第5話

 寮の自分の部屋に帰ってから、急に不安になった。


 自分みたいな初心者が投稿した小説を誰が読んでくれるんだろう? って。


 画面の向こうで自分の作品を読んでくれる人がどれだけ居るか。


 いや、居ないだろう。


 純には悪いけど、断りのメールを送ろう。


《純、ごめん。やっぱり小説書くのやめとく》


 返事はすぐに来た。


《初心者だからこそ伸びしろがあるんだろ! まだ諦めるには早すぎるぞ、雫! 今は自信がなくて当たり前。自信はいつか必ずつくから、胸張って先ずはプロット書いてみろよ! いつでも待ってるから! おやすみ》


《ありがとう。そこまで言われたら、書くしかないね。頑張ってみるよ、純。おやすみ》


 純はいつだって私のヒーローであり、王子様だ。


 純と出会って良かった。


 私は徹夜でプロットを書くことにした。


 どうせ9月の半ばまで大学は休みだ。


 今のうちに乗っちゃおう、このビッグウェーブに!




 結局、書いたのは恋愛小説。


 メインキャラのモデルは私と純。


 純みたいな優しくて良い人をイメージしつつ、かつ、波のあるストーリーにしてみた。


 なるべくエモいシーンも盛り込んで。


 ここまで書けたんだし、純に見せようかな。

 初めて書いたプロット。


《純、プロット書けたから見てほしいんだ。また公園で会いたい》

《今すぐ車で迎えに行く》


 きゃー。純が車で迎えに来てくれるなんて、何かドキドキする。


 純が車の免許取ったのって高校2年生の時で、純の車に初めて乗ったのは再び付き合い始めてからだけど、それでもやっぱりドキドキする。


 時計を見ると午前7時。


《何時頃着きそう?》

《あと20分くらいで着く》


 私は急いでプロットを書いたノートをトートバックに入れて、身支度をした。

 よし、5分前だ。

 そろそろ行こう。

 たぶん、純はもう来ているはず。


 部屋を出て、寮の門を潜ると、見覚えのある赤い車が既に停まっていた。


 あれは純の車だ。


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