第9話

 それから、相良さんの趣味だというフットサルの話になった。小中高とサッカーをやっていて、大学ではフットサルに転向したのだという。今でも社会人サークルに顔を出すほど熱心で、アマチュアながらプロの大会にも出場するくらい強いチームに入っているのだという。運動音痴の僕は、聞いているだけですごいなと思ってしまう。スーツの上からでもわかる。体格の良さ、筋肉のバランス。僕とは正反対だ。


「雛瀬くんは、なにか趣味とかあるの?」


 僕は、洋画をはじめとして洋楽も好きだし海外ドラマも大好きだ。最近は邦画にもハマっていて、休日は映画館に行くことも多い。その話をしたら、相良さんはうんうんと聞き入ってくれた。嬉しい。こんなふうに、熱心に僕の話を聞いてくれた人初めてかも。


「俺も洋楽好きなんだ。特にジャズが好き」


 指でトランペットを吹く仕草をする。少し茶目っ気もあって、人から好かれるタイプなんだろうな。いいな。


「僕は……ラップが好きです」


「ラップかぁ。いいね。俺も学生の頃よく聞いてたよ。〇△とか、すごいハマってた」


「っ僕も〇△好きです。プレイリストにも入れてます」


「ほんと? 嘘。〇△知ってる人リアルで初めて会った」


 また、笑いじわ。ほんとうに心の底から楽しそうに笑う人だな。僕はすっかり、相良さんに気を許していた。出会って1時間もしないで、こんなに話せるようになるなんて。喋りすぎてなかったかな。僕はふと不安になる。

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