第四節:少女と衝突する青年

 港が封鎖された港町と比べると、その町の商店街は賑わっていた。

その人々の賑わいの中で、どこからともなく少女の声が聴こえた。


「泥棒~! 誰か~! そいつ、捕まえて~!」


 その方角へ目を向けると、突然雑踏をすり抜けてひとりの大柄な男が正面から走ってきた。


「どけっ!」


 男はアルヴァを押しのけて、大柄な体格には見合わない脚の速さであっという間に去って行った。

何事かとその男の走り去る背中を見ていたアルヴァの背後から、何かが勢いよくぶつかってきた。


「いでっ!」


 よろめいたアルヴァが振り向くと、そこにはひとりの少女が頭を抱えて座り込んでいた。


「いった~い!

・・・ちょっと何してるのよ!

逃げられちゃったじゃない!!」


 先ほど聴こえた声の主だった。

今走り去っていった男を追いかけてきたのだろう。アルヴァとぶつかり地面に座り込んだその女性は、旅の魔法使いだろうか。ローブを身に纏い、杖を携えた美しい少女だった。


「ご・・・ごめん・・・」


「あ~!

もう、どうしてくれるのよ!」


 座り込んでいる少女にとりあえず手を貸すと、少女は起き上がりながらアルヴァへ怒りをぶつけてきた。


「えっと・・・、どうしたの?」


「盗まれたのよ! 今の奴に、私の大事なペンダントが! 君のせいで逃げられたじゃない!」


「俺⁉」


「だって君、今の泥棒止めなかった上に私の邪魔までしたじゃない!」


「いや、だっていきなりだったし・・・。状況がよくわからなくて」


「まだ、そう遠くに行っていないと思うわ! 君も手伝って‼」


「えぇ・・・」


 何が何だかわからずに、自分のペースに巻き込もうとする少女に手を引かれながら

アルヴァは少女のペンダントを盗んだという男を一緒に追う事となった。

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