第5話
カ:続けて、俺の事は背景の一部と思ってくれれば。
もしくは観客かな。巷で話題の人気役者の芝居、俺も見たかったなぁ。
(苦虫をつぶすような顔、かつてを思い出すハーデル)
カ:ハーデル、あの時の忠告を忘れたの?
デ::…なんのことかな?
カ:言ったよね、ミズカは…
デ:君にそれをいう資格があるのか?
カ:あるよ。俺はこの子の保護者だ。
ミ:はぁ!?
カ:だってミズカはまだお子様でしょ~。無鉄砲な所があるから見守ってあげないと。
ミ:貴方を私の保護者だと思ったことなんて一度もありませんけどっ!?
カ:この間人助けしようとしてチンピラに囲まれて、
半泣きだったところを助けてあげたのは誰だったかな?
ミ:あ、あれは…。
カ:川に落っこちた人形を拾ってあげようとして、
おぼれかけたところを助けてあげたのは…
ミ:う
カ:木に引っかかった帽子を取ってあげようとして木に登って落ちかけたところを…
ミ:ほっ保護者でいいですっ!!
カ:こんなお転婆、支えられる?それにミズカは絡まれ体質だよ。
馬には乗れるようになったみたいだけど腕っぷしに自信は?
デ:…あ、あの頃よりは
カ:は…。俺より弱い奴はダメ。昔も言ったよね?
あの時は尻尾撒いてどこかの名門学校に逃げたんだっけ。
弁護士なんてご立派な職業につけば見返せるって思った?
ミ:カラスさん、そんな言い方は酷いです!
ハーデルは一生懸命に勉強して、奨学生になったんですよ。
カ:そこまでしたのに別の道へ?役者って世界は煌びやかでさぞ魅力的だったろうね。
女も引く手数多だったんじゃない?人気役者様だもんね。
そうだ、レイチェルは元気?俺彼女の妹さんと話をしたことがあって。
何やら役者仲間と恋仲になって、と思ったら実は遊ばれてた…とか?
デ:…
カ:マーカス覚えてる?君が入団した後にやめたらしいんだけど、
新人の役者に、しかも同性に本気で恋をして、
こっぴどく振られて…自殺未遂までしたとか。…知ってた?
デ:やめ
ミ:やめてください!
カ:ミズカ、何で君が泣くかな。
ミ:なんで貴方はそうなんですか?誰だって辛かった思い出はあるじゃないですか。
それを抉るみたいに…最低!ほんと最低!
カ:…そうか、手紙をやり取りしてるって言ってたっけ。
だから君は知っていたわけだ。
面白いなぁ、一体どんな風に自分を美化していたんだろう?
脚本も書けるんじゃないか?
ミ:貴方はどうしてそんな酷い言い方しかできないんですか!?
デ:ミズカちゃん…そんなの分かり切ってるじゃないか。カラスは君のことが。
カ:おおっと!それ以上の発言は台本にはなかったと思うよ。
デ:カラス!お前はミズカちゃんをどうするつもりなんだ!?
大体そんなに大切なら他の女に色目使ってんじゃねーよ!
姉さんに恋人ができないのはお前のせいだ!
その気がないならはっきり言ってやれよ!
他の子もそうだ、レイチェルの妹さんも、マーカスの兵隊になったお兄さんも
みんなお前が…。なのになんで、誰もお前を恨まない、嫌いにならない…。
なんでお前だけ。」
ミ:カラスさん、最低…!
デ:ミズカちゃんも!
ミ:え
デ:こんな奴、早く断ち切ってしまえばいいのに!
俺は本当にずっと、君の事…君の手紙を抱いて寝てた。
君の夢が見れるんじゃないかって…。
次に会ったらちゃんと好きだって伝えようって。
…ミズカちゃん、好きだよ、僕を選んでよ!
(静止をする、首を振る)
ミ:ごめんなさい。私はそれでも…
カ:…おかしいよ、君たちは
カ:いや、手紙を抱いて寝るとか怖すぎ
ミ:…ごめんねハーデル、ありがとう。
デ:ミズカちゃん…。
(屋敷の庭)
ハ:公演は大盛況に終わった、か。芝居、俺も一度は見に行きたいなぁ。
カ:兄さん、芝居なんて興味あったんだ
ハ:本の内容を舞台で実際に演じるんだろう?見てみたいじゃないか。
カ:大切な人ができたら一緒に見に行くといいよ。趣味が合えばいいけどね。
ハ:お前は結局、一度も見に行かなかったのか?
カ:最高の野外劇を見せてもらったから、十分さ。
ミ:どうぞ
ハ:ありがと、ミズカ
カ:ミズカ、俺には?
(無視)
カ:ちぇ
ハ:どうしたんだお前ら、また喧嘩か?
カ:はは、一方的に俺が怒られてるだけ。今回は長引きそうだけど。
ハ:シルフィを振った事に関係があるのかな?
理由は他に大切な人がいるから…だって?
カ:何で兄さんが知ってるかなぁ。
ハ:狭い村だからすぐ噂になる。その大切な人が誰かって話題で方々持ちきりだぞ。
お前もそろそろ身を固める時が来たな。
カ:兄さんを差し置いてそれはないね。
ハ:俺を待ってたらいつになるか分からないぞ。
カ:保護者でいいって言われちゃったからね。暫くは保護者でいるよ。
*** おわり***
野外芝居の恋の結末 菜梨タレ蔵 @agebu0417
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