第2話 機械と労働は爆発する。
「こ、こわしちゃ……」
涙目になる私。
「あ、あーんあーんこわしちゃったー!」
泣きじゃくる私。35歳とは思えない知性である。
「いや、これはのう、機械が職業・スキル
お母様は家でやることがあるのでここで帰宅。3歳の私だけが馬車に乗って隣の街まで向かうことに。
「ああーん、ひとりはこわいよー、おかあさまー」
泣きじゃくるもあやせる人間はここにはおらず。目を真っ赤にして街の神殿に到着したのであった。35歳の知性どこいった。
ドカーン
壊れた。
「わたしがいけないんですーいけないこなんですー! ああーんああーん」
止めどなく出る涙を美味しい料理で留めさせ、次の都市へ。
ドカーン
「もうやだー!」
「次までの辛抱ですぞ、次は王都の診断機、壊れはすまい!」
筋肉ムッキムキの神官になだめられるも、その筋肉が怖えよ!!
あんあん泣きながら王都へ。この国はトンガラス王国というらしい。
ドカーン
「もうだめですー! わたしはあくまなんですー!」
「最後の手段がある。皆のもの、儀式の準備だ!」
王都の神官(イケメン)が号令を出しぐるんぐるんに縛られた私を中心に魔法陣? を描き上げる。
「エイサムエッサエイサムエッサ……鑑定の神よこのものの職業とスキルを明かしたまえ!!」
ぼわーん、という擬音が似合いそうな感じでオリエンタル(地球比)な神様があわられると。
「ふーむ。このものは賢者と聖女と……勇者の職業やスキルを持ってるわねぇ。ついでにこの子は原始の魔力も持ってるわぁ。親はスキルや血筋を持っていなさそうだけどぉ、隔世遺伝でもしたのかねぇ? ステータスは三歳児だけど成長率はSSS+++++くらいあるんじゃないかしら?」
といって消えていくオリエンタル男子こと鑑定の神。
「そ、そ、そんな素晴らしいこどもが我が国に……」
「ワシの妃として迎えよう、異存はあるまいな?」
「こ、国王、いつの間にいらっしゃったんですか! しかしこれは鑑定の結果なだけであり実際に花開くかどうかは……」
「その時は殺すだけよ。我が家臣以外に素質がある子は皆殺しじゃ」
「ふごー!ふごー!」
ちょっと待てや! 私の気持ちはどうなってるの!?
政治や戦争の道具にはされたくない!
まずは時間を稼がないと。どうすればいい?
「もごもごっ、ぷはー。あの、あたしゅさんしゃいでしゅので、おべんきょうしたいでしゅ」
「そうかそうか。それもそうだな。ワシの妃になるものに教養がないのでは夜も楽しめないしながははは」
ぜってーこいつのきさきにはなんねー。はげデブ眼鏡と三拍子そろってるし。生理的嫌悪。
ま、とりあえず首都で教育を受けることになったのでした。
「はいゆきちゃーん、いちたすいちはなんですかー」
「にでーす」
なんてことやってる場合じゃねえええええええ!!
とにかく学を身につけて体を鍛練しここから逃げ出さないと!
急がば回れ、勉学に修行じゃああああああああ!!
