第11話

 ホテルの受付を済ませて、部屋に向かう。その間、お互い無言だった。ぽたぽたと、廊下に水滴が落ちていく。


「入って。先に、シャワー浴びていいよ」


 サイドテーブルに荷物を置いて、ハンガーにスーツのジャケットをかける。相良さんが服を脱ぎ始めたので、なるべく見ないようにしてシャワールームに向かう。胸板厚かったな……。ストライプシャツから透けて見えた胸板は、逞しかった。


 それにしても。6月の雨はこんなに冷たかっただろうか。頭からあたたかいシャワーを浴びてそう思う。バスタオルで体を拭いたあとで、困ったことに気づいた。これ、着るしかないよな。目に入ったのは、真っ白なバスローブ。なんか、地味に恥ずかしいんだけどしょうがないよな。僕はそう自分に言い聞かせ、バスローブを羽織った。腰の辺りで固く紐を結ぶ。


「遅くなりました。すいませ……」


「ああ。大丈夫だよ。ちゃんと、あったまった?」


 綺麗な彫刻の像がボクサーパンツを履いて座っているのだと思った。ベッドに腰かける彼の姿は、やけに官能的で。僕はそっと視線を外した。僕のすぐ横を通り抜ける瞬間、刹那に相良さんの瞳が僕を追いかけたような気がした。パタン、と閉まるシャワールームのドア。どうしよう。なんだか、すごく気まずい。

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