第9話 現地下見
さてどうやって向かうか。まず港町までは水路を使う。
完全に冬になると上流は凍ってしまい使えなくなるのでさっさと移動した。
港町から村までは例のごとくランニングで移動。負荷をあげればいくら走っても体力がつく。
そして村にたどり着く。今度は村の名前覚えておこう。「ヌンドゥ」だそうだ。出来ればここを拠点に出来るような所に奇麗な滝があるとよいのだが。
以前しくったミスは繰り返さない。風土の歴史とかは保存されていないので、酒を飲みながら話を聞いて回ることにした。
「へえ、ここは林業と狩猟で生計を」
「ああ、だからみんな力持ちなんだぜ! おら、見てみろ!」
「あーすごいすごい。それで、奇麗な滝とか記憶にないですか? あなたみたいなおっちゃんじゃ難しいかな」
酒の席だとパワハラ上司を思い出して気分がダウンするのだが、なんとか会話になってるんじゃないだろうか。相手の会話力に丸のりしているが。
滝の場所に関しては本当にしらみつぶしに聞くしかないと思っている。どこかで物知りの人がいるグループに出会うだろう。ちなみに村長とかは事前に聞いてダメだったことを確認してある。
「俺は木こりだが余りにも奥には行かねえからなあ。作業中に魔物が襲ってきちまうからな」
「そっか。マスター、この人にエールを!! 何か知ったら教えてね」
「木こりは村中央のここに来るが、狩猟野郎は革なめしもするから臭くてここには来れねえ、あいつらの酒場にも行ってみな!」
ありがとーと投げキッスとあいさつを返して、この酒場をあとにする。狩猟の人、狩人か。狩人の酒場ってどこにあるんだろう、奇麗に去るんじゃなくてそこまで聞いておけばよかった。失敗である。
ま、どこかに臭い香りがする地域があるのでそこに向かえばよかろう。
この日は寝て、翌日。
鼻にバフを掛けて匂いをたどる。ローグとかの職業が入っていればもっとスマートに嗅覚向上とかが出来て楽なんだろうけどなあ。転職できたら勇者と変更したい。魔王と戦うの怖いよー。
どうでもいいことを考えつつ匂いの元へと到着。革なめし工場である。製法が旧来のものみたいで工場が大きいなあ。この革をなめす液体が臭いのである。確かクロムなめしが来る前はタンニンなめしだったか。
生前はウィキ辞典を見て雑学を蓄えるのが密かな楽しみであった。懐かしいな。
「こんにちはー、どなたかいませんか?」
「はいはい、なんのようだい」
出てくれたのはこびとのお姉さん。ハーフリング系統だろうか。
「これこれこうでして」
「なるほどねえ。狩りをしている最中には何日も獲物を追い続けるときがある。水筒じゃあ水分を補給なんて仕切れないからそういう場所を知っているかもね。今は狩猟しているところだから、帰ってくるまで待っておくれ」
今は冬の手前、一番脂肪が乗っているときかな。美味しい獲物を仕留めてきますように。
10日ほどで狩猟集団が帰ってきた。話をしてみると複数知っているとのこと。
聖女の力が増すような所とお願いしてみたら、どれもそこまでは奇麗ではないようで。
結局自力か……。
「ま、水源をどんどん上流に追っていけばどっかにはあるさ。頑張りな、聖女様。冬の山は過酷だから絶対無理するなよ。可能なら俺たちに場所を示してくれるとうれしい。このパワーストーンで場所がわかるから」
そっか、上流に行けばいいのか。目からうろこだった。ウィキ辞典や賢者の能力、首都の図書館じゃわからないこともあるんだな。
パワーストーンを借りて川を遡上していく。準備と計画はしてある、あとは見つかれば大丈夫だ。
川を遡上していき、山に入って4日、大分上まで登ってきた。毛皮装備だけじゃ寒さに耐えられなくなってきたので賢者の〈保温〉と勇者の〈恒常性機能強化〉を同時併用して寒さをしのぐ。どちらも体温を一定に保つ機能で、体力や魔素の消費も今のところ問題ない。
雪が降る頃になって、ついに見つけた! 落ちる勢いが強く滝壺がある滝だ! すぐに準備に取りかかろう!!
まずは周辺の木を切り倒す。チェーンソーもないのにどうやってと思うが、花草水月に魔素を与えながら切ると、チェーンソーなんて目じゃないくらい簡単に木が切れる。余りにも切れるので、最初は切り込みを入れ忘れこちらに木が倒れてくることが何度かあった。
切り倒した木をカットして木材にしていく。賢者の〈乾燥〉魔法を使って一気に乾燥させ、使用できる状態にし、簡単な山小屋を建設するというわけだ。
なにも建築家や大工がないと家が建てられないわけではない。
この世界の職業は能力を飛躍的に向上させるけど、それがないと何も出来ないというわけではない。
事実神殿で音を立てないように歩く行為は、後半は結構楽に出来るようになっていた。まあこの上達の早さはぶっ壊れた成長率のおかげではあるが。
釘の代わりは〈
15日もかかったが、組み立て式ストーブが設置できて寝るところもある(枯れ草のベッドだが)、設備が誕生した。
次に滝壺の整備をする。普通だと滝の真下の滝壺は水の力で深くえぐれていて入ると足がつかない上に水流の関係で浮上できないので溺れて死んでしまう。だから周辺の地肌が出ている岩をカットし、滝壺に沈めていく。賢者の魔法が大活躍した。
滝に打たれるところまで平らな道が完成した。
これで滝に打たれる準備は出来た。長い道のりだった。
だがこれで終わったわけではない、ここからが真のスタートだ。
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