第4話 レアモンスター集合

「こ、コボルト……」


 次のフロアはコボルトだった。

 日本とかで出てくるあのかわいいコボルトではない。大型狩猟犬種が立ち上がり、強靱な顎と武器、そして防具を持って襲ってくるのだ。魔物の足の筋肉を持って。非常に危険な魔物と、冒険者ギルドの読み物に書いてあった。


「ウルフコボルトじゃないだけましか……」


 すぐさま翠乃沃土を左手の手首に赤い腕輪として仕舞い、右手から風魔法を中心に魔法を乱射していく。

 とにかく接近されたら厳しいのだ。〈空間障壁〉と〈皮膚装甲〉があるからすぐには死なないけど集団で囲まれたらすぐさま魔素を使い果たしむさぼり食われてしまう。


「くっそ、速くて致命傷の魔法があまりない」


 今は朝陽も元の体に戻って戦闘態勢を敷いている。動きにくそうだが、私の魔法乱射を抜け出てきたコボルトを固定砲台のように潰してくれている。これなら大丈夫かな?


「……いや、ここで魔素を使い果たしちゃったら次にいけない! 魔法の乱射をやめて突っ込む!」


 右手にバックラー左手にサーベル。いつものスタイルに戻ってコボルトに突撃を仕掛ける!

 モンスターは戦闘判断能力はそんなにないのか、避けたりするけど、魔物に比べると攻撃が単調である。右手のメイスを振り回してくるだけだ。それでも怖いんだけど。冷静に見切ってバックラーでいなし、サーベルで右手を吹き飛ばす。右側面から攻撃が来ているのでバックサイドステップで距離を取る。あれをスウェーで避けられたならさらに攻撃が続くんだろうけどなあ。訓練不足でござる。

 まあそれでも朝陽が暴れたこともあってこのフロアは制圧した。


「しかし……魔法の防御を全部貫通して打撃をもらうとはね……」

「帰るか?」

「一応次が最後らしいし覗いてく。別に閉じ込められるわけじゃないしね」


 今の私の、フルパワーの防御なはずなんだよね。それを貫通か。死が背後に迫った感じで恐ろしくなる。


 戦利品を回収し向かった、最後のフロアはデカいトカゲのサラマンダーだった。ものすごい高温で包まれているのがわかる。

 しかし私にとってはボーナスモンスターだった。


「あはははははは!! 〈ブリザードフレア〉!!」


 猛吹雪と冷気の爆発がサラマンダーを襲う!

 サラマンダーは弱点の冷気と自分の火が作り出す水蒸気爆発によって即死した!!


「普通の人は水までが限界だと思うんだけど、私は冷を混ぜて凍を作れちゃうんだよねえ。賢者様々。前の国、その図書館に存在した特別区画に魔法が載っていたんだよねー。ひゃっほう」


 サラマンダーの皮はそのままでも火耐性が高いのだけど、革にすれば火耐性がさらに上昇するから暑さをしのぐマントにぴったりだし、消防服とかにもなるから需要が高い。アベネンシスの冒険者ギルドのダンジョン攻略指南書に書いてあったから間違いない。それそのものが魔法の品。しっぽはしっかりした頑丈さがある革になるし、肉は旨い。しっぽの皮はベルトや太ももバックの枠組みにしてしまおうか。全部運ぶのは不可能だけど、よいところを優先して持ち帰ろう。バック借りればよかったなー。



 あ、あぶないあぶない、魔石を取るのを忘れていた。フロアの中心部に転がっているこぶし大の青く輝く石、以前エンチャントさせて頂いたときにもみたな。これが魔石だろう。

 魔石を左太もものバックにしまうと、悠々と凱旋したのであった。


「朝陽ー。買い取り所に持って行ったんだけど、ドラウニーの油で25ユド、サラマンダーの肉で50ユドにもなったよー!」

「わんわん!」

「皮としっぽ、魔石は服飾店さんに相談してみようと思う。お金稼ぎとして第3層をグルグル周回したいんだけどいいかな? コボルトにサラマンダーはレアっぽいんだよね」


 というわけで魔石取りもかねて周回。どうもドラウニーは確定っぽいね。ゴブリンとオオカミがランダムで出て、一番奥が3つめのフロアなのは確定。ほぼほぼドラウニーマザー(仮称)がいる。

 単体なので〈ウェブ〉して後ろから心臓をざくっとやれば終了。お腹に卵を抱えてるので美味しい。

 5回ほど回したら服の匂いに朝陽が負けて近寄ってくれなくなったので帰還。

 服飾店へ行き、ぜーんぶ交換してそのまま商談開始。


「これは奇麗なサラマンダーの皮ですね、しかも大きい。倒すのに難儀したことでしょう」

「まあ、ぼちぼちでしたね。この皮を使ってマントを作るか、売りさばいてしまおうか考えているのですが」

「両取りでしょうね。大部分を使ってご自身の装備をお作りになって、ほかを売却する。まあここでは出来ることではありません。我が商会の首都本店に案内状を書いておきます。そこで再度相談されるとよいでしょう」


 首都かー。今徴用してないっけ。身動き取れなくなりそうだし、今のうちにある程度お金稼いでおこう。

 そいえば、エンチャントは一つに強くするか、複数に弱くするか自由がきくということなので、どうするか考えないと。


 数日後にあくー文明の遺産を動かすそうなのでまずはそれに参加。

 参加結果は十分よいのだけど、一度食鬼に防御魔法貫通されて牙で噛みつかれ、毒をもらってしまった。

 毒は聖女で治せたんだけど、うーん、やっぱりこの地域では防御力が足りない。

 賢者の防御魔法でもっと強いのを覚えるか、賢者のレベルを上げるか、防具を装備するか。


 全部をミックスしてやるべきかねえ……。とりたえず首都まで行ってきまーす。船に乗ってびゅーん。

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