第52話

すると、なにか言いたげな表情でテーブルに頬杖を付いていた。


「なんだその顔は」


買った焼きそばを遥香の目の前に置くと、


「デートで焼きそばって」


ジト目でこちらを見てきた。


「しょ、しょうがないだろ?ここの無料券使わないともったいないし、そもそも俺、デートした事ないんだから」


「でも、最初に焼きそばは場違いって事くらいは分かるんじゃないの?」


「ごめんな………………こんなダメな今日だけ彼氏で……………」


「まぁいいけど」


遥香は焼きそばをすすった。

食べ進めていくと、遥香の口の周りにはソースが少し付いていた。


「遥香ちょっとこっち来て」


「何?」


顔を近づけると、持っていたウエットティッシュで口の周りを拭いてあげた。

すると、


「――――――――――んっ―――――ちょ、何してんの!?」


その手を振り払い、口元を隠した。


「え、口にソース付いてたから」


「そうゆう問題じゃない!」


「じゃぁ、どうゆう問題?」


「そうやってさり気なくしてくるところがウザイ!」


「逆に初々しくやってる方が気持ち悪くないか!」


「た、確かにそうだけど……………………」


俺だって結構無理してるんだぞ!?

今だって心臓バクバクなのを抑えてるのによ!


「それに、お前から言い出したんだろ!?元々は!」


「もう、その話はいいから!」


「何もよくないわ!」


「あ、あと言い忘れたけど、一様明日も彼氏やってもらうつもりだからね?」


「なんでだよ」


「だって!明日もあいつらに絡まれたら嫌じゃん!」


言われてみれば、文化祭は2日あるので明日も来る可能性が高い。

にしても、なんで俺なんだかなー。


「俺はいいけど、本当にお前は俺でいいのか?」


「何その質問」


「だって、変な誤解されても困るじゃん?しかも、相手俺だぞ?イケメンならまだしも」


「誤解って、別に私は良いけど……………逆にそっちは大丈夫かなーって」


「え?ぼそぼそ何言ってんの?」


「あーもう何でもない!」


「もっとハキハキ喋れよ!」


何にも聞き取れないんだよ!


「…………………あ…………………う…………………………え………」


にしか聞こえないんだよ!


「とにかく、早く食べて次行くわよ!」


遥香は、焼きそばを口いっぱい放り込み、さっさと席を立った。


「おい待てよ!」


俺もすかさず遥香の後を追いかけた。

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