第30話 足利一族はみんな仲良し!(2)
まず、足利氏を「足利
この足利氏と新田氏のあいだで
問題の足利
義清は足利
新田氏に属する里見
もともと足利氏と新田氏は婚姻関係で結ばれていたのです。
新田義兼の妻の
私は、足利氏と新田氏を含めた一族は「リスクの分散によるリスクヘッジ」を続けていた、と解釈するほうがいいのではないかと思っています。
足利氏と新田氏を含む足利一族の祖は
その義国の二人の息子のうち、弟の足利義康のほうが先に出世しました。しかし、それは、義康が京都で活動して、目立つ活躍をする機会に恵まれたのに対して、義重が現在の群馬県や両毛地域で地元の領地(荘園)の管理をやっていたからです。しかも、義康が京都にいるあいだに保元の乱が起き、そこで目立つ活躍をしてさらに出世しました。
しかし、親の義国は、義康だけを偏愛したわけではありません。
義国は、その義康には足利荘を与え、義重には八幡荘を与えています。八幡荘のほうが河内源氏にとっては以前からの本拠地です。足利荘は平野部にあって収益が上がりそうではありますが、じつは現地には「藤原姓の足利氏」という一族がいて、そちらが現地を管理していました。つまり、義康とその子孫は、その藤原姓の足利氏と関係を調整して収益を上げなければいけなかったわけで、いろいろめんどうな領地だったわけです。
けっきょく、藤原姓の足利氏は、源平の争乱(
藤原姓の足利氏という一族は、
ちなみに、「佐野の馬 戸塚の坂で 二度転び」のさのまる……ではなく、佐野氏はその藤原姓足利氏の子孫です。
藤原姓足利氏は、足利からは追い出されましたが、隣の佐野で存続したのですね(両毛線で足利‐あしかがフラワーパーク‐富田‐佐野で十二キロぐらい)。
ああ、佐野ラーメン食べに行きたい!
「さのまるの家」にも行きたい!
……ということは、ここではおいといて。
義国は、京都にいた義康には、「京都に上級領主の義康がいて、現地を藤原姓足利氏が管理している」という役割分担が成り立つ足利荘を与え、義重には以前から保持している八幡荘を与えて現地で活躍させた。
義重は義康が亡くなった後に京都に出ています。京都で人脈を拡げたことでしょう。
また、八幡荘は嫡系ではない年長の子たちに譲り(里見氏、山名氏)、自分は新しく開発している新田荘に移るなど、義重も子どもたちに対しても偏りのないように配慮しているように見えます。
足利
当時、足利家の祖となった足利義康は亡くなっていたので、源義国の子孫の家系の「族長」だったのは義重のはずで、足利義兼も義重の世話になっていたと見てはどうだろうか、と思っています。
つまり、義兼や義成は、義重を裏切って、とか、義重を見捨てて、とかではなく、義重から
「うちと同じ源義家の子孫の頼朝というのが鎌倉で挙兵とかしたらしいけど、うまく行くかどうかわからん。わしは、もうちょっと様子を見ようと思うんだ。ついては、おまえたち二人、ちょっと鎌倉のほうまで行って頼朝の味方になってみないか?」
「いや、そんなのの味方になって、その頼朝っていうのがもし失敗したらどうするんですか」
「そのときはわしがめんどう見てやるから、とにかく行きなさい!」
とか言われて頼朝のところに行ったのではないか?
実際に、義成は
頼朝は失敗していませんが、新田氏・足利氏を含む一族のあいだで「失敗してもめんどうを見てやる」という合意はあったと見ていいと思います。
ただ、このときの義重に「読み間違い」があったとすれば、頼朝が成功しすぎてしまったことじゃないかと思います。
義国、義康、そして義重自身も京都で活動していたことがあります。頼朝につながる家系も義朝までは京都で活動していました。
だったら、頼朝も、成功したら京都に出て行って、関東はもとのとおり平氏系や源氏系や藤原氏系の勢力が散らばる土地に戻るのではないか。
そう期待していたら、鎌倉幕府というのができて、頼朝が鎌倉に根づいてしまい、その頼朝を中心に南関東の武士が「御家人」になって支配する体制ができてしまった。とくに、頼朝との関係で偉くなった北条氏とつきあわなければいけなくなった。
そうなると、最初から頼朝の挙兵に参加し、北条氏とも関係がよかった足利氏のほうが一族のリーダーとしては適任になるわけで。
広い意味での足利一族(義国の子孫)のなかで足利氏のリーダーシップが強まって行くことになったのでしょう。
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