社畜女が転生したら、聖女と賢者と勇者を同時に持って生まれましたが世界は救いません。最強? いいえ、仕事量三倍です。もう酷使されたくない。逃げろ!
第3話 ゴブリンくらい弱いと戦闘描写はかなり省かれる。
第3話 ゴブリンくらい弱いと戦闘描写はかなり省かれる。
ゴブリン被害があった地域に赴き、〈探感知〉をかけて物体をスキャン。ゴブリンの集団を発見したのでゆっくりと近づいて目視。3匹だね。1匹に〈マジックボルト〉を放つ。
グギャッ
といって転げ回ったので追い打ちで3発連射。腕がちぎれたと思う。目視してるとはいえ、かなりの遠距離なので大雑把にしかわからん。
残り2匹は逃げだそうとしたので〈ウェブ〉を奴らの真下に放ちネバネバの糸で絡め取る。
そろそろ体内の魔導素粒子、魔素を使い果たしそうだ。自己バフをかけて2匹の元へかけていく。
「グギャギャ、ギャギャギャ!」
「ギャギャギャギャギャ!」
2匹は威嚇してくるが、動けないのではどうということはない。それぞれの背後に回って心臓を一突き。
「ふう、終わった。楽勝ではあったけど薄氷の上を歩いているのには変わらないなあ」
なんたって私はまだ15歳。
また、逃げている身なので1カ所にとどまれる期間も短いからちゃんとした防具を作れない。逃げ出して2年、未だに革の防具すら作っていない。着ているのはそこかしこがすり切れた布だ。
「まあでも、自由に生きられるのは本当に最高だよ」
下二人の兄弟は見限ってたし、セックス漬けになったお母様はもう死んでしまえばいいと思うけど……うーん。でも、でも、上の兄弟、ガスホお兄様、ニーアお姉様、ルークお兄様はちゃんとやれているのだろうか。私のせいでひどい仕打ちを受けていないだろうか。自由と引き換えに彼らに被害がでていたら私は……。
「逃げ出したお姫様ぁ? ああ、そういううわさがあんなあ。たしか――」
――お姫様候補の女性が逃げ出して、一家は離散、既に職に就いていた兄弟も職を追われてしまった。いまでもトンガラス王国はこのお姫様を探している。なぜなら素晴らしい聖女の力を持っているから――
――だそうだ。ま、酒場で飲んだくれているおっさんの言葉だが、この僻地まで「逃げ出したお姫様」という噂が広がっているのは間違いないようだ。
ここはトンガラス王国の北方。これより北は東西に雪山を抱え抜けられる道は一つ。その道も人の道ではなく獣の道を歩く。未開の雪原が広がっているわけだ。
どこにつながっていうと、国名は忘れたけど違う国に出る。この土地が緩衝地帯になっているので噂話も途切れているはず。脱出できれば「お姫様のゆき」から逃げ切れるな。
ただ……行きたいんだけどやはり家族が気になる。私が逃げたことでみんながひどい目に遭っていないだろうか。
確認してから行くべきか、すぐにでも向かうべきか。うーん。
悩みながらゴブリン退治を続け結論を出す。
戻って家族のことを見てみよう。やはりお母様達のことをほおっておくわけにはいかない。
ニーアお姉様はあの優しい心をつけ込まれていないだろうか。強い気持ちを持ったお姉様だったけれども。
ルークお兄様は無事に仕官できたのであろうか。破談してないといいのだけど。
ガスホお兄様は、ほとんど覚えていないけれど元気なのだろうか。
マーゲスとシルビは……まあいいか。
お母様のセックス漬けは治っているのであろうか。
帰るにさしあたって、一足靴を買い足すのと服を見繕っておこう。今の服装は余りにも貧相で人混みになじめないから。靴は履きつぶしちゃうかもしれないから。
「うーん、どうにも身長、胸、腰が突っかかるなあ……」
そうなのである。もう遙か昔に二次成長は始まっていて今まさに女性の体になろうという変化を起こしているのである。
私はお母様がハーフジャイアント族だからか全体的に大きい。身長も結構伸びると思う。
そして聖女持ちの体である。聖女は聖母でもあり、子宝の象徴でもあるからそういう所が大きくなってしまうのかもしれない。
まあそういうわけで体が入る服を買っただけという感じになった。
フリル付きの厚手の半袖ブラウスに膝上のミニプリーツスカート。上が白で下が淡い青のセット。
ブラウスにプリーツとか、どこの高校に通うんだ私は。大きいせいで丈が無いし。ギャルかー? 35歳佐原雪、ギャルやっちゃうかー?
