第26話

 一通り甚振いたぶった後、


「ところで、前会った時は沢山仲間が居たみたいだけど、どうしたのかな?」


ジャックは首を傾げ、ナナセに問うた。ナナセは顔色は悪いがまだ意識があるようで、時折「絶対に許さねぇ」とか「……痛い…」という呟きが聞こえる。


「……もしかして、見捨てられたのかな?」


ナナセが此方の問いに答えてくれないので、ジャックは敢えて逆撫でするような言い方で、ナナセの顔を覗き込み、にぃっと嗤って煽った。そうすると、


「……彼奴、らは、俺の…代わりに可哀想な、奴らを救って、る」


ナナセは声に怒りを滲ませつつ、正直に答えた。ナナセは自身を傷付けるよりは、仲間に関連する事で揺さぶる方が、反応が返ってくるらしい。


「なるほど。『相手は殺るケド自分の手は直接汚さない』……なんて、中々いい具合に潔癖クズじゃないか」


「……な、」


ジャックの返しに不意を突かれたのか、ナナセは目を見開き口元を戦慄わななかせた。ジャックは嗤ったままの表情でナナセに言う。


「だってそうだろう?君はオレの犯した『殺人罪深き事』を憎んでる。でも、君の仲間達が犯している『粛清』という名の殺人それには、何も言わないじゃないか」


寧ろ、目を逸らして許している所とか更に良いねぇ、と目を細めた。


「……そんな、こと「有るんだよ。現に結構な人数の同業者マフィア薬売りに武器商人達その他大勢が君の仲間達に殺されたって噂だよ?」


その言葉を遮って真実を伝えれば、ナナセは「……嘘だ」と力無く項垂れる。


「まあ、君の仲間達も君と同じように転生してきたんだろうけど、殆どがマホドーラ人こちら側だろうからねぇ」


ナナセの絶望した様子を満足気に笑い、ジャックは幾分か溜飲が下がった。


「じゃあ、そろそろ本格的に死んでもらおうか。……君、内臓出しても死なないし意外としぶといし


通常の人ならば、もう失血死やショック死が起こっても良さそうな状態だった。それなのに。


「…テメェの事、絶対に殺してやるからな」


ナナセは呪詛を吐く。


「………………へぇ。オレのことを『殺したい』って?」


ジャックは笑顔を貼り付けたまま、訊き返した。



×



「オレを殺したいんだったら、もっと強くなってから出直しておいでよ。或いは、君のことが大好きな仲間達を引き連れてさ」


 ジャックは喋らなくなった勇者に言い放つ。


「——もう無理だろうけど」

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