が思ってる以上に貴重で、知られる事でデメリットはあってもメリットは少ないらしい。

 同じくテラの存在も他言しない。私が使える魔術はテラが使える風と火という事にする。

 よくわからないけど、コレで私は二重術者を名乗れると聞いた。




 ジャーニー家に帰宅した私とカインドさんは、いつも通り夕食を食べ終えた後、「今後の話がしたい」とカインドさんが私の部屋にやってきた。

 私がベットに腰掛け、カインドさんは椅子に座って持って来た飲み物を飲んでいる。


「それでカインドさん。今後の話とは?」

「急でごめんね。帰る途中にも話したけど、君の能力についてもう少し話したくてね。それに記憶もだ」

「......?」

「先に記憶について、コレはテラみたいに何処かに封印されてるって話だったよね」

「(そうだな。記憶喪失ってより、記憶自体が取られて外で保管されてるって感じだ)」


 過去の私は一体何をしていたんだろうか。記憶をそんな形で封じられるなんて、只事では無い。

 カインドさんは、持っていたコップを置いて人差し指を立てながら真剣に話をする。


「そして、君の治癒ができる能力とテラの事。今は指輪になっているけれど、僕以上に魔力が扱える者なら、その存在に気づいてしまう」

「で、でも言わないとバレないんじゃ?」


 そうなのだ。あの場に居たのは、私と妖狐のテラとカインドさんの3人。そして人目の無い大森林内で行なっている。この3人が秘匿にすれば隠し通せると思う。

 そう考えていると、いつの間にかテラは狐になっており、私の近くで丸まっている。


「そうとも限らないよ。多分僕らの先生なんかは、既にここら辺での魔力行使に気付いてる」

「ひえっ」

「まぁ、気付いたのが先生だけなら良いんだけどね」


 気づかれるとまずい人でも居るのかな?

 そう思っていると、勢いよく手を叩いたカインドさんが話を切り出した。


「マリーの意見を尊重したいんだけど、僕からも一つコレからに対して提案があるんだ」

「なんでしょう?聞きたいです」

「僕らが通う、王立セレスティア魔術学園に来てみない?」




 カインドさんから詳しい話を聞くと、この魔術学園は魔術だけで無く、それに間する歴史も深く学べるとの事。それに魔術は万能で無くとも思い描く事のほとんどを可能とするらしい。

 正直、この地でテラやティニーと暮らすのも悪くは無いと思う。だけど、テラから聞く昔の私が何をしていたのか気になるのよね。


 因みに、狐になっているテラなのだが、魔力自体は私が持っているため、外見を変えて寛いでいるだけらしい。

 器用な事するのね。


「強制はしないけど、悪く無い提案だと思うよ?」

「あれ?ですけど前に「出自を調べられ厳しい入試に合格する必要がある」ってカインドさん自身が言ってませんでした?」


 大森林からきた私なんて、怪しさの塊だし入試の前に弾かれるのでは?


「マリーがこの話に乗るなら領主にも話そうと思う。まぁ、この領地から出るには許可証が必要だし断っても合う事になるけどね」


 手際が良すぎる。と言うか領主と話せるって何者よカインドさん。

 でもコレは渡りに船だ。現状、私は記憶を探すと言う指針はあってもその方法が無い。

 でも、なんでここまでして貰えるのかわからない。


「......そうですね、とても嬉しいお誘いです。できれば受けたい、と思います。......でもカインドさんはどうして私に優しくするんですか?」

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