第六節:夢の女性と再会する青年

「きゃああああっ‼」 


 絶命し地面に転がる男の死体、それを見て悲鳴を上げる少女。

アルヴァにはそのどちらよりも、注意を引かれるものが目の前にあった。


「あ・・・、あれは!」


男の身体を切り裂いたものの正体。

それは、その女性が手にした剣。

その剣はアルヴァが使った男の剣と同様、片刃かたはで緩やかな反りのついたやいばの剣。

だがその刃の色は黒く輝いていた。

そして・・・、

その剣を振った女性は、銀色の長い髪と真紅の瞳、そしてアルヴァと同じような白い肌の・・・アルヴァの夢の中に出てきた名前の思い出せないあの女性だった。


「その黒い剣は・・・、お前は・・・⁉」


「アルヴァなのか・・・?」


 女性は、真紅の瞳でまっすぐにアルヴァを見て、まるで亡霊でも見ているかのように驚いた表情で、

そうアルヴァの名を口にした。


「俺の、あの夢は・・・、本当にあった出来事・・・?」


「アルヴァ、お前なのか・・・? 生きていたのか⁉」


「やっぱり・・・! お前、俺を知っているんだな⁉ 俺の知り合いなんだな⁉」


 アルヴァがそう言って女性に近づくと、女性はさらに動揺する。


「なにを・・・、言っている?」


「名前以外、何も覚えていないんだ! 教えてくれ! 俺の事を! 俺は誰なんだ! お前は・・・、俺の何なんだ⁉」


「・・・アルヴァではないのか? まさか、本当にお前が・・・記憶を失っているのか・・・?」


 まっすぐとアルヴァに視線を向けていた彼女はアルヴァの姿に動揺し、やがて苦しむようにうつむいた。


「ど・・・どうしたんだよ・・・?」


「お前、私がわからないのか・・・?」


「最近見る夢にお前が出てくるんだ・・・。だけど、お前が誰なのか、俺にはわからないんだ・・・」


「アルヴァ・・・。 いや・・・、今のお前にはその方がいい・・・」


 女性は、アルヴァの顔に再び視線を合わせる事なく右手を静かに振るとそこから黒い霧が噴き出した。


「もう二度と逢う事はないだろう・・・」


 突然噴き出した黒い霧に驚いてアルヴァが後ずさりすると、女性はその霧の中へ姿を消し、最後に弾けるように強い光を放つと、そこには霧も、女性の姿も消えていた。


「おい、待てよっ! 待ってくれっ‼」


 そう言って、消えた女性の姿を探し周囲を見渡すアルヴァの声は虚しく森に響いた。


「なんだよ、なんで何も教えてくれないんだよ・・・! 俺は、誰なんだよ・・・!」


 ようやく見つけ、姿を消した自分の記憶の手がかりに、アルヴァは落ち込み、その場に座り込んだ。


「き・・・消えた・・・? 転移魔法⁉ そんなの使える人、初めて見た。・・・あの人、何者?」


 女性の使った高位な魔法に驚くアルヴァの背後の少女がそう口にした。

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