ティニー視点2 少女の処遇

急いで家にやって来たのは、狩猟に出てた男性の1人だったわ。大森林で少女を発見して、その場の指揮を取っていたお父さまが「領主に確認を取る」と、早急に領主と繋がりのあるお母さまに使いを出したと聞いたわ。

 通常の移住では領主の許可は必須。今回みたいな大森林経由なんて、前例が無いの。お父さまの伝言では「面倒事になりかねない」と言う事らしいわね。

 正直、私には何が何だかさっぱり......お兄さまは大丈夫かしら。


 お父さまが女の子を背負って帰って来てからは大変だったわ。まず、お母さまと一緒にその子の体を洗ったの。


「身体に擦り傷があるね、服も所々破れていたり泥で汚れてる。かなり無理して森を歩いたようだね」

「それでもお母さま?そもそも、あの大森林をこの子1人で歩けるでしょうか」

「いや、無理だね。護衛が居たのか、さほど離れてない領地から無理やり来たのか。そこら辺は聞いてみないとわからないね」


 やれやれとお母さまは首を横に振りました。

 見た目は黒髪で黒目、小柄で童顔。私より身長が高いので歳上かな?お父さまとお兄さまの話では帝国の人間の特徴と一致する様です。


「......何もなければいいのだけど」


 私の不安は募るばかりです。




 その日の夕方。少女を2階で寝かせて私達は夕食になったわ。本来なら2人を労う為に色々作る予定だったのだけれど、お母さまとあの子の身体を洗っていたら普段より遅い夕飯になってしまったの。それに時間も無かったし手の込んだ料理は作れなかったわ。

 それでも少しは私も手伝ったのだけれど。


「突然だが、あの子は内で預かる事になった」

「どうしてだい?」


 話を切り出したのはお父さまだった。皆んなの顔を見渡して真剣に理由を話していく。


「理由は、3つある。さっきも言ったが、あの子は帝国の人間である可能性が高い。そしたら、あっちの言語を知ってる人間なんてこの地じゃ限られる」

「そうね、学園に行った事ある大人なんて、私か領主一家とそのメイド達。この地でわざわざ自力で帝国の言語を所得してそうな人は居ないね」

「あぁ、探せば居るかもしれねぇけどな」

「それで他には?」


 この世界では数種類の言語があるとされている。学園ではどれも基礎を学ぶらしいの。この地は大森林に接する面積が多い為、冒険者が多いがそれは国を跨いで来る事は殆ど無い。国を跨ぐ物好きはこちらの言語を話せる者が多い。

 因みに私は帝国の言語は覚えていない。


「それから、魔力持ちかもしれないって事だ」

「ん?それは珍しくも無いんじゃないかい?」

「あの子は、多分カインドと同い年かその下ってのが俺らの予想だ。で、育ったのが仮に帝国だとしよう」

「それで?」

「そこが問題だ。帝国の教育は進んでいる。こと魔術に関しても同じ事が言える。あの子が貴族か平民かまだわからんが、魔術で暴れられたら止めれる者なんて、他じゃ居ない」

「確かにね。私はもう無理だけど、あんたとカインドなら対処が出来る。そんな危険な人物を領主の家に置いておく訳にはいかないね」


 この土地の人達も大森林を相手にしてるだけあって、屈強な人が多いわ。だけど魔術が絡む戦闘になると経験がある者がグッと減るらしい。


「それで、コレが最後なんだが領主からの頼みだ。あの子に悪意や敵意があるか判断してほしいとな」

「まぁ、そうなるだろうね。あの領主夫人は優し過ぎる。立場を弁える時はあるけど、手が届く範囲は救おうとする人間だ」

「この地の人間だってその考えに助けられた人も多い」

「わかったよ、私は納得したさ。カインドとティニーはどうだい?」


 お兄さまと私は静かに2人の会話に耳を傾けていました。

 お父さまと領主さまで話をしたのかしら?お母さまの帰りは、お父さまより早かったから詳しくは聞いてなかったのね。

 あの子の見た目はとても可愛いし悪い事するとは思えないわ。勿論、見た目じゃそんな事わからないから感だけど......


「えぇ、私は大丈夫です。それにあの子にも事情があるでしょうから」

「私も大丈夫よ、お母さま」

「よし、コレで決まりだな。あの子がいつ目覚めるかわからないが、今日はもう遅いからな。特にカインド、無理したんだゆっくり休めよ」

「終わったと思うと疲れが来るね。せっかく帰省してるんだし、ゆっくり休むよ」


 話し終えたお兄さまが食器を流し台にある桶に食器をつけて2階に上がってしまった。

 この後、お父さまが話していたのですけど、狩猟は途中で終わった為、明日も行うとの事だった。明日、お母さまは店の番がある為、私があの子の看病をする事になった。

 寝ている人の看病って何するのかしら。とりあえず出来る事をしないとだわ。


「あ、私が食器洗います!」

「いいよ、あんたはもう遅いんだから寝な。やっとくよ」

「......はい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る