第111話 新たな職と蹂躙の傭兵団



 さて、新しい朝が来た……荒野で過ごした一夜だったけど、結局は襲って来るモンスターは皆無で。充分に身体は休まったし、夢世界でパワーアップも出来た。

 そんな俺の新たな職業だが、何と『魔法剣士』である。


 いや、そんなに驚いたかって選択では決してないな。スタンダードな職だし、恩恵も割と微妙だし。その効果は、『《~魔法》《剣術》のセットコスト‐1』に『《~魔法》《剣術》の成長コスト‐1』である。

 セットコストに関しては本当に微妙だが、成長コスト減は有り難い。‐1されるだけでも、レベル10に上げる頃には随分と違って来る計算だし。


 そんな訳で、魔法スキルと剣術スキルの成長を見込んでの職業選択となったのだが。お陰でレベルは随分下がって、今は余剰経験値で何とかレベル3と言う有り様である。

 そのほか、HPやMPも職変更で少しだけ成長してくれた。後はどんどんレベルアップして行くだけ、まぁ元のレベルに追いつくのに数週間かな?

 こちらは夢世界で経験値稼ぎも出来るし、そこは有利ではある。



 皆轟春樹:Lv3   職業:召喚士/魔法剣士    HP:410(456)

======------------------------            MP:465(552)

物理攻撃:472(318)    物理防御:402(262)

魔法攻撃:358(247)    魔法防御:312(209)


スキル【36(+7)】《罠造Lv5》《日常辞典Lv5》《空間収納(中) Lv4》《氷魔法Lv4》《耐性上昇Lv6》《木霊術Lv5》《魔力操作Lv3》《平常心Lv3》《投擲Lv4》《剣術Lv4》《観察Lv4》《光魔法Lv5》

予備スキル:《鍵開け》《夢幻泡影Lv4》《餌付けLv5》《追跡》《潜行》《糸紡ぎLv3》《剛力Lv3》《波動術Lv2》《借技Lv2》《人形使役Lv3》《時空Box(極小)Lv4》《購運Lv2》《魂魄術Lv4》《オーラ纏いLv2》《硬化Lv2》《召喚魔法Lv5》《等価交換Lv3》《エナジー補給Lv5》《高利貸Lv4》

獲得CP【44,823】   獲得SP【42/12】   JP【2,168,530】 


『称号』:《安寧》《天真爛漫》《飛竜乗雲》《脱獄囚》

状態異常:呪い《衰弱》《悪夢》《陽嫌》

装備:銀の槍、手作りフレイル、手斧、耐毒の指輪《耐毒》、才能の指輪《スロット枠+2》、木綿のポーチ《収納倍加》、革のベルト、ヒドラ牙の短槍、緋色のマント《敏捷up》、緋金の短槍、魔回復の革帽子《感知・MP回復》、メビウスの腕輪《スロット枠+5》、金剛剣、蜘蛛糸のマフラー《空気浄化》

使役:狂乱綿熊、殺人形、隠密鼬、甲殻蛙、炎聖鳥、粘液雫


持ち物:ポーション×8、ポーション(大)×2、マナポ×5、マナポ(大)×2、エーテル×2、架空スマホ、灰狼神の木札、竜の宝、大樹の樹液、マミーの心臓、魔術師の家具一式、魔石(小)×5、魔石(中)×2、魔石(大)×2、毒消し薬×6、万能薬×3、リセット薬×3、鍵開けの札×6、勇者討伐の証、白い仮面、マネキンパーツ(右足、左足) 、帰還の札×2、スキル書《触覚感知》《簡易封印》《盾術》、マナ鉱石の大塊、鉄鉱石の大塊、地結晶石の小塊、ミスリル鉱石少々、銀鉱石少々、ヒドラの牙×3、勇猛の盾《HP回復》




 『転職の書』を使った結果、ステータスは上がったがスキルについては何の変化も起きなかった。ただしスロット枠も+2されたし、強化は順調だと思いたい。

 レベルについては3と下がってしまったが、その辺は別に構わない。何しろ、繰り返すがステータスはレベル35相当なのだ。逆にレベルは上がりやすくなるし、それでスキルPも入って来るなら言う事無しだ。


 アイテムについては、テンペストが塔を造ってくれると言うので色々と融通した。コアと魔石(大中小)のセットはもちろん、他にもモンスター討伐のドロップ品も。

 『太古の毛玉』『ミイラの右腕』『マンモスの牙』やら、久々のCP購買からの『キメラの書』を塔の素材として差し出して。用途不明のアイテムが多数だが、案外こんな使い道で合っているのかも知れない。

 早く新しい塔が見たくてたまらない、さっさと夜にならないかな?