お腹冷え対策兼パンツ隠しに黒い麻のスパッツも購入した。スパッツは既製品がないので時間がかかった。
下は完全に無防備である。ニーハイブーツなぞこんなへんぴな村にあるはずもない。地球ならタイツの出番であるが、ここだとタイツは上流階級のお着物というか。 いや、中流でも使っているけど、なかなかお目にかかれるものではない、あたりか。品質はもちろん所属階級による。
靴はくるぶしちょっと上までを覆うミドルカットの革靴。革で手入れ大変だけどしょうがない。くるぶしの自由がかなり効きつつ歩行などのサポートもしてくれる、冒険者だとこれしかないんじゃないかと思う。先述のニーハイブーツとかは別だけど……。
うん、15歳の元気はつらつな衣装になったんじゃないかな。全体的に寒いけど。デカいはたまに困るな。生前は平均的だったしなあ。
これに聖女賢者勇者の職業効果で顔が変わってくると書物にはあるので、史上初3連相乗効果でどこまで奇麗になるのか。
透き通った青い目に綺麗な赤い髪の毛。つるんとしてる、雪のように白い肌。これだけで今でも十分奇麗なのに。
ま、奇麗になる分には一向に困らない!
武器をどうしよっかなーって思ったんだけど、サーベルとバックラーが私と相性がよいので変更なし。サーベルがぼろっちいので交換したいし、可能なら両手持ちできるようにしたいかなー。両手持ちのサーベルって刀か? でも片手持ちできないしなあ刀。生前持ったことがあるけど重かったなー。サーベルは比べると軽いよ。
準備を整えているから強く思うんだけど、スイスのツールナイフやアメリカのマルチツール、あの類いめっちゃ欲しいね。戦闘に使うわけじゃないけど工具を使う仕事ってめっちゃ多いし、ハサミあると便利だし、動物の解体にはナイフ欲しいし。戦闘中にささくれで指が痛いと、手袋の中でささくれが暴れに暴れて、地獄の中戦闘することになるから爪のメンテとかもしておかないとね。鉄線や缶詰は存在するしね。この手のツールぜーんぶ一つにまとめて携帯しておきたい。
あれだけ高精度な工具類、この世界には存在してないだろうなあ。
超古代文明あくーの遺産ならわかるけど。アトランティスやムー大陸以外に超古代文明が「実在している」のって生まれて初めて。わーお。
よし、準備できた。帰ろう!
というわけで港町「ギヨン」までランニング。
くあー疲れたー!
かなりの無茶だったんだけど、無茶をしただけ体力は増加してくれて。
鑑定の神が言っていた、とんでもねえ成長率な体なのは本当なのである。
でも原始の魔力が上がった感じは一度もない。これはなんなんだろう?
ここから先は国際河川である大河「ヨン」を下って首都まで行く。ちなみに首都の名前は「パルチランカ」である。13歳まで首都にいたけど首都の名前知らなかった。逃げ出してから初めて知ったんだよねえ。あのころも社畜だったんだなあ。まあ、能動的社畜だったけどね、そういう慣用句があるかしらんけど。
船はどんぶらこどんぶらこと川を下っていき――
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