第二十一節:遺跡を進む青年
「我が魔力よ、光となりてこの者達の魂を救いたまえ! ルークス デ プリフィカーオ!」
アサラの杖から白い光が放たれる。
アルヴァ達の前に立ちはだかる死霊の魔物達は、その光を浴びると瞬く間に倒れていった。
「凄いな、一瞬でただの死体になって動かなくなっちまう。
これが、浄化の光か・・・。
アサラお前、本当に色々な魔法が使えるんだな」
「さすがです、姫様」
「うん。 もっと褒めてって言いたいところなんだけど、ちゃーんと皆で力を合わせて私を守ってよ?
この魔法、けっこう集中力いるんだから」
「任せとけって!」
エルミリア王国に到着して3日目、船旅の疲れを癒した一行は問題の南の遺跡へと来ていた。
遺跡に入るとエルミリア王の言ったようにそこに巣食う多数の死霊の魔物との戦いが始まる。
まともに戦えば苦戦を強いられる状況ではあったが、アサラが使う事のできる浄化の光を放つ魔法は死霊を無効化する力を持っていた為、アルヴァ達は難なく遺跡の奥へと進む事ができた。
「でも、この遺跡けっこう広いぞ。 すべての魔物を倒すのは難しいんじゃないのか?」
アルヴァ達の目的は、この遺跡から海賊船と回収できるようにする事である。
つまりは、この遺跡から魔物を一掃する必要があった。
また、それは死して魔物となってしまったエルミリアの兵士を無事に弔う為でもあった。
「たぶん、この遺跡のどこかに魔法陣があるはずよ。
それを探しましょう」
「魔法陣? なんだ、それ?」
アサラ以外の3人は魔法をあまり使う事ができない。
特に一切の魔法が使えず、武術に詳しい事に反して魔法については知識に乏しいリーウェンにもわかるようにアサラは説明をする。
「高度な魔法、より安定させた魔法を使う為にはね、強い魔力だけじゃだめなの。
より良い魔法の杖、正しい呪文の詠唱、そして時には魔法陣を描く事によって魔法を安定させる結界の生成が必要なのよ」
「姫様は、この遺跡が敵の結界の中だと?」
「この遺跡に入ってすぐに感じたわ、ここが何者かによる結界の中だってね。
エルミリア軍は兵士の屍を魔物にした張本人を見ていない。
って事は、魔法陣によって屍を魔物にする魔法が自動に発動した可能性が高いわ」
「それって、術者本人がいなくても魔法が使われているって事か?」
アルヴァのその疑問に、アサラも腕を組んで考えていた。
「そういう事になるわね。
でもこれって、伝説級の魔法よ?
だって本来、魔法は人の身に宿った魔力を使って発動するものだから。
術者本人なしに発動するなんて、どうやって・・・」
「屍に残った魔力を糧としているのだよ・・・」
その声を聴いたアルヴァ達は一斉に身構えた。
「っ・・・! こいつ、いつから⁉」
死霊の魔物ではない。
黒いローブに身を包んだひとりの男が、アルヴァ達の背後に姿を現していた。
「何者だ、貴様⁉」
「ふっふっふ・・・。戻ってきて早々に、このような事になっていようとはな・・・。
随分と、我が眷属を減らされたものだ。
貴様らは、トロールを倒したあの時の戦士達だな?」
「なんだって⁉ なんで、お前がそんな事を知っている⁉」
「まさかあなたが、この遺跡の結界を生成した張本人⁉
それに・・・!」
「いかにも。
我が名はサダム。トロールとゴブリン達を操り、かのフルシーラという国の城を攻めたのも、
そして、この地で死霊の魔物を生み出していたのも我だ」
「お前は・・・、何なんだ⁉」
黒いローブで身を包んだその魔法使いは白い肌、そして真紅の瞳を持つ痩せ細った男だった。
「紅い・・・瞳?」
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