コンクリートテーブル

酢味噌屋きつね

コンクリートテーブル

 コンクリートのテーブルと大豆でできた椅子を並べると、そこには青い体で鼻の高い人が座りにやってきます。1番目と2番目の足を組んで、その次に3番目と4番目の足を組み、次に5番目と6番目の足を組むと、こう言います。


「大豆にはイソフラボンが入ってますね」


 続けてこう言います。


「あなた方をこの巣から抹消します」


 すごく怖いですね。

 でも冗談です。

 彼はいつも冗談を言います。その冗談を真に受けては行けません。彼は「ほっほっほ」と笑っています。


 風で飛んできた巨大な餃子ぎょうざのオブジェが窓をぶち壊して、部屋の中にガラスの破片を散らばらせると、餃子のオブジェはむくりと立ち上がり、彼の横にちょこんと座りました。


 それはなんですか、と聞きました。すると彼は言いました。


「知らない知らない」


 すごく怯えていました。餃子のオブジェは彼が昔から飼っている犬のように彼のそばから離れようとしませんでした。

 一体なんなのでしょうか。


 大豆の椅子にはイソフラボンが含まれています。イソフラボンは体に良いのですが、椅子になっている大豆を食べるような人はいません。


 と、言ってるそばから餃子のオブジェが大豆の椅子をがぶりがぶりと食べ始めてしまいました。止めようとしましたが、彼はこう言いました。


「まあいいじゃないか。餃子にはイソフラボンが必要なんだから」


 初耳でした。餃子にはイソフラボンが必要なようです。ですが困ったことに、餃子のオブジェが椅子の足を食べ終わってしまいます。このままでは椅子に座っている彼がバランスを崩し、数メートル後方まで転がっていってしまいます。椅子が壊れてしまう、と止めようとしましたが、彼はこう言いました。


「まあいいじゃないか。元々椅子の力なんか借りてないんだから」


 初耳でした。彼は椅子に座っているわけでなく。椅子のあるポイントに重なるようにして存在しているだけだと言うのです。それではなんのために大豆の椅子を作ったのか分からなくなります。そもそもなんで大豆の椅子を作ると彼は座りに来るのでしょう。それも分かりません。


 とにかくもう時間がないようでした。彼は餃子のオブジェを小脇にかかえると立ち上がりました。


「ごちそうさま。また来るよ」


 そう言い残して彼は去っていきました。


 不思議に思いました。彼にはなにもごちそうをしていないにも関わらず、「ごちそうさま」と言ったのです。知らぬ間に彼が何かを食べていたのでしょうか。いいえ、そんなはずはありません。部屋のなかには12人の私がいて隅から隅まで彼を見ていましたが何かを食べている様子はありませんでした。

 そこで気づきました。

 おそらくあの餃子のオブジェが原因です。この部屋の中で何かを食べたのはあの餃子だけです。餃子は大豆の椅子を食べていました。だから「ごちそうさま」なんです。

 そうです。彼はたぶんあの餃子に寄生されてしまったんだと思います。あんなことがあるなんて怖いですね。

 12人の私は一斉に逃げ出してしまいました。

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コンクリートテーブル 酢味噌屋きつね @konkon-kon

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