第十一節:戦いに敗れる青年

 アルヴァの脳裏にはある情景が浮かんでいた。

それは失っていたアルヴァの記憶の断片。


 アルヴァの目の前には、ひとりの男がいた。


「諦めろ、アルヴァよ! まだ戦いを続けるか⁉」


「そこを、どいてください。 俺は・・・、仲間を守らなくちゃいけない」


 断崖絶壁を背にし、傷ついたアルヴァはその手に持ったを男に向ける。


「仲間? 仲間だと⁉ 愚かなっ! 貴様の仲間は我らのはず!

貴様は情に流され、我らを裏切った愚か者だ! 我らが主に誓ったその剣を何だと思っておるのだ⁉

私が見込んだ剣士アルヴァの覚悟とはその程度だったのか⁉」


「俺の願いは変わらない。 だから、できる事ならあなたとは戦いたくはない。

見逃してくれるわけには・・・、いきませんか」


 戦いを避けたいアルヴァの願いを笑うように、男はその手に持った巨大な剣を構える。


「残念だがこのザスディーン、そこまで甘くはないぞ。

愚かな反逆者である貴様は今、ここでこの私が討ちとってくれよう!

貴様の今のその覚悟が本物ならば、その剣で今も願いを果たしたいというのならば、

この私を倒し先へと進んでみるがいい‼」


 激しくぶつかり合う両者の剣技。

だがやがて、ザスディーンと名乗ったその男の放つ剣技によってその手に持つ刀を地面に弾き落とされたアルヴァは、男の剣技をその身に受け、崖の下の荒れ狂う海へと転落した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る