第2話 銀行強盗
「やいっ、ラパン3世! ご機嫌いかが?」
「最悪だっちゃ…早くここから出してくれ」
ウサギのマークが可愛らしい…そのラパンじゃなくってよ〜ん。牢屋の中のラパン3世は、ジンギスカンちゃん…いや、ラムのような喋り方で嘆いたです。
「静かにするです。そろそろご飯の時間です」
「今日のご飯はタラコかな?」
「マスとサザエの子どもなら、タラのコではなくて…う〜ん…マッスァザエ?」
[ニノミヤ、マツジュン、オーノ、ヨーコ…]
「もしもし」
「おー、ミスターバカヤロー。悪いが捜査に出てくれないか?」
声の主はヘガデル巡査部長。いったい今日は、なんヘガデル?
「構いま千利休。さりとて今日は、どんなアンケンマン?」
「そのことなんだガンジー、なんでも今日は、銀行強盗らしいバイキンマ…」
プッチンプーチン! あの野郎、攻めやがったな?
「ラパン3世! お昼ご飯はウキウキウォッチン!」
「メシってないとも?」
ラパン3世は、しばらくの間ご飯はヌキにされた。「抜き」をカタカナにすると、なんだかとってもエイチ・ツー・オー…
カー…ラー…スー…
「また一緒になったな、ミスバ」
「その呼び方やめてくださいって…」
昨日と同じく、ポップマン巡査とコンビを組んだのだ。ポップマン巡査の運転はとても荒いことでユーメイだ。どろん、ユーレイだ。
「ポップマン巡査! 体がいくつあっても足りません! ガタガタです!」
「どうしたガタガタして! ケツの穴にチョメチョメぶち込まれて奥歯シャカシャカ!」
綺麗に舗装された道なのに歯磨きしてる!
「巡査。現場まで結構ありますし、音楽かけます?」
「オーケー! ツッコミと?」
「ボーケー! スイッチオン! みゅ」
[いいえ私は ラトビアの女〜]
「ミスバぁ、お前ずいぶんと古い曲知ってんなぁ?」
「おいら結構好きなんす。桐たんす」
「ここか…確かに猟銃を持った男がいるな」
「ええ…そうですね。慎重にいきましょう」
あれ? いきなりまともなセリフになったぞって気づいた頃にゃあにゃあワンワン…
いらっしゃいませ〜
「ウィーン」
「いや店員と自動ドアが逆になっとるやないか〜い!」
「そもそもこの状況でいらっしゃいませ言うのって勇気ありますよね〜!」
「ほんそれ! わかる! 弾丸1発!」
バキューン!
座布団の代わりに弾丸を。花束の代わりに…
いや言うてる場合か!
天井に穴が空いた! 光が差し込む! …ダメだダメだ! 作者の正気が戻ってきた! ウォオオオオオ!!
「撃つなら私を撃て!」
「ポップマン巡査…」
「撃つときは俺が撃つ!」
「犯人…」
「おいどんの命だけは見逃してくれ!」
「自分…」
…やーめた! 犯人の猟銃を奪ってこの事件にケリつけよ! ゲリはつらいよ!
「すき焼き!」
「ウオーナニヲスルー」
いきなり猟銃を掴まれて犯人もビビリバビデブー。ガラスの靴もいつか割れるのさ!
バキューン!
…ああ、走馬灯が見えてきた…そうまとう…そうかがっかい…そうか…がっかり…
「あれ! おいら死んでない!」
「俺も大丈夫だ…弾は?」
カーン! ケリー!
キーン! パチー!
クーン! イヌー!
ケーン! …!
コーン! トンガリー!
弾丸があちこちにぶつかって…
プスン…
「やばい…」
「やばいですね…」
「ケーンだけ無言だなんて…」
犯人よ、問題なのはそこじゃない。
銀行をトイレ代わりに大きい方をしようとしていた巨人のケツに刺さったのだ!
「ぬぁんだぁ? いむぁのわぁ?」
巨人はケツの穴に鉛玉がぶち込まれ、今にも奥歯をシャカシャカしそうだ…
「ケぇツぅがアぁツぅク…ケツに熱い異物が入ったのを感じます。私はエキサイティングです! もう一度お願いします!」
「ポップマン巡査…あの巨人、初めてのことで驚いて、グルグル翻訳した日本語みたいな喋り方してますよ…」
「そうだな…大変なことになるゾウリムシ…皆のシュー! 早く外に逃げて、みんながいなくなったら巨人のケツにシューウ!」
うわああ、って感じぃ? みんな逃げたのねぇ? そんでぇ…
「よし、みんな逃げたナー!」
「ポップマン巡査、あの犯人に協力してもらいまショータイム!」
「イーヨーカドー」
「やいっ、犯人! お前は銀行に戻って巨人のケツに弾丸を撃ちこみ続けろ!」
「なんで俺がそんなこと…」
「やってくれたら、お前が銀行強盗をしたこと、チャラにしてやるから!」
チャラに釣られてチョロいやつめ…
バキューン!
「オーウ!」
「あなたは〜 雲の陰に〜」
バキューン!
「イエェス…」
「明日の〜 夢を追いかけ〜てた」
「やいっ、犯人! チャラにするとは言ったけど、チャラになれとは言ってないからな!」
ミーがツッコミを入れると、ポップマン巡査はラジカセを持ってきた。
「カラオケ音源、持ってきた」
このイントロは…
これ大好き! この歌を歌って、巨人を追い払うんですな!?
「いいえあなたは ラトビアの男〜」
「いいえ。ラトビア出身ではありません」
「じゃあ、どこナノ? どこミクロ?」
「エストニアです」
「エストニアの男〜」
プスン…プスンプスン…
ボンッ! ボンッボンッ! ボボボボ…
「おお…エストニアに帰るんですかね?」
「たぶんな」
まさかバルト三国繋がりだったとは…たくさんの弾丸のおかげで巨人は空を飛び始めた。
「達者でな〜」
「お体気をつけてくださいね〜!」
「風呂入れよ! 歯ぁ磨けよ!」
その日、エストニアに春がきた。
世界一くだらない物語 サムライ・ビジョン @Samurai_Vision
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