第四十七話 対面
(来ますね、どうします?)
側近二人の闘気が上がったのを察し、小天狗が白露に聞いた。
(一番大きな気の奴は、まだ動かぬつもりのようじゃ!任せて良いか?)
(かしこまりっ!)
そう言うと、小天狗は初めて両手に木刀を持ち、白露の前に出ると、両手を広げて構えた。
それとほぼ同時に、側近の鱗王兵二人が茂みから姿を現した。
二人とも緑っぽい肌の色をしており、外見的な特徴が似ているので、同じ種なのであろう。
手前にいる少し濃い色の方の鱗王兵には、額に大きな傷があって、小天狗同様に両手に剣を持っていた。
もう一方の鱗王兵は剣ではなく、五十センチほどの柄の先に、鎖で繋いだトゲの付いた鉄の塊が付いた、鈍器を両手で握っている。
小天狗は木刀に気を纏わせると、敢えて飛び込むのを控え、相手の攻撃を受けてみることにした。
まず手前の二刀流が、自分の間合いに入ったとみるや、右の剣を振りかぶりながら飛び込んで来ると、振り下ろす勢いで身体を回転させて、回りながら斬りかかってきた。
回転は速く矢継ぎ早に剣は襲って来たが、回っていることで攻撃としては単調で、小天狗は左手の木刀一本でしのぎ、右手の木刀で相手の軸足の膝関節を打ち据えた。
二刀流はバランスを崩し、もう一方の足で踏ん張ろうとしたが、回転していた影響で、再び打ち据えられた足をついたため、ブチンと大きな音がして倒れ込んだ。
(靭帯やったな…)
膝を押さえて痛がってる二刀流を横目に、小天狗は鈍器の鱗王兵の攻撃に備えた。
鈍器の鱗王兵は、振りかぶることなく低い位置で武器を構え、半ば鉄球を引きずりながら、小天狗に向かって走ってくると、すくい上げるように鉄球を打ち込んできたので、小天狗は下がりながら、木刀で鉄球をいなして避けた。
鱗王兵は鉄球の勢いを使い飛び上がると、身体を半回転させ、鉄球の勢いを殺さずに、小天狗目掛けて今度は打ち下ろした。
(へぇ、こいつの方が、武器と身体の使い方が上手いな!)
鎖で繋がった鉄球を、鎖の部分で受け止めても、その勢いは止められない。
小天狗は一瞬の判断と気の操作で、二本の木刀の間に気の幕を張って、鉄球をを受け止めて勢いを殺した後、気の幕を引っ張るように木刀を広げ、鉄球を相手に向けて弾き飛ばした。
いきなり自分の方に弾き返ってきた、鉄球をよけることも出来ず、もろに顔面に受け背中から落ち、気を失った。
顔面に鉄球を受けた鱗王兵が離した武器は、もう一人の鱗王兵の傷めた膝に落ち、再びのたうつことになった。
その姿を見た小天狗は、この不運な鱗王兵を哀れに思い、肩口に木刀を打ち込んで気を失わせた。
(其方の戦いぶりは初めて見たが、見事なものじゃな!)
そう白露に褒められ、
(嬉しいな!師匠はあんまり褒めてくれないんですよ)
と、小天狗は振り返って、屈託のない笑顔を見せた。
(でも真剣勝負は、こっち来て初めてしたんですけどね)
側近の二人が、あっさり人間に倒されたのを見たバレ将軍は、
「そりゃ、誰もいねぇわけだ…」
そう吐き捨てると、白露と小天狗のいる方に、ゆっくりと歩き出した。
茂みから姿を現した、今までの兵士達よりふたまわりは大きな、バレ将軍の姿を見た小天狗は、
「うわっ、ワニじゃん‼︎さすがラスボス!」
思わず声に出して叫んでしまった。
(ラスボス?何じゃそれは?)
(はは…最後に出てくる一番強い総大将の、あっちの世界での呼び方です)
(なるほど、確かに強そうな呼び方じゃな)
爬虫類が苦手な小天狗であるが、ワニに関しては生理的な気持ち悪さはなかった。
しかし、見た目の怖さと、幼い頃から刷り込まれた、ワニの強そうな印象は拭えず、こっちの世界に来て初めての緊張感が走った。
(小天狗、其方は下がっておれ)
小天狗の緊張を感じ取ったのか、そう言って白露は前に出た。
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