「おはようハルキ、今日の朝飯は何だい? 今日辺り、そろそろ下層へのルート発見か、俺の部族仲間に巡り合いたい所だな。

 下層にある交易所に辿り着けたら、言う事無いんだけどな」

「昨日は立て続けに広い領域に出たせいで、通り抜けるのに苦労したからなぁ……。今日は運が向くと良いけど、まぁ特に期待はしないでおくよ。

 取り敢えず下層を目指すのは、俺も賛成だよ」


 考え込んでたら、マホロバも起きて来たようだ。遠慮が無いのはいつもの事で、俺に朝食の支度を強請ねだって来る。俺は適当に返事をして、朝の支度に取り掛かる。

 キャンプ地に指定したのは大きな岩の影で、架空スマホのマップによると次のワープゲートまであと少しの場所だ。次の領域で、運が向いて来ると良いけど。


 そんな事を思いつつ、2人して朝食を食べ終えてキャンプ地を後にする俺たち。今日も従者に出すのはジェームズとキャシーのみの布陣である。

 サユリさんは空間収納でお留守番、戦闘などいざと言う時に呼び寄せる方針で。他の召喚獣も同じく、そう言えば新入りはまた昨日も性能チェックが出来なかったな。

 いや、何となくは把握してるんだけどね。


 《召喚魔法》と言うのは、レベルが上がって行くほどに強い召喚獣を呼び寄せる事が可能である。そう言う意味では、レベル5で召喚したあの赤い大鳥は相当な強さの筈。

 静香からタダで貰ったスキルが、今や俺のメインスキルと言う不思議な巡り合わせ。そう言えば、静香や玖子は元気かな……皆で無事に、安全な場所に辿り着けてれば良いけど。


 俺が心配しても、仕方がないってのもあるけど。取り敢えずは、何とか追いつきたい所ではあるな。こっちもようやく、自由の身になれた事だし。

 とにかく移動だ、ぼんやりと照っている朝日を眺めつつ昨日と同じく歩き始める。移動用の召喚獣とかも欲しいな、あれば便利に違いないだろう。


 そして辿り着いた、今日最初のワープゲートである。そして何度これに対面しても、この先の景色と言うか雰囲気は感じ取れないと言う不甲斐なさ。

 以前に何度か、その手法を教授されたと言うのに全く身についてはいないようでションボリしてしまうけど。マホロバは違ったようで、1つのワープゲートを自信満々に選択して。

 そこを一緒に潜ってみたら、どうやら奴的には当たりだったらしい。


「やったな、ハル……ようやくの下層だ、早速だけど狼煙のろしをあげよう! 後は向こうに見付けて貰えれば、交易所だか集落の1つに案内して貰えるぜ。

 ようやく運が向いて来たな、これで遭難騒ぎともおさらばだよ」

「それは良かったな、それじゃあ俺はどうしよう……集落があれば、そっちへと向かいたいんだけどな。俺ら異界の探索者は、どうも下層とは相性が悪いらしいから。

 あまり長く居続けると、支障をきたす恐れもあるし」


 これは恐らく、勝手に既定のルートを外れて欲しくない、“白の陣営”の仕組んだナニかの妨害手段なのだろうと思う。下層には護衛クエでも訪れた事があったけど、呪いに似た症状で身体が重くなったりして。

 まぁ、そんな備えが無ければ、向こうも俺たちを自由にはしないだろう。異界から招き寄せた大切な時期戦力なのだ、従うかどうかは別として。


 とは言え、近場に集落があれば寄って買い物や情報収集をする時間くらいは取りたい。その程度の時間は、身体のダルさは我慢出来る……ってか、俺は元の呪いで耐性が出来ている。