――――――――
そして13歳になった。私は奇麗な少女へと変貌していた。
聖女の役割は十分に果たし、地域を浄化したり負傷者の回復などをおこなっている。
自由意志で外へは出られない。監禁は続いているということだ。
「今日の聖女の役目は終わり、と。お次どうぞ」
「失礼します。本日の賢者の作業です。計算が主ですのですぐかと」
どさっと紙の束が置かれる。
「この紙束を全て今日やらないといけないのですか?」
「はい、3時間程度でおこなってください。勇者として討伐にいく任務がございますので」
「はぁ……わかりました」
佐原雪13歳。生まれ変わっても激務に追われる。社畜再び。
しかし私の稼ぎでお母様や兄弟達が暮らせているというので逃げ出すわけにも……。
賢者の仕事は終え、勇者の任務をおこなう。そこら辺の兵士でも出来るようなゴブリン退治だ。
任務はすぐに終え、城へと帰る、前に近くに我が家があるので寄ることにする。お母様達お元気かな。
私の目の前に映ったのはボロい家ではなく豪邸であった。ああ、ちゃんとお金使われてるんだな。
中へ入る。マーゲスお兄様ににシルビお姉様はまだここで暮らしているという話だ。お母様を支えているのだろう。
「今月の支援金これだけかよー。もっと稼げよなゆきは」
「マーゲイ、十分な金額ではあるわ。十分なだけで満足ではないけど。ゆきは使えない子ね」
えっ。
そんな声が奥の方から漏れ聞こえてきた。
私は勇者であり賢者であり聖女だから身体能力がブーストされている。些細な音でも耳に入ってしまうのだ。
「二人は十分かもしれないけどぉ、わたしはぜんぜんだめぇ。オカカ様に貢ぐお金がないじゃなーい。貢げないと私を貫いてくれないわぁ」
えっえっ、お母様?
急いで三人がいる部屋へと突入する! どういうことなんですか!?
「なんか変な話してますよね三人とも! 私の稼ぎをちゃんと使っているんですよね!?」
「びっくりしたぁ! ゆきか。おまえさーもっと働けないの? 今月の支援金ぜんぜんなんだけど」
「そうそう。もっと働いてくれないと私たち飢え死んじゃう」
「オカカ様、オカカ様の全てをいただけるお金が欲しいわ」
…
…
ふ
ざ
け
ん
な
!!
「私はあなたたちが堕落するためにしゃにむに働いてきたわけじゃないんですよ!! 本当ふざけんなー! 私の人生なんだと思ってるんだ!」
これは社畜行為だ。間違いない。自分への利回りがない労働、これは社畜でしかない。未来がないのだ、だってあのブタと結婚する手はずになってるんだし。
逃げよう。
何事もなかったように帰って、翌日。
私の部屋の、門番の人に話しかける。
「こんにちは門番さん、通して貰って良いですか」ぽわわわわーん
「え、あ、はい、どうぞお通りください」
魅了のスキルを使って堂々と監禁の中を脱出し、夢にまで見た冒険者ギルドへと足を踏み入れる。わーゲームの存在だよー。内部は首都らしく奇麗になっており、しみったれたおじさんが端っこでエールを仰いでいるというような雰囲気はなかった。
受付に行って登録を済ませよう。
「こんにちは。ギルドへ登録したいのですけれど」ぽわわわわーん
「は、はい、こちらに記入してください」
名前は「佐原雪(さはらゆき)(読み仮名は現地語で書いてある)」で登録。35年も佐原雪をやっているので、生まれ変わりましたはい名前も変わりますという心理にはなれなかった。佐原雪の部分は日本語で書いたのでこれ以降不思議な異国の冒険者としか見られない。かなり異端な冒険者だけど私とはバレないと思う。字が書けない人読めない人五万といるしね。かっこよい記号で登録する人もいるみたい。
ギルド員は仲良くすること、ギルド割引があること、モンスターの大規模侵略が起こった際には無償の奉仕をすること等の規約を読んで署名。
ここに晴れて冒険者「佐原雪」が誕生したのであった。
「――で、2年かけて国の端まで逃げてきたって訳よ。聖女の役目だけで潰れそうなくらい仕事量があるのに、それに加えて賢者と勇者の仕事しろってかなりブラックよね。しかも原始の魔力まで持ってるの。首都にいても政争の具にされるだけよね。」
「っかーじょーちゃん苦労してんなー。エールおごってやるよ。マスター、エールをじょーちゃんに!」
そして今は場末の酒場で飲んだくれてるってわけ。誰も私の話を信用しないのが逆に気分がいい。
もうすぐ思春期を迎えるこの体。35歳で死んでから二度目の思春期を迎えることになる。どういう青春を送るのかしらね。いい男、見つかるといいなあ。あ、社畜はもうご勘弁。
とりあえず日銭稼ぎにゴブリン退治してこよーっと。
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