第二十八節:仲間と火を囲む青年

 アルヴァを除く、アサラ達3人は焚火を囲んでいた。

天空の塔を下り魔族の女剣士ゼクシアを弔った後、土に埋めた彼女のそばを離れようとしないアルヴァをひとりにして、野営の焚火を囲むアサラ達は互いに何も言葉を発する事なく、夜が更けていった。


 やがて、両目を腫らしたアルヴァが戻ってきた。

俯いていた3人の視線は一斉にアルヴァへと向く。


「落ち着いた?」 


「ああ。 もう、大丈夫だ。 悪かったな」


 そう、アサラに答えるアルヴァから漂う雰囲気は、これまでとは違っていた。

瞳の色が琥珀色から真紅に染まったからだけではない。

まるで、別人のようだった。


「記憶、戻ってもさ! 別に、無理に話す事ないよ!」


「そうだぜ、アルヴァ! 別に、お前がどこの誰であろうと俺達は・・・」


「魔族なのか? お前は・・・」


 ルクストのその言葉に、場を誤魔化そうとしたアサラとリーウェンの胸に痛みが走る。


「ルクスト! あなたっ・・・!」 


「いいんだ、アサラ。 全部、話す。

俺の知っている事を、全部・・・」


「アルヴァ・・・」


 聞きたくない。

アサラはそう思いながらも、目の前で決心した大切な仲間の言葉を聞くわけにはいかなかった。


「もう、気づいているように・・・俺は、この地上とは異なる世界、魔界の住人、魔族だ」


「嘘だろ、おい。 何かの冗談だろ⁉」


「騙していたつもりはないんだ。 俺も、記憶を取り戻すついさっきまで、自分を人間だと思い込んでいた。

まるで、魔族としての自分を否定するように・・・!」


「現在の状況では、魔族は俺達の敵だ。

だがお前は・・・、他の魔族を裏切ったのか?

何があった? 魔界では今、どのような事が起きているんだ?」


 そう、問題はそこなのだ。

魔族の脅威は地上に迫っている。

アルヴァが魔族だというのなら、人間の敵になる。

だが、ゼクシアはアルヴァが裏切ったと発言していた。

アルヴァは、自分達の敵なのか、味方なのか。

アサラ達は、それが一番知りたかった。


「最初から、説明しよう・・・」


 そう言って、アルヴァは旅の仲間達と共に焚火の前に座りながら静かに語り始めた。

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