Episode3:二度目の
教室で一人うずくまる。
あんなの、一人で抱えられるほど簡単なことじゃない。黙ってる代わりに貞操を差し出せなんて…交換条件の割に合わないじゃないか。
どう考えても俺へのダメージがエグい。
何考えてるんだ、あの人は。
高校に入ったら可愛い女の子と恋してウフフな展開を期待してたけど、そんなの俺には無縁だったことに気づいた瞬間には初恋どころかチャンスはやってこなかった。
それも全部、あの生徒会連中のせいだ。
良いなって思ったあの子は皆生徒会に執心してたし。
はぁ…なんで、俺なんだ。
ケータイには不本意にもアイツの名前が入っている。いっそ、無かったことにして消してやろうか。
いや、そんなことをしたら後にもっと恐ろしいことが待ってるかもしれない。
あいつ、可愛い見た目してマジで怖いんだよな。殴るとか言ってたし。
そういう快楽主義者とか…?
その時、ポケットに入れていたスマホが「ピコン」と通知音を鳴らした。
誰だ?
トークを開いて少し後悔する。秋山だったからだ。見なかったことにして閉じようとしたけど、怖いもの見たさで既読が付かない方法で中身を確認する。
画像が送られてきていた。それだけ。
文字は無かった。
ん?なにこれ、猫の写真?
俺は気になってつい、トークを開けてその画像をマジマジと見つめる。
あの人いま何やってるんだ?猫撮ってんの?
そう思うと少し和んでしまう。
既読が付いたのをいいことに立て続けにトークが送られてきた。
それらもすべて写真だった。
色んな角度から撮った猫。この猫って、たしか校内に住み着いたデブ猫だよな…。
俺はたまらず自分から『何やってるんだ』と送ってしまった。
すぐに返信が来て、ドキッとする。
『初めて懐いてくれたんだ♡』とあり、空いた口が塞がらない。秋山って…普段からこんな感じなのか。まさか、俺にまでこんな絵文字の可愛いのを送ってくるとは。
なんか、変なの…こんなん普通の会話じゃん。
『猫好きなのか』
『まぁね』
『ふーん 俺も好き』
と送ってから冷静になる。つい、会話を続けてしまったが、気を緩ませてから懐柔される流れに決まってる。
幸い、あれから返信は来ないので安堵した。
本屋に寄ってから帰ろうと決めた。
店内に入ると落ち着いた空気に癒される。
新刊コーナーを物色し、漫画を取るとそのまま会計する。
新しいBLゲット!姉ちゃんも好きだといいけど。
ふと、その漫画の帯に目がいく。
《イジワルな彼の意外な一面に好きにならないわけがない!》
イジワルな…意地悪…いやいや、秋山のこと考えてたわけじゃ。
「学くん、だよね」
ビクッと肩を揺らし驚く。まさかこんなところで誰かに会うなんて。
振り返って、さらに驚いて落胆する。
「な、なんで…ここに」
「気づいてなかったの?僕もここにいたんだよ。後から学くん入ってきたのに気づいて何買うのか僕、後ろから付けてたのに」
うしろを、つけていた、だと!?
それじゃ、俺がBL漫画買ったのめちゃくちゃ知ってんじゃねぇの!?
俺の趣味を知られてるとは言え、知ってる人に見られるというのはどうも恥ずかしい。
「えと…俺はこれで…早く帰らなくちゃ…」
立ち去ろうとしたが、掴まれた腕がそうはさせてくれなかった。
「待ってよ。せっかく会えたんだから。いきなり帰るなんて野暮なことしないよね?」
こんなの脅しだろ…。
俺が無言でいると肯定と捉え、腕を引かれながら子供一人いない閑散とした公園に連れてこられベンチに2人で腰かけた。
…何でここ?
「ね、さっき買ったの見せてよ」
俺はしぶしぶレジ袋ごと渡す。受け取った秋山が中身を見るなりニヤニヤしだした。
「ふーん…ね、これ試してもいい?」
と、ページを開いた漫画を見せてきた。
それを見た俺は絶句するしかなかった。それを試したら俺は、俺のケツは…。
……終わる!!!
BL展開なんて望んでなかったのに 蒼井和希/あおい和希 @tobiokise
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。BL展開なんて望んでなかったのにの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます