第12話
「……横になっててよかったのに」
シャワーを浴び終えた相良さんが出てくる。髪を拭きながら、相良さんがそう言う。僕はどこにいたらいいかわからずに、ベッドのそばで突っ立っていた。だって、ベッドに乗ったりなんかしたら誘ってるみたいだし。ギシ、とベッドが軋む音。相良さんがベッドに腰掛けた。鎖骨、綺麗だな。沈黙が重たい。僕はなにか言おうかと思って、言うのをやめて。口をきゅ、と結んでいた。
「なにか言いたそうだね」
「……いや、なにも」
「言ってよ。俺と雛瀬くんの仲じゃないか」
「……なんか、ちょっと緊張してて」
「うん。俺も」
俯いた顔を上げた。相良さんも、緊張してるの? 余裕ありそうな態度なのに。
「手、貸して」
「……はい」
僕は馬鹿か。言われた通り右手を差し出すと、その手首をごつごつとした相良さんの手が掴んだ。
「ここ、すごい音してる」
相良さんの胸。触れたところが熱いーー。確かに、心臓の鼓動が手のひらにバスローブ越しに伝わってくる。ばくばくばく。その鼓動に呼応するように、僕の心臓も激しく動き出した。やばい、息できない。
「大丈夫?」
急に胸を抱えた僕を見て、相良さんが心配そうに眉を下げる。僕は、ふるふると首を振る。ほんとに、息苦しい。どうしよう。なんか、相良さんの声が遠くなって……。
「
「っは」
口が、意思とは関係なく開いた。かひゅ、かひゅと喉を空気が通る。
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