第23話
ジャックを追うように入った廃墟は、殆ど何も無かった以前と違い、かなり酷い有様だった。床には大量の長剣や大剣、猟銃、機関銃等が種類ごとに分けられているものの乱雑に置かれ、足の踏み場が殆ど無い。
建物の内部は血に塗れ、剥き出しの石の床だけでなく壁にも茶色く変色した血液の染みが付いている。血液だと思われる鉄錆の臭いだけでなく、何かの
「ルールは簡単。『死んだら負け』。以上!」
言うなり、ジャックはナナセに背を向け、銃を放り捨てる。
「何の……つもりだ」
武器を構えたまま、ナナセはジャックを睨み付ける。
「そりゃあ、」
ジャックは身体を傾け、壊れた人形のように振り返った。虚な目で爛れたような笑みを浮かべ、ナナセに告げる。
「君を
×
ナナセの動きは、見ない間にきちんと形になっていた。大剣を振っても軸は振れず、しっかり踏み込んで剣に体重を乗せられている。
「……少しは楽しませてくれそうだね」
言葉とは裏腹に、ジャックはつまらないと言いたげな表情だった。
「馬鹿に……するな!」
大きく振られた刃先を避け、
「だって『きちんと形になった剣の動き』なんて、何の面白味も無いだろう」
ジャックは売る予定
「——はぁっ!」
ナナセは勢いをつけ、大剣を振り下ろした。それをジャックは長剣を敢えて下から思い切り打ち付け、ナナセごと弾き飛ばす。
「くっ!」
「ほら、腕力の差で直ぐに
弾き飛んだナナセの大剣を拾い上げ、他の大剣の山に放り投げる。
「さあて。丸腰になっちゃったケド、これからどうす——」
ジャックがナナセに近付いたその時、顔面に液体を掛けられた。
「何を、した……?」
痛覚が鈍いので、ジャックは酸や塩化物などの薬品を食らっても痛くは無い。痛くは無いが、
咄嗟に距離を取り顔に手を滑らせると、手袋越しにぬるっとした触感と共に、肌とは違う表面が荒く硬いものに触れた。
「……あ゛?」
これは、骨だ。顔が、溶けている。
「……これは、どういう事……かな」
声が強い感情で、震える。理解はしている。状況の理解はしているが、思考が繋がらない。
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