記録4
原因は現地胸腹による文化の意味的浸透圧だと思われた。
我々の我々と違い個別に強烈な自我を持つ地球人は、我々の文化とは全くことなった味と色の文化を形成していた。
それは統合され整然された我々から見れば不完全で歪で猥雑で醜悪だった。マクエグチーだ。
長期間潜伏した1126号の現地胸腹に比較して希薄な意味濃度がそれに耐えられず、一方的な有意味綴りの加圧勾配を刺突して境界膜を保てなくなってしまった。そして黒い岩、そのまま包括的文化海洋に溶解拡散してしまったのだろうと分析された。
そこで私が用意された。
私は重篤5の扱いとされ井戸の底の直列を得て、我々としては破格のあなたを与えられた。
1126号から得られた知見と土砂は細かく咀嚼され、現地胸腹と長期間浸透状態になっても意味が保てるよう訓練を受けた。さらに母星の自我連続体の中に私のコピーが成形され、バックアップとして機能するとともに私に異常があれば目に絵が入るよう対策された。
門は開いた。
独自の発達を遂げているとはいえ、我々からすれば通過したあとの文明である。分析や理解、模倣はそこまで難しくはなかった。「強烈な自我を個々にも持つ構成員からなる社会」という前提に立てばその胚分化は比較的単純と言えたからだ。(と、母星の意識連続体中央大意識には考えられていた)
使っている情報技術、記録技術も我々からすればお粗末なもので、私は地球の日本という細胞に、一人の二本足として身分を得て、金銭と呼ばれる圧縮エネルギーを保証され、現地胸腹と同等の炭素中核代謝ユニットに意識を搭乗し。
私は、地球人になった。
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