第3話 みんなー! 大好きなダンジョンだよー!
「じゃあ、ダンジョン行こっか。今着ている服が汚れきってから新しい服と交換したいし」
というわけでダンジョンへ行くこととなった。魔石が手に入ればエンチャントしてもらうとき大幅に値引きされるだろうし。……魔物からも魔物の材料が手に入るし。ノゴアからは肉とゼラチンになる筋。ドラウニーからはその汚ったねえ油。食鬼からは脳みそと背中の筋。食鬼のは弓の弦に使うそうだ。うわーうれしいなーうれしいなー、はぁ。
奇麗な内装の冒険者ギルドへいってダンジョンへ行く旨を伝え、魔物から材料を取る道具を借りる。死んだら戻ってこないからデポジット制だ。5ユド払う。
「しかし大きいなあ……。これ魔法のバックパックがないと入らないですよね」
「もちろんそれもお貸ししておりますよ。こちらは高くて20ユドいたしますが」
「たか。自前のがあるので大丈夫です。魔法のバックパックの中身は別の不思議空間とつながっているんで汚れないんですよね。安心安心」
というわけでダンジョン町「エグエボム」へと向かう。衛星都市みたいなものなのでシンプルにダンジョンに必要なものだけがそろっているとのこと。
朝に出たので夕方には到着する。朝陽で歩いているからって一日かからないとは。結構遠い道のりだったと思う。賢者訓練のために地味に〈計測〉していたら歩行距離で80キリメルト強歩いていた。朝陽だからって地球での時速8キロメートルは出さない(こっちでの時速だと一時間が長ーいので訳わからなくなるから省略)。休憩も入れたし。本当に一日が長いねえ。
ちなみに道はレンガかな、石のなにかで舗装されてたよ。こんなちょっと移動するだけでもちゃんと舗装されているなんて、前国トンガランでは考えられなかったかなあ。文明レベルがちょっと違うのかもしれない。
さてダンジョン。入るたびにダンジョン構造が変わる、ゲームでいう……インスタンスダンジョン? 方式である。帰る道はちゃんとある。一つのパーティが入場したと判断されるのは3分間の間に同時に入ったもの。3分って短い感じもするけど、まあこっちの3分長いからね。インスタントラーメンはのびる、確実に。
そういうわけで順番待ちの列が出来ている。私たちも並ぼうか。朝陽ーゴールデンレトリバーになってー。
順番待ちの間に兵士がなにかをチェックしている。耳を澄ますと、どこのギルド所属や駐屯地などの出身地を聞いていたり、人数は、何層のダンジョンを攻略する予定なのか、そんなところを聞いていた。
「冒険者ギルド、人数は一人と一匹、ソロ攻略できる限度の第3層を攻略、おし、バッチリだ!」
全然バッチリじゃあなかった。
小屋に連行されて尋問を受け、なんかまた鑑定の機会みたいな奴に触れることに。
「あのー、私鑑定の神を呼び出さないとこういうの壊しちゃうんですけど」
「いいから黙って手を置きなさい」
しょうがないので機械に手を置く。なんかこう、手相判断とか血流を測定して血管年齢を測定するような機械だった。100円入れなきゃ。
手を置いても壊れなかったのでちょっと安心したら機械のスイッチをまだ入れていなかったらしく、。カチッという音とともに。
装置が壊れる寸前まで壊れた。
「なんだこりゃぁ!? どうなっている!?」
「た、多分測定しきれずに壊れたのかと!」
あーあ、言わんこっちゃない。私知ーらない。
とりあえず出たデータを読み取ると……。
聖女Lv50+
賢者Lv50+
勇者Lv23
という文字の後に所持スキルがずらーっと。へえ、勇者だけ一つへこんでるね。首都行って戦闘訓練受けてみるかなあ。
「とりあえずお前はダンジョンに入ってよし!」
お墨付きも頂いたのでダンジョンに入る。
ダンジョンの外見も入り口も内部もでっかい。ここは30階層まであるらしい、そこまで到達するとなると相当な人数と物資を持ち込まないとダメだろうね。だからこんなにデカいのかねー。
いろいろとみていると3分経ったらしく、部屋が閉じる。そして部屋の中央側面に00と照らされる数字、その下にダイヤル、右側に赤いボタン。ふーんなるほど。
「ダイアルで潜る階数をセットして、ボタンで決定っと!」
ゴゴゴゴゴ
大きな音がしたと思ったら、部屋に下に降る階段と、上に登る階段が出現した。上は入り口に戻るのかな。
大きく息を吐いて下へと降り立っていく。右手には翠乃沃土をバックラーにしたものを持ち、左手には花草水月。防御重視で行こう。
降り立ったそこはドラウニーの巣、とでも言えばよいところだった。
そこかしこにドラウニーがうろついており、ドラウニーの卵が固まって産み落ちてある。
「これはもう乱戦とどちゃくそ臭い衣服を覚悟するしかないね!!」
自己バフを掛けて突っ込む。バックラーでぶん殴り、花草水月で切り刻む。
私は回避重視なスタイルだけど、ゴブリン以上の相手で本物の乱戦、しかも朝陽の手伝いもない状況で、それを経験したことはない。ガンガン飛びかかられて、〈空間障壁〉ではじく。魔素の量は十分だ。
こちらの世界での必殺技とかないのかなと思いつつも、何も勉強していないので思いつくこともなにもできず、ただひたすらに花草水月を振り回す。ゴブリンならこれでなんとかなったが、ドラウニーだと避けてくるのでなかなか致命的なダメージを与えられない。
飛びかかる速度は私の方がはるかに速いので、無数の傷と引き換えに飛びかかり攻撃で一体一体処分していく。
「しかしあれだな、ダンジョンのモンスターは凶暴化している状態というか、自分に傷があってもそれを無視してこっちを殺しに来るんだな……」
最初、魔物とモンスターが別の意味で使われていることに困惑があった。モンスターの和訳って魔物だし。今痛感した、こいつらは魔物じゃない、モンスターだ。動物、植物、魔物、この3つの物の外に存在している。
「ふー、終わった」
「わん!」
「ありがと朝陽、朝陽がいつでも脱出の魔石を使用する準備を整えていてくれたからあんな数でも勇気を持って突撃できたよ」
「くーん」
「いや、もう臭いのはしょうがないて。とりあえず戦利品回収しよ?」
二人で戦利品を回収。ドラウニーの卵はとても貴重で高く買い取ってもらえるそうだ。ドラウニーからは油を……こ、こ、こし取る……どうやってかは恐ろしくていえない……そうやって油を回収して保存瓶に入れた。
「これで終わりかな。ふへぇ、戦利品確保の方が怖かった」
聖女の〈浄化〉をしてとりあえずの油は取り除き(匂いは消えない)、次のフロアへ。
次のフロアは……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます