第十三節:少女の正体を知る青年

 騎士ルクストが手配した豪勢な馬車に乗り、アルヴァ達一行はその大陸を治めるフルシーラ王国の城へと向かう事となった。

その馬車の中で、アルヴァはアサラの正体を知る事となる。


「フルシーラ王国の家出したお姫様?」


「今まで黙っていてごめんね」


「おい、お前。 それって一歩間違えれば同行していた俺が誘拐犯とかに間違えられていたんじゃないか?」


「だから、ごめんって」


 両手を合わせながらアルヴァに謝っているアサラの横で、その様子をルクストはやけに不機嫌そうに見ていた。


「ご希望とあれば、それで捕まえてやってもいいが」


「あ、こっちの頭が固いのはルクスト。 私の幼馴染で・・・、一応私の護衛騎士」


「一応とはなんですか、一応とはっ! 私が今回の件で陛下にどれほど叱られた事か!」


「そうだよ、お父様きっとすっごい怒ってるよぉ・・・。

よし、私はここで降りるね」


 そう言って走行中の馬車の扉を開けようとするアサラの腕を、ルクストが掴んで止める。


「逃がしませんよ?」


「いいじゃない、こうやって無事なんだから。

これって私の魔法の腕なら、外の魔物なんて敵じゃないって事でしょ。

危険なんてないって証明できたんだから、きっとお父様も旅を許してくれるわ」


「そんなわけないでしょう! あなたは自分の立場をもっと考えてください!」


「あー、はいはい。 それより、アルヴァ。 他にも思い出した事があるって本当?」


 主従の関係というよりまるで兄妹のようなやり取りをしている姫と騎士に啞然としていたアルヴァは、アサラのその問いで我に返る。


「ああ」


「だいだい、こんな得体の知れない男達と一緒に旅だなんて、私は許しません! 許しませんよ!」


「ルクスト、うるさい‼」


 ルクストの顎を手で押して自分への説教を強引に止めたアサラはアルヴァへ話を続けるように促す。

アルヴァはルクストに負い目を感じながらも話を続けた。


「バレド流剣術、ザスディーンという名前の戦士、そしてあの黒い刀・・・」


「黒い刀って、もしかしてあの女の人が持っていたあの刀?」


 夢にも出てきたあの銀髪の女性が泥棒を斬り殺した刀。

その刀も黒い刃をしていた。

アルヴァが思い出した記憶でその手に持っていた刀と、その刀は似ている、というよりまったく同じだった。


「たぶん、あの刀は俺の刀だったんだと思う」


「じゃあ、なんであの女の人が持っていたのよ」


「わからないけど・・・、やっぱり俺はもう一度あの女に逢わないといけない気がする」


 そうしてアルヴァが頭を抱えて考えていると、隣にいる男がアルヴァの肩を叩いて励ますように肩を組んでくる。

闘技大会で出逢ったリーウェンである。


「いいじゃねえか、フルシーラの城に行けば腕の立つ兵士、騎士がゴロゴロいるだろ?

バレド流剣術も、ザスディーンって名前の戦士も、もしかしたら知っている奴がいるかもよ?」


「ところでリーウェン、なんでお前ここにいるんだ」


「冷たい事言うなよ。俺もお前のそのバレド流剣術ってのに興味が沸いた。

お前の記憶の手がかりを探す旅、その技の研究と俺の修行がてら手伝ってやるよ」


「いいねいいね! 旅は大勢の方が楽しいよね!」


「だから! 姫様、あなたはもう帰るんですよ!」

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