第8話 結婚式でいろいろなものが披露されていたので宝物庫に行ってみたよ!

 跳ね上げ式の橋を渡り、多分水堀なんだと思うけど、それを思わせない優雅な水面をたたえる湖を歩きながら入場する。もちろん結婚式に合わせて開かれた見学会なんだけど、王室が入るような城ってみ……たことない! うん、トンガランではなにもなかった! みてないみてない(自己暗示)。


 城の外見は割とシンプル。極めて重要なポイントは【石じゃない】こと。鉄筋コンクリート造ってやつだわ、〈探感知〉でソナーっぽく魔導波当ててみたら中に鉄筋が入ってるのがわかった。あ、でもコンクリかどうかはわからないね。似てる色だと思うんだけど、もう17年以上前にみた記憶だけだからなあ……。

 でも一つ一つの装飾がこっていて、キリッと引き締まる感じの青い宮殿だね。ロイヤルブルーは宇宙が変わっても共通のようだ。紫はどうなんだろ。

 絢爛豪華にしないのは、多分普通に城としての機能を使っているからかもしれない。


 やはり何もかもが凄い。一階は結構無骨で兵器庫とか置かれてる。見事な絨毯が場違いみたい。籠城するときのための、兵士の詰め所なんだろうね。

 3階は王族の寝室なので2階が謁見の間。うーん言葉にできない。素晴らしい像が建ち、赤い絨毯が敷かれ、古代のアーティファクトっぽい何かが鎮座している。ここだけでかなりの財宝がある。宝物庫とかいったいどれだけのものが保管されているんだ……。


 で、私は宝物庫に通されちった(星)。一応城の見学の際にジョブ鑑定したんだけど、見事に数台ぶっ壊して真打ちを登場させ、上級聖女というジョブがあることを確認してもらったからね。

 盗んだりしたら即座にジョブ機能が停止するだろうし、ジョブの性格誘導で盗みを働くという考えも起こさない。ジョブスキルに〈記憶術〉〈映像化〉を持っているので私の見た感じそのままに入れなかった皆さんへ中身をお届けできる。最の適の役。

 それで中身なんだけど、まず見たのは武器の間かな。エンチャントを複数回施され「+3」という表記になっているただの剣があった。でもいともたやすくコボルトの肉を切り裂くそうだ。なまくらにしか見えないのに、凄いな。


『俺にこういうエンチャントはいらないぜ。毎日の手入れで少しずつ切れ味が増してるんだ。そこにエンチャントとかされたら狂って爆発しちまう。翠乃沃土もそうだよな』


 え、あんた入場する際においてきたでしょ!? 見えるんかい!?


『もうかなり長いこと魔素をもらっているからな、そこそこわかる。翠乃沃土もそうだろ?』


 私の手首にいる翠乃沃土もふるふる動いてる。まじか。私のあんなことやこんなことまで。


「ってぇ!」

「なにかありましたかな?」

「いえ、別に。さあ次をみましょう。私の〈記憶術〉と〈映像化〉でこの宝物庫を皆さんに見せないといけませんから」


 双方に思い切り脳内を殴られた後は次のところへ。


 次は栄光の証の部屋。○○の戦いで王が着ていた鎧だとか、しんがりとなって味方を避難させ自分は殉職した騎士団長の装備だの。ここは国民受けがよいな、しっかりと記憶しておこう。じー。特にこの国で何かしたわけでもないのでまだ愛着があるわけではない。じっと見るだけ。


 金銀財宝はパス。これは妬みも生じるからね。

 巨大な緑の宝石、エメラルドかな、それを撮影しただけ。


 防具も見学。魔法の品に+3エンチャントを施したり+5エンチャントを普通の鎧につけたりしているのが主流。


「防具にエンチャントをする理由は何ですか?」

「魔法の膜が出現して防御力がそれだけ増加するほか、耐熱耐冷、耐摩耗など、様々な効果が現れるのです。また防具箇所によっては〈ゆっくりとした落下〉など、特定の魔法の効果も現れたりします」

「なるほど。私も大賢者を持っているので凄さがわかる。ただの衣服や鎧の上に魔法の膜が出現した方が〈増加装甲〉や〈空間防壁〉の強度が上がる。あれって素の防御力に応じて防御力が上がるんですよ」


 大容量のバックパックなんかもみて、ほしぃーって思いながら最後の部屋、秘宝のところへ。ここだけは〈映像化〉ではなくて〈音声化〉にしておいた。あぶねーもん。


「なんですか、この巨大な魔石は……」

「先代の王が50名の部下を連れて65階のダンジョンに挑んでとれた魔石です。これ以上のものはこの世界にはないかと」

「凄いですな、私がとった魔石は青光りしていたけど、65階まで降りると真っ赤に光るのですね」


 宝物庫から戻り、出席者みんなに映像を見せる。「おおー」とか「すごーい」など歓声が上がる。頑張って撮った甲斐がある。

 特に栄光の証の部屋はシーンとなったり喝采があがったりと大盛り上がり。撮ってよかったなーという感覚を覚える。


 秘伝の宝、赤い魔石は言葉だけだけど手に汗握ってるのが伝わってくる


「赤い魔石ってどんなのだ?」

「赤い色した魔石だろ馬鹿」

「ちょっとまがまがしい感じを受けましたよ。65階って感じが凄くしました」

「「へぇー」」


 城の見学会はこれにておしまい。さすがに人数が凄いので晩餐会ごっこはできなかった。

 明日はいよいよ結婚式だ。わくわくするねえ。





 結婚式当日。いいホテルに泊まらせて頂いたのだけど広場の方を〈ズーム〉。広間ではもう結婚式の余興はスタートしていて、ピエロが曲芸を披露し移動式観覧車が人々に笑顔を届けている。ああ、拳闘試合もやってら。

 いいねえいいねえ、と思いつつ姿見を使って身支度を調える。髪の毛はまだ生えそろってない。美容師さんが切りそろえて目立たなくしてくれた。もう一回伸びて切りそろえれば元の髪になるみたい。

 上下の服はピッカピカだ。丈も大丈夫。できれば膝丈もしくは脛くらいのスカートがよいのだけど、ま、ねーっすから。

 丈がない分ガーターの配置はしっかりと。ピシッとまっすぐ伸びるようにしておく。冒険するときはガーターの本数を多くするんだけれども、今日は前と後ろで1本ずつでいいっしょ。

 バトルロングブーツを履き靴下の役割も果たすタイツをその中にいれる。

 マントも正装なのでしっかりと羽織って、準備万端! 防具は今回着けなかったよ。


 確か装備は会場に入る際にしまってくれるよね。抜き身の花草水月が若干怖いけど、丁寧に皮で巻くなどの対策を施してくれるはず。花草水月も馬鹿じゃないだろうし。


『おまえより何倍も賢い』


 とのことなので安心安心。


 それじゃあ出発だ。屋台で肉を食べてからな。っかーうめー。


 会場に入り、閲覧席へと座る。運良く席に入り込んだレベルなので、結構後ろのほう。でも段差をつけてくれているので何やってるかは見っえるー。


 どんな結婚式になるんだろう。楽しみだなあ。

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