 ところがマホロバは、この後も一緒に行動する気満々で。お迎えにお礼をさせるから、もう少し時間を取ってくれと強引に巻き込む所存らしい。

 いや別に、お礼が目的で助けた訳でも無いし。


 じゃあ何故と尋ねられても、その場の成り行きとしか答えられないのだけれど。こちらの世界の、一定の部族に肩入れする気は毛頭ないってのが俺の本音ではある。

 確かに他の部族にも、話せば気の良い連中がいるのは体感して分かったとは言え。深入りすると、また別の面倒が各所から湧き出るのも想像出来てしまうので。

 そう口にするも、向こうも命を助けられた礼くらいはしたいと頑固な口調。


「礼くらいはさせてくれよ、これでも俺は族長の跡取りなんだぜ? 命は安くは無いし、礼節もわきまえてる……命の恩人を無碍むげにしたら、部族の恥になっちまうよ」

「いや、そんな大事にしないでくれ、マホロバ……とにかく俺は穏便に生きたいし、あの監獄空間から脱出が出来ただけで御の字なんだ。

 これ以上の褒美はいらないし、こっちの部族と関わるのも御免だよ」


 何しろこちらは、無理やりにとは言え敵の多い“白の陣営”に組み込まれているのだ。下手にこちらの因果関係に関わって、ややこしい事態に陥りたくはない。

 そんな俺の懸念に関係なく、ジェームズのおこした焚火は段々と盛大になって行き。それにマホロバが、髪の毛をひと房ほど切り取って投じると。


 何と煙の色が、派手なオレンジ色へと変化して行って。面白いなぁと感心して見ていたら、火の番をしていたマホロバが不意に顔を上げて地平線の一方を眺め始めた。

 まさかと思って俺も同じ方向を見てみるが、どうやら騎兵団のお出ましらしい。狼煙のろしの甲斐はあったようだ、まさかこんな素早い対応とは思わなかったけど。

 その数十騎に及ぶ影ば、あっという間に大きくなって来て。


 俺がその場を去るいとまも与えずに、とうとう顔が判別出来る距離となってしまった。数十に及ぶ騎兵団は、何と言うか独特の迫力があって気圧される思い。

 兵団の先頭の人物も、相当なアクがあって強そうな騎士っぽい風貌だ。その後ろに控える、赤毛で長身の優男と束の間視線が絡み合って。


 俺の本能が、途端にこの集団はヤバいぞと警鐘けいしょうを鳴らし始める。逆にマホロバは助かったと、明らかに浮かれた様子でリーダーらしき強面こわもての男と話を始めている。

 騎兵団の半数は、馬から降りて周囲の警護に当たり始めていた。何と言うか、かなり野蛮そうではあるが、統率の取れた集団には違いないようだ。

 俺にとっては、どちらも厄介な情報には違いないが。


「ドルバンが来てくれたのか、助かったよ……部族を裏切った連中はここにいるハルが皆殺しにしてくれたよ。ここまで送って来てくれた彼には、是非ともお礼をしなきゃ!

 それより凄い集団だねっ、そこまでしてくれなくて良かったのに」

「族長からの直の指令ですからな、他にも4つの騎兵団が捜索に当たっております。それにしても……このどこの陣営とも分からぬ小僧が、若様を助けたと?

 信頼のおける者なのですかな、本当に」

「い、いや……彼も本当は“白の陣営”に属してた、異界からの探索者だったらしいんだけど。裏切りが発覚して、ある領域に閉じ込められていてね。

 そこに俺をさらった連中が、間抜けにも迷い込んだって訳さ」


 胡散臭いなと言う視線が、馬上から一斉に俺へと向けられる。いきなり切り殺される事は無いだろうが、連中の本質は恐らく容赦の無い略奪者だ。

 敵に情けを掛けるとか、そもそも冷血な血しかその身に流れていないと思われる。さっさとマホロバを置いて逃げ出すんだったなと、後悔はもう既に遅い感じ。


 さり気なく、騎兵団の連中がこちらの行く手を塞ぎに掛かっているのを感じつつ。マホロバに対しては、この空気を何とかしろとの必死の目配せ。

 ジェームズは、念の為に《空間収納(中) 》へと隠しておこう……下手に挑発して、連中の不興を買っても面白くないし。何しろ数が違う、ざっと数えて50人以上の集団だ。

 しかも全員が騎馬持ちで、走って逃げる事は不可能。


「なるほど、“白の陣営”の裏切者ですか……あそこの陣営は新参者の癖に、一枚岩にもなれない哀れな軟弱集団ですねぇ。

 ウチとも何の交流も無し、目障りなハエ程度の認識の陣営ですね」

「言い過ぎだぞ、ザイレス……だがまぁ、確かに若様の拉致には何の関わりも無さそうですな。反対に、始末しても何の憂いも無い存在でもある訳だが」

「おっ、おい……言っただろ、ハルにはここまで世話になったって。こっちから、お礼がしたいからわざわざ残って貰ったんだよ」


 若様のマホロバの言葉に、戻って来たのは酷薄な2対の冷たい視線のみ。隊長のドルバンと、恐らく副長の立場のザイレスには、奴の受けた恩などはさほどの価値も無い様子。

 そもそも、若様と呼ぶ言葉にも特に尊敬の念など微塵も感じないし。ケツの青い若造くらいにしか、マホロバの事を評価していないのはアリアリだったり。


 或いは、俺の憮然とした態度も向こうのしゃくさわったのかも知れない。くびるぞこの野郎って視線が、さっきから赤毛の優男から発せられており。

 まずは馬から降りろやって視線を返してたのが、相手にバレてたのかも。睨み合いは暫し続き、背後に人の気配を感じた際には時既に遅かった。

 強烈な打撃を後頭部に喰らったと思った瞬間、意識はブラックアウト。





 ――不意打ちを浴びたと気付いた時には、俺は拉致らちられていた。








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