第13話 閑話 とある聖女賢者勇者様の野営(という名のキャンプ)

 とある聖女賢者勇者様の1日


 北に抜け始めてから3日、やっと雪山を下り始めた。朝陽に乗って3日だもん、相当大きな山だったんだなー。自力では死んでたな……。


「さてと、そろそろ野営の準備かねえ」


 そういって朝陽から降り、野営の準備をする。

 不肖佐原、朝陽が来てから野営がすっかり好きになりました。ほとんどキャンプ気分。

 朝陽には石を集めてもらい、私は木を切り倒す。

 石を集めて即席の焚き火台にしたら〈乾燥〉で強制乾燥させた木材を、火の魔法〈イグニ〉で点火してたき火を起こす。

 木を切ったついでに丸太と丸太の間を木材で通して〈強力粘着ジェルネバネバ〉で接着させて作った木の腰掛けに座ってみんなでおしゃべりする。翠乃沃土以外はしゃべれるからね。


「もうそろでぬけれるんとおもうんだけどねー」

「雪殿と同意見だ。雪解けの香りが近づいてきている」

「俺はそこら辺わからねえが、今日も手入れ頼むぜー木を切り倒すのもそんな簡単じゃねえんだ」

「はいはい、翠乃沃土と一緒にお手入れしましょうね」


 といってもまずは飯。スキレットに適当にお肉とかを入れてスープにして飲む。今のバックパックの容量じゃ野菜を背負って行動できないので、もっと容量が多い奴が必要だな。お肉は今のところ朝陽に頼んでる。これも改善しないとな。石弓、かなあ。


 というわけで飯も食べたしツールのお手入れタイムが始まった。

 翠乃沃土は丁寧に魔素をつぎ込んでやればさほど問題ない。それを元に彼自身が変形して鋭い刃物や切れるハサミ、よく取れる爪楊枝になったりする。いや、爪楊枝重要だから。超重要だから。オッサンじゃないから。


 花草水月の場合はちょっと違う。魔素を込めるのは一緒なのだが、まず最初に魔素を込めずに石を切り刻んで刃こぼれをおこす。

 そしてその後魔素を注入してあげる。すると私の魔素で刃の再生成がおこり、刃こぼれが直りさらに鋭くなる、といった感じだ。仕上げに魔素を込めながら油布で磨きピカピカにするという部分では翠乃沃土と変わらないところではあるが。


 この2振りの手入れが終わったら普通の道具の手入れタイムだ。

 スパッツのこすれを〈修復〉で直したり、革製品にオイルぬったり。塗るのは賢者特製の「万能オイル」を塗る。

 ブラウスにプリーツミニスカートは擦れるというかほつれるので糸と紐を持って縫い直す。これは本当に普通の品だもんね。コーティングの魔法でも覚えていればよかったんだろうけど、学者とか洗濯屋の領分みたい。賢者でも覚えられるとは思うんだけどね。ただしリラライラックとスグリの香りをつけられるかというと、うーん、どうなんだろ。賢者でも錬金術は出来るから、合成は出来そうだけどね。


 夜も更けたので、を使って寝る。一人の頃じゃ襲撃に備えて毛布とマントだけで寝ていたもんだけど、朝陽と交代で寝れば寝袋で眠れる。やはり眠りの質が違うよ。


「ううーん、おはよう、朝陽、みんな」


 朝起きたらまずは朝陽にお水をあげる。〈水生成〉でね。これは生活魔法って奴なんだけど、普通の状態だと「使う魔素を補充するために補給する水の量」と「魔法から水が出る量」のレートが全然ダメで、飲み水には使えないのである。歯磨きとかするときのコップに水を満たすくらいにしか使えない。

 しかし私は特別である。レートが逆転している。使っても使っても消費の方が少ないのである。ちょっと水を飲めばすぐ戻る。がっはっは、我真の魔王ぞ!!


 まあそんなわけでたくさん水をくんで水を飲ませるのだ。もと神獣だけあって水で十分なんだって。わーお。たまにお肉食べたいそうだけど。

 バケツとかないからチョロチョロ飲んでもらうんだけどね。積載量どうにかしたいな……。


「ごくりごくりと。しっかりと飲めましたぞ」

「じゃあ行きますかー。次の土地へ!」

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