祭りの余韻
第27話
「最っ高に、気分が悪い」
ジャックは心底つまらなそうに、吐き捨てる。刃物で壁に張り付けられた男は何も喋らず、ただ血を流した。
「……気分転換、しよう」
呟き、服を着替える事もせずに血塗れのまま、
×
「(……そう、これだ》」
拡がる悲鳴に、恍惚の溜息を吐く。身体を思い切り動かし、ジャックは最高に気分が良かった。逃げ惑う人々を、持ってきた
広い通りに出、雑多な人の集まりの中で売り物の大剣を取り出す。
ジャックはそれを徐に鞘から抜き、
思い切り振り抜いた。
人混みに自身を中心とした円状の空洞ができ、祭りの終盤で気を抜いていた人々が倒れていく。まだ湯気の出る肉の地面を踏み
「頑丈だけれど……少し重い、かな」
溜息混じりに売り物の感想を呟く。ジャックは振り抜いた勢いのまま商品を放り捨て、次は両手剣を抜く。
×
商品の試運転の筈なのに、ジャックは使用したそれらの感想を呟いては棄てた。商品を回収する気力が全く湧いてこず、彼はただ、周囲を蹂躙していくだけだった。自身と他者はこういう関係なのだと、自分自身に言い聞かせるように。
自身は強者で、他者は、何も争う術なくただ消費されてしまうような、そんな存在。
随分と気が紛れた。気が付くと、真夜中になっていたらしく、随分と周囲は静かになっていた。
肉塊の床を踏みながら「家に帰ったら徹底的に掃除しよう」とか、「寧ろ新しく作り替えてしまおう」、だとか考えて、明日からの予定と出て行く金の量を大まかに計算する。
——腕が重い。住処に帰ったら、中身のメンテナンスもしなければならないようだ。
と、
ぴたりとジャックは足を止める。何処かで嗅いだことのある、薬品の匂いがした。腐臭や死臭、火薬と鉄錆の混ざった祭りの空気の中で、その強い匂いはすぐに嗅ぎ分けられた。
「ねぇ、そこにいるのはもしかしてカカシ君?」
思っていたよりかなり低い位置から、知り合いの声が聞こえる。
そして。
死体の山の中に、首のないプラスチックドールの身体がゲル状の赤い液体に塗れて、転がっていた。
それを認識した時。ジャックの思考が一瞬、停止した。
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