第4章

第1話 うーみーはひろいーなー

 航海は順調に進み、補給をしながら継続。

 補給には時間がかかるので半舷上陸っていう、守る人を残しておいて他の人は上陸して休暇を取るシステムが取られていた。私は毎回上陸。兵士じゃないからね。

 星の軸がどうなっているのか知らないけど、赤道は暑いし南方は寒い。極地は寒い感じだろうね。大陸最南端をまわったときはみんなで肉食ってた。寒い寒い。


「肉は栄養、栄養は寒さをしのぐ! みんな頑張ろうね」


 みんな頑張ろうね。


 この一言で〈士気超向上〉が発動しみんなポンプアップで体を温めていた。いけいけギャル凄すぎないか。


 それでも寒いので賢者の〈超範囲・暖房〉を3隻まるごと入る範囲で掛けて寒さをしのいだよ。基本単体だった賢者が範囲を獲得するって何かがおかしい。まあ、使うけどさ。


 最南端を過ぎれば暖かくなる。チャルコタン帝国で補給だ! この大陸、帝国多いね……。

 チャルコタン帝国は領土の大半が冷たい砂漠で出来ている土地だそうで。国力ないんだろうなー。資源が豊富な土地へ攻めたくても力がなくて出来なさそうだ。と、雑貨屋の店主に聞いた。

 何を輸出して国を成り立たせているかというと、「あの」あくー文明の遺跡からゴムがでるだそうで。ゴム! 靴底につけたい! あとはミススル銀の上位互換であるミススル白金。鉄や木材もでるみたい。あくー文明の遺産で生きてる国なんだね。


 ゴムが儀式になるというので、参加。以前とは違って範囲バフと士気超向上をする係だけどね。


 あくー文明は砂に埋もれているらしく、入り口だけが地上に出てた。これから神官が儀式を開始するということで〈範囲バフ・大回復〉を展開。あとはどうにかなるでっしゃろ。

 出現するモンスターは、ミイラ、リビングデッド、岩のゴーレムなんだけど、ゴーレムの一撃と腐乱死体の二種が持っている毒以外はさほど怖い物はない。

「賢者と併せてダブルスキル〈大範囲・浄化〉」

 これで腐乱死体は出てきて即死亡。最初から死んでるけど。

 ゴーレムは士気超向上している兵士の皆さんがたこ殴りして破壊。

 逆リンチだろこれー、などと思いつつ儀式は終了した。

 全然被害が出なかったのでたんまりとゴムとユドはもらったよ。

 靴底に貼り付けるには専用の職人が貼り付けた方が良い形状変化を起こすらしい。

 なるほどこの塊はまだ何も特性がないのか。

 じゃあ、と、靴底職人に貼り付けてもらった。インソールはハニカム構造を教えて綿と併せて作成してもらった。本当は違う種類の化学繊維なんだろうけどね。ここにはない。

 加えて防具の裏面にも。水は通さず通気性がある性質を持つゴムになるらしく、地球製品に近いなーと思ったよ。これで魔法防御も強くなるし、打撃にも強くなるはず。


 ミススル白金は相当凄い素材だろうけど、国家輸出レベルの品なので市井には出回らないとさ。ま、そんなときもあるさ。


 チャルコタン帝国での補給を終えたら次の補給地へ。帆だけで頑張る時代なので補給地はいっぱいある。

 この、次の補給地までは少々厳しい。クルード海の外海に出てしまうのだ。だから危険ともいえるし、だから工作されないので安全ともいえる。

 どうであれ嵐や荒波に備えないといけない。

 これはさすがの私も祈ることしか出来ないなあ。


 祈りはむなしく、雨雲が迫ってくる。停泊して嵐をやり過ごすのだ。


 ゴゴーンガガーン


 こ、怖くはないけど


 ゴゴーンガガーン


 ものすげえ揺れる!

 いけいけギャルには〈耐性大体無効っち☆〉というものがあるから揺れて戻すなんてことはない。ただ船の上をごろんごろん転がるのはさすがにいやだわ!


 嵐が去った結果、一隻座礁したそうだ。比較的安全だと思う場所で待機したんだけどなあ。

 80人程度生き残ったのでほかの船に分散配置。〈大範囲・大回復〉で癒やして傷を治した。



 100人想定の船に140人とその装備が乗るんだから船がきつい。しかも私と近くにいたいって連中20名が無理に乗ってきていて160名もいる。きつい、きついぞこれは。

 乗車率140パーセントマシマシくらいではなかろうか。次の補給基地で一度降りよう。

 やりたいことは決まってるし、それは焦ることでもない。


 ということで次の補給基地で下船。みんなまた前線でねー。


 この補給基地から陸路で本拠地や前線までつながっている。別に海路だけでつながってる訳じゃあないんだね。

 インタスタラ帝国は私が船に乗ったところまでは知っているはず。前線に魔導兵器とかバカスカ置いているに違いない。

 私はその裏を突く。


 さあ、行ってみますか、ゴムの付いた新しい靴でね!

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