第2話 出会い

「っん、?」


 目を覚ました私は、初めて見る天井に戸惑いを覚えた。ここって何処だろう。首を動かし周りを見る。いやそれより


「ー?ーーーー、ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー?」


 視界に映ったのは、ガタイの良いブロンズの髪色をしたおじさんだった。

 上手く聞き取れない。この方は何を言っているのだろうか。


「ーーーーー、ーーーーーーーーーーー。ーーーーー?」


 聞き逃さない様にジッと聞いたが、やっぱりわからない。多分、さっきも今も聞き取れないんじゃ無く、言語がわからないみたい。

 どうすればいいか分からず混乱していると、見知らぬおじさんも困った顔を此方に向けてきた。

 何か話さないと。


「あ、あのっ、ありがとう。......ございます」


 最後の方は声になっているか分からない。どれだけ話していなかったのか、私の声は掠れていた。

 そんな私の声を聞いたおじさんは、またも困った様な顔になり、先程とは違う話し方をされたがやはり分からない。

 私の言葉も伝わっていないのかな?

 そうしてお互いが困っていると、おじさんが不意に動き出し部屋から出て行ってしまった。


「誰だったんだろう。えっと、ここはどこ?」


 室内は私1人になり、上半身を起こして周囲を見渡す。私が寝ているベッド。そして椅子と机。あまり使っていないのか物は置かれていない。

 キョロキョロしていると布団が少し動いた。


「?なんだろう。犬?猫?」


 動いた足元に目をやり、疑問に思いながらも布団を捲る。

 そこにいたのは、片手に乗る程度の人魂。薄水色に光っている。?人魂?


「...えっ?」



 予想していないモノが出てきた為、驚きはしたが何故だか恐怖心は抱かなかった。

 理由としては人魂に温もりを感じた。寝ていた私に寄り添う様に居てくれたからだろうか。

 なんで足元なのか疑問だけど。


「初めましてよね?人魂さん。そんな所に居ないで、こっちにおいで」


 相変わらず掠れた声だが出来る限り優しく語りかける。するとゆっくりと浮遊し私の目の前にやってきた。

 見た目では火の様に燃えているが熱さは無い。手を近づけても熱を感じない。

 不意に興味が湧き、そっと右手を掬い上げる様な仕草で前に出す。熱く無いなら触れるのかな?


「......その、少し触ってもいい?」


 そう言うと人魂は私の周りをくるくる嬉しそうに周った。嬉しいとかあるの?

 人魂が動くと風にあたった様にその火は靡いている。不意に私の目の前に止まり、右手の上に乗ってきた。

 熱く無く重さも感じない。何かが当たっている感触はあるが、触るという事が出来そうにない不思議な感覚。


「えっと、君は一体何処からきたのかな?.....私自身、何処からきたのかな分からないんだけどね」


 えへへっと自嘲気味に笑い聞いてみる。顔も体もないが聞こえているのだろうか。

 そんな疑問を抱いていると、いきなり人魂の薄水色の光が強くなり、私に向かって跳んできた。


「え?!なに!?どうしたの!?!」


 焦る私をよそに鎖骨の中央付近に降り立った人魂は、スッと私の体に消えていった。


「?......っ!いたっ!」


 突然、体を針で刺された様な痛みが走り、体が跳ねた。痛みは一回限りで他に違和感は無い。強いて上げるなら私でも分かる程に脈拍が上がってる事だろうか。

 私が大きな音を立てたせいか、走ってくる足音が聞こえる。


「はぁ......はぁ、体が熱い?。一体、どうなってるの?」


 一連の事でずれた布団を直しながら呼吸を整える。さっきのは何?どうしちゃったのよ私の体......

 徐々に感情は落ち着きを取り戻したが、脈拍は未だ高い。

 そうこうしている内に扉が勢い良く開く。


「何があった!?大丈夫か!?」


 先程、私に話しかけてきたおじさんが慌てて部屋に入ってきた。


「あぁ、起きたのか。大きな音だったから驚いたよ。......と言っても言葉が伝わらなかったな」


 いや聞こえる。知らない言語の筈なのにハッキリと聞こえて意味もわかる。


「ちょっとあんた、家の中は走らないでちょうだい。子供が寝てるでしょ」


 扉の前に立っているおじさんの後ろから、女性の元気な声が聞こえてきた。30〜40歳くらいだろうか。おじさんの奥さんかな?

 そんな感想を抱いていると、おじさんが横にずれて声の主が姿を現した。


「大丈夫だったかい?起きてすぐこの強面に合ったんだ。そりゃ声も出なくなるさ」


 優しげな笑みを浮かべ渡しに向けてきた人は,ボブカットの少し大柄な女性だった。


「......あのっ、いえ、ありがとうございました」


 言葉が伝わるか不安だったが、思った以上にスッと声が出た。


「いやいや、良いんだ。それより綺麗な声だね。っと、自分の事覚えているかい?」


 そういうと上半身だけ起こしている私の横に来て、女性はベットに腰をかけた。

 あれ?声、出せてる。さっきまで枯れた声だったのに。

 そうしていると、少し驚いた顔で私をみていたおじさんが口を開いた。


「......驚いた。まぁ、起きてすぐだったからな。混乱してただけって事なのか?」

「無事だったんだから、それで良いじゃないか。今から夕飯なんだけど嬢ちゃん。食べれそうかい?」

「はっ、はい!お願いします!」


 何をお願いするのよ。焦ってよく分からない返答をしてしまったが、笑ってくれたので伝わったらしい。